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こえ  作者: 水川かずみ
先生と遺書
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二十二

 あなたの父上について、私は詳しく知りません。


 あなたが故郷へ戻ったと聞きました。


 事務所には、家族の事情とだけ伝わっています。


 もしこの記録が、あなたの家族より重く見えたなら、読まないでください。


 私の死を止めるために来ようとも、考えないでください。


 これは、あなたを呼ぶ手紙ではありません。


 しかし、私がそう書けば、あなたは本当に来ないでしょうか。


 来るなという言葉も、来てほしいという意味に読めます。


 私は、最後まで言葉を制御できません。


 だから、ここで一つだけ、私の希望を書きます。


 私を理解したと思わないでください。


 桐谷を理解したと思わないでください。


 奈緒を、当事者という言葉で理解しないでください。


 政府を、逃げている側という映像だけで理解しないでください。


 専門家を、答えを持つ人間だと思わないでください。


 国民を、騙された人々だと思わないでください。


 そして、自分だけは編集していないと思わないでください。


 人は、見たものをつなげます。


 つなげなければ、生きられないからです。


 けれど、つないだ線が、最初からそこにあったと思った時、人は他人を失います。


 私は、桐谷を失いました。


 奈緒も失いました。


 国民も失いました。


 自分自身も。


 全てを理解できる形へ直したからです。

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