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魔女の仕掛け絵本ーRー  作者: 蜜りんご
第6章 ハートの行く末
29/30

5 ***

 終わりにして始まりの魔女の祈りは、泡沫を生んだ。

 泡沫の中を祈りは揺蕩う。


 とある泡沫のそのまた泡沫の中で、魔女の祈りは形を結んだ。

 姿を得た祈りは、夢を見るように人形たちの狂乱を観覧した。


 母体となった泡沫も興味深かった。

 泡沫の中には、異なる泡沫の物語が無数に蔓延っていた。

 生まれ育った泡沫から別の泡沫へと渡る物語。

 生まれ育った泡沫の記憶を持ちながら別の泡沫で生まれ直す物語。


 されど、泡沫は所詮泡沫。


 祈りを生む女神(魔女)が世界と共に終わりを迎えれば、泡沫もまた弾けて消える。

 世界(女神)の終わりは泡沫の終わり。

 泡沫のごとく生まれた無数の世界もいずれ消え逝く。


 けれど、今。


 泡沫の中の泡沫で、奇跡が生まれつつあった。

 奇跡はいまだ至らない。


 それも然り――――。


女神(魔女)は、終焉の狭間で夢を見た。

 守りたかった世界の夢を。

 夢は幼子の見る夢のように夢幻に広がった。


 終わらないで、と祈りを乗せて夢は無限に広がった。

 祈りは泡沫の世界を生み、数多の魔女を生み出した。


 世界となった女は悟った。

 守りたかった世界を捨て、真に女神へと至れば、新しい世界を生み出すことが出来る、と。

 けれど、女は躊躇った。

 魔女に堕とされた女は、真に女神となることを躊躇った。

 それ(新たなる創生)は、女が本当に守りたかった世界ではないからだ。

 そっくり同じ世界を創れたとしても、それは女が守りたかった世界ではないのだ。

 それに、女はもう十分すぎるほど世界に尽くした。

 疲れていた。擦り切れていた。

  

 世界の存続(泡沫からの脱却)を願った。

 安らぎの果ての終焉(泡沫の中での微睡み)を望んだ。


 どちらも本当で。

 祈りは揺らいだ。


 女神と呼ばれても。魔女と蔑まれても。

 世界と同化しても。泡沫世界の苗床となっても。


 女は、人だった。


 人であったからこそ。


 魔女にされた女は真に女神へと至れず。

 心はまだ人のまま。

 人として、揺蕩い続ける。


 だからこそ。

 祈りに触れて魔女と成った者たちもまた、女神へとは至れないのだろう。


 それでも、いずれ。

 世界は生まれ変わるだろう。


 その萌芽を。息吹を。

 終わりにして始まりの魔女は、確かに感じていた。

 魔女が生み出した泡沫(世界)の中で。

 泡沫(世界)が生み出した泡沫(創作物)の中に。


 絵本の登場人物なのに。

 絵本の登場人物だからこそ。


 |みんなのために苗床となることを選ぶ《設定通りのキャラクターを全うする》のだろう。


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