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こえ  作者: 水川かずみ
先生と遺書
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34/48

十七

 水野さん。


 私はあなたが作った動画を初めて見た時、腹を立てました。


 政府、答えられず。


 完全論破。


 私の言葉は、私が意図したより強くなっていました。


 けれど同時に、嬉しかった。


 私が国会で何時間話しても届かなかった人へ、あなたの三分は届いていました。


 私は、あなたの編集を批判しながら、その力を必要としていました。


 あなたを事務所へ呼んだのは、意味を変えない動画を作ってほしかったからではありません。


 私がどのように変えられているのかを、近くで見たかったからです。


 そして、できるなら、自分でそれを制御したかった。


 私はまた、切られる側から、切る側へ回ろうとしました。


 あなたは、私に似ています。


 だから、この記録をあなたへ送ります。


 あなたが私の罪を理解できるからではありません。


 理解したと思った時、あなたも同じことをするからです。


 私は桐谷を、理解できる人物へ直しました。


 慎重な研究者。


 正しいが、現実を動かせない人。


 奈緒を愛しながら、伝えられなかった人。


 私に裏切られ、死んだ人。


 どれも事実です。


 しかし、それらを並べることで、私は桐谷という人間を説明した気になりました。


 説明できれば、私の罪も説明できます。


 私は嫉妬した。


 奈緒を得るために先回りした。


 彼の誠実さを利用した。


 彼が死んだ。


 だから私は罪を負う。


 この因果は、分かりやすい。


 分かりやす過ぎます。


 桐谷がなぜ死んだのか、私は知りません。


 私の裏切りだけが原因だったのか。


 研究者としての孤立。


 職の不安定さ。


 政策が言葉を変えていくことへの絶望。


 奈緒への感情。


 自分自身への嫌悪。


 どれが、どれほど重かったのか。


 本人にも分からなかったかもしれません。


 それでも私は、彼の死を自分の罪として抱えることで、彼を自分の物語の中へ閉じ込めました。


 自分が加害者であるという認識さえ、相手の死を所有することがあります。


 私は、そのことに気付くまで長くかかりました。

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