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こえ  作者: 水川かずみ
先生と遺書
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36/48

十九

 奈緒には、この記録を見せません。


 彼女は、桐谷の死について、私より多くを知っているかもしれません。


 あるいは、何も知らないかもしれません。


 私は尋ねませんでした。


 尋ねれば、彼女の答えを、また自分の罪を説明する材料にすると思ったからです。


 奈緒は、私が毎月墓へ行く理由を知っています。


 しかし、私が墓の前で何を考えているかは知りません。


 私自身も知りません。


 許してほしいのか。


 忘れていないと示したいのか。


 自分が苦しんでいることを確認したいのか。


 桐谷の死を、自分の人生の中心に置き続けたいのか。


 墓参りさえ、私のための行為かもしれません。


 奈緒が花代を渡そうとするたび、私は拒みました。


 彼女まで墓へ近づけば、桐谷の死が私たち二人のものになる気がしたからです。


 私は、一人で罪を負っているつもりでした。


 実際には、一人で所有していました。

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