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頁を捲らなくても、物語は進んでいった。
挑戦者の速度に合わせて、紙芝居のようにシーンが切り替わっていく。
絵本の中では、エンジのブレザーがアリン姫と一緒に泉の中を覗き込んでいた。
泉には、王子の姿が映し出されている。
それは、少女の彼ではなく、アリン姫の王子だった。
少女の彼は、今。
魔女の背後にひっそりと控えている。
最近、自我が宿り始めた魔女の美しい人形。
絵本の王子にそっくりの美しい人形。
魔女は人形たちのことを把握していた。
もちろん、今回の反乱のことも知っている。
知っていて、放置していた。
人形の目的が何かなんて、聞くまでもなく分かっていた。
自我があろうとなかろうと、人形が魔女の忠実な僕であることに変わりはないのだ
「今回も、いつも通りに終わりそうね。正当と邪道。二人の挑戦者が同時に現れれば、面白い変化もあったでしょうけれど。正式な挑戦者が、直前で怖気づくなんて、ね。残念だわ。でも、面白い試みだわ。次回は、もっとうまくやりましょう?」
魔女は口元に薄っすらと笑みを乗せる。
美しい人形は、何も答えなかった。
魔女がそれを求めていないと分かっているからだ。
答えるまでもないこと、でもあった。
今回のゲームの結末は、絵本が教えてくれるまでもなく、魔女には分かっていた。
それでも――――。
魔女が絵本から目を離すことはなかった。




