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こえ  作者: 水川かずみ
両親と私
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13/16

 翌朝、父は新聞を読みながら言った。


「今度の選挙で、もっと議席が増えたら変わるか。」


「何が。」


「日本が。」


「分からない。」


「先生は何て言ってる。」


「変えるって。」


「なら、変わるんだろ。」


「そう簡単じゃない。」


「またそれか。」


 父は新聞を畳んだ。


「お前たちは、できると言って選挙を戦ったんじゃないのか。」


「私は戦ってない。」


「動画を作った。」


「それで政策を決めたわけじゃない。」


「でも、できるように見せたんだろ。」


 父の言葉に、私は詰まった。


「見せたつもりはない。」


「じゃあ、何を見せた。」


「先生が言ったこと。」


「そのまま。」


「短くして。」


「なら、そのままじゃない。」


 父は笑った。


「俺でも分かるぞ。」


 私は少し腹が立った。


「短くしないと、誰も見ないんだよ。」


「俺は見た。」


「短いから。」


「なら、短くして正解だろ。」


「でも、短くすると意味が変わることがある。」


「変えたのはお前だろ。」


 父は簡単に言った。


 責めている様子はなかった。


 ただ、事実を言っただけだった。


「仕事だから。」


 私は言った。


「仕事なら、仕方ないのか。」


「仕方ないとは言ってない。」


「じゃあ、何だ。」


「分からない。」


 父は新聞を開いた。


「先生みたいだな。」


 その言い方に、少し皮肉があった。


 私は居間を出た。


 母が廊下で洗濯物を畳んでいた。


「あんた、昔からお父さんと話すと、勝とうとするね。」


「勝ってない。」


「勝てなかったから、怒ってるの。」


「そういう話じゃない。」


「じゃあ、どういう話。」


 私は答えなかった。


 母は畳んだ衣類を重ねた。


「峰岸先生って、そんなに偉い人なの。」


「偉いかどうかは。」


「お父さんは、すごい人だと思ってる。」


「分かってる。」


「あんたも。」


「私は近くで見てるから。」


「だから、すごくないと思うの。」


「違う。」


「じゃあ。」


「分からない。」


 母は手を止めた。


「分からないのに、動画は作れるの。」


「正しいかどうかを決める仕事じゃないから。」


「何を決めるの。」


「どこを使うか。」


「それは、正しいかどうかと違うの。」


 私は、もう話したくなかった。


「仕事の話だから、簡単には説明できない。」


 母は少し笑った。


「便利ね、それ。」


 先生も私に、便利な言葉ですねと言った。


 私は、家に帰っても同じことを言われていた。

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