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18/20

18話 どこかへ続く道


 80階層からさらに下へ。89階層まで辿り着き、倒した魔物はゆうに三桁を越えた。その半数以上が一分も持たずに撃破され、Sレートの中でも強敵とされる個体ですら五分と持たずに葬られた。


 戦闘スタイルは剣をぶん回す、パリィ、投擲、拳、蹴り。派手な魔法やスキルをぶっぱなさい超絶脳筋スタイルだったが、見応えはそこらのダンジョン配信でのバトルを遥かにこえていた。


 同時接続者数2898333


 チャンネル登録者数4684407


 これは国内のダンジョン配信者のチャンネルとしては断トツでトップであり、また更に依然として記録を更新し続けている。


 スパチャも殆ど切れ目なく注がれ続け、数分間七色や真っ赤に染まる事も多かった。

 平均スパチャ額、578万円

 これまで稼いだ額、約6455万円


 最初は少額のスパチャも大喜びしていた織姫だったが、確定申告どうしよう……と最近ではスパチャコメントを見るたび若干暗い気持ちになるようになっていた。めんどくさい、と。


 しかし、つい最近強い味方が現れたので心が多少軽くなった織姫。さらに嫌いだった木冬木春なるリスナーの排除にも成功したことで一時的にイライラが発散されご機嫌だった。※ブロックは負けだと思ってる邪神。


『そろそろエリアボスかな』

『こんだけ階層降りてまだ三時間経ってねえってマジ?』

『普通の探索者チームなら三週間かかるだろこれ』

『いやこの強さの魔物がごろごろしてるダンジョン三週間どころか一時間だって生き延びれねえぞ』

『何体Sレート倒した?』

『36くらいじゃね?A含めたら188体』

『やばww』

『無職つええよ』

『ぜんぜん疲れてねえし』


 チャット欄の優星を褒め称えるコメントをながめにまにましている織姫。彼女は可愛いといわれるのが大好きだ。けれどそれ以上に優星がこうして認められ褒め称えられることが心の底から好きなのである。


 89層。ついに大砂漠地帯の終わりがみえた。各階層にもオアシスエリアという巨大湖とそこにできた森林地帯があった。

 そこよりもさらに巨大で深い森のような場所。ここのどこかに次の階層、90階層へ通じる階段が存在する。


 優星は砂地から腰ほどまで伸びる草群の中へと足を踏み入れるた。狙いすましたようにあちらこちらから昆虫のようなAレートの魔物がつっこんできて戦闘になる。17体の巨大な昆虫。クワガタとカマキリがミックスされたかのようなSレート寄りの強力な魔物。


 ……が、すれ違いざまの抜刀で全て一瞬で葬られてしまう。

 二分になった魔物が断末魔をあげそこらに転がる。


 迎撃終了後、そこにぽつんと立つ優星には、1滴たりとも返り血はついていない。


『おおおー』

『もう美しいまであるな動きが』

『無駄が無いからな』

『切り抜きで無職くんの神業シリーズあんの知ってる?』

『あ、ショートでみた』

『あほほど再生数まわってるよな』

『つかバトル全部神業で捨てるとこねえよな』

『それな』

『UikTokでも大量に流れてるね』

『みたみた!』

『戦闘シーンじゃなくて無職くんのぼけーっとした顔集あったよなww』

『そんなんあんの?』

『ネタにされてて草』

『いやネタっていうかコメ欄可愛い可愛いいっとったが』

『付き合いたいとか結婚してとかもあったな』

『ネタじゃないのそれ?』

『いやガチ恋勢かなり増えとるで』

『リアルでも最近話してるの聞くぞw』

『こないだJKの集団が駅で話題にしてた』

『中学の同級生(女)も犬っぽくて好きって』

『ネタじゃないの?笑』


 ガチ恋勢の文字にむっとする織姫。優星の魅力が多くの人に知れ渡るのは嬉しいし堪らく快感だが、しかしその分多くのガチ恋勢の恐怖に怯えなければならなくなる。なぜなら……


『無職くんレベルだと何人と結婚できんだろ』

『うらやま』

『ハーレムできんじゃんこれ!!』

『まて殺されるぞw邪神ちゃんにww』

『けど沢山残したいだろこの遺伝子は』

『たしかにw無職くんの子供沢山いたら国力やばいなww』

『法改正でふんわりと一夫多妻制みたいになっとるしなー』

『やんわり推奨されてますよね』

『後々揉めるから複数人と結婚してる奴あんまいねえけど』

『普通財力的に無理なんよw』

『国も表向きは少子化対策的なこというとるけどあれシーカー増やしたいって話だからな』

『その点無職くん金あるし望めばいくらでも』


 邪神ちゃん

『おまえらよ』


『ひ』

『あっ』

『すみません』

『ゆるしてくださいm(_ _)m』


 織姫はこころに決めている事がある。私は優星と結ばれる事はもう間違いなく絶対の予定なのだが、もしも望めば……ひとりだけ、許しても良いと思える人がいる。それは沙織。

 昔から美味しいご飯をくれて、仲良くて、なにより優星の事を心の底から好きなのが見ていてわかっていた。

 だから、彼女が望めば二人で一緒に優星のお嫁さんになりたいと、そう織姫のなかでは決めていた。


(……沙織ちゃんは認めないけど、間違いなく優星の事が好き……どうくっつけるか)


 着替え中の下着姿をみせたり温泉で裸の付き合い(水着)させたりしたが、一向に近づかない。ラブコメでは進展するようなものだが……と、漫画やアニメで得た知識を武器に戦い続ける織姫。次なる一手は……どうしよう。と、攻めあぐねていた。


 森林地帯の魔物を倒しながら歩くこと約30分。次階層へ伸びる洞窟を発見した。暗闇の奥へと伸びる石階段。


『つか探索はやく終わりすぎじゃね?』

『思った』

『普通はこの広さの階層なら四時間以上は彷徨うでしょ』

『下手すりゃ半日かな』

『え、待って。なら移動速度もおかしくない?』

『てかいちどもマップ的なの出してない……』


 邪神ちゃん

『道は完全に記憶してて、最短ルート通ってるからね』


『にしては速すぎるような』

『数時間のルートが30分はありえなくね』


 邪神ちゃん

『ダンジョンって魔力に満ちているからね。魔力が吹き溜まってる所には、こないだの転移ポイントに似たゾーンがあるんだ。そこを通ると同階層の別の場所にでるんだよ。それを駆使すれば可能』


『あーよくダンジョンで遭難する要因の』

『そんな場面あったか?』

『いや移動したの気づけないよ』

『そのゾーンに入って進むといつのまにか景色がかわってる的な。シームレス転移みたいな感じ』

『別の地点に移動してるのに気づきにくいから遭難するんだぜ』

『ああ、なるほど』

『それを意図的に使うのか』

『できるのそれ』

『できてるから短時間でついとるんやろ』

『そらそーか』

『探索者じゃねえのに探索者よりプロいなww』

『たしかに探索者としての技術たけえww』


 小さな頃、それこそおじいちゃんに叱られながらこっそりとこのダンジョンへ入っていた優星。

 魔力に導かれそれらのゾーンを使い、初めての探索での最高記録は、丁度ここの次90階層だった。


(……あれは、確か優星が7歳の頃)


 織姫は小さい頃の優星を思い出しにまにまと微笑む。可愛かったな〜今も可愛いけど!と甘い思い出を食む。


「さて、どーするかな。もう戻らないと夕食ギリギリだ。ここらで一旦帰るか?」


「……あ、そーか。沙織ちゃんが待ってる。帰りに温泉でも入って家に……」

 ※沙織ちゃんはリスナーに謎の女ちゃんと変換されている。


「いや、今日はお風呂セット持ってきてないだろ」


「……むむ。そうだった……」


「風呂は家のだな。沙織ちゃん沸かしてくれてるだろうし」


「……だね!帰ろう」


 洞窟の横側。小さな猫の石像がある。それがこのダンジョンの転移装置。

 使用すると出口側に置かれている同じ石像へ転移される。この装置は使用者の魔力が記憶され、再度触れると前回と同じ階層の石像へ転移することができる。ただし、使用後24時間経過すると魔力が霧散しリセットされてしまう。


 配信を切り、1層へ転移。ダンジョンの外へでると赤い夕陽が二人の顔を照らした。目を細め、湿った草木の匂いを肺に吸い込む。


「雨降ったのかな」


 優星が黒く濡れた土に目をやる。


「……だね。あ、洗濯物……!」


 今朝外に干していたのを思い出し慌てる織姫。それをみて優星はぽんと頭に手を乗せ微笑む。


「沙織ちゃん」


「あ、そか……沙織ちゃん、洗濯物取り込んでくれてるね!」


「沙織ちゃんいなかったらヤバかったな」


「ね。いいお嫁さんになるよ。どう、優星」


「は、はあ!?何言って……」


「沙織ちゃんは優星のこと好きだよ。絶対」


「……馬鹿なこと言ってるんじゃないよ。あんまそういうこと言って、沙織ちゃんが住みにくくなって出てっちゃったらどうする?もうあのご飯食べれなくなるぞ」


「!?、やだ……!!」


「だろー」


 手を繋ぎ、水溜りをよけながら家へと歩く。この何気ない一瞬一瞬が織姫にとって宝物なのだ。

 こんな毎日がいつまでも、どこまでも続いてほしい。

 いや、続けてみせる。そう願う、織姫なのだった。



 それから二日後。


「織姫ちゃん、何か織姫ちゃん宛にお手紙きてるけど……」


「ふえ」


 昼寝をしていた織姫。沙織に呼ばれ、目をこすりながらさしだされた封筒を受け取る。

 なんぞこれ?そう思いながら封筒へとまじまじ視線を落とす。


「……」


 差出人と自分の名前を数回みて眠気が吹っ飛ぶ。そして封筒の封をあけ、入っていた手紙を取り出し、内容へと目を通す。


 手紙を要約するとこうだった。


『邪神ちゃん』から誹謗中傷を受けた『木冬木春』が開示請求を行った。以上。


 目をまんまるに見開き、眼力で手紙に穴があくほどに見つめ固まる織姫。


 心配そうにその姿をみつめる沙織。


 外で洗車をしている何もしらない優星。


 織姫の手が震え始めた。



 ガタガタガタガタ……



 ガタガタガタガタ……



 ……や、



 や、や、やっちゃったあああああーーー!!!!(顔面蒼白白眼口から泡ぶくぶく)





 ――邪神ちゃんVS木冬木春のバトルは意外な結末へ!!




【重要】

先が気になる、もっと読みたい!と思っていただけたら、ブックマークや☆☆☆☆☆→★★★★★評価、をよろしくお願いします。執筆へのモチベが上がります。

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