3-8 何か違う
結論からいうと、俺が「吟遊詩人のレジデンツァ」を楽しめないんじゃないかという不安は杞憂であった。
もちろん俺が同性愛に目覚めたというわけではない。だが、主人公がヒロイン? であるクリフォードを本当に愛しているんだという気持ちはビシバシと伝わってきたし、そこには俺も共感する部分があった。そして、何より構成が見事だった。序盤に張り巡らされていた伏線は気持ちいいぐらいに回収されていく流れには好奇心をそそられたし、飽きることなくクリフォードルートは無事終了した。
俺と種田は目を充血させながらEDの間、拍手でこの作品を讃えた。やっぱり種田もやるんだコレ……。
「水谷君、さっきから鼻をすする音がうるさいんだけど……」
「いや、だって、ホントに主人公……というか俺、報われてよかったなって」
俺は感動してラストの方は終始泣いていた。やっぱり人を愛するってことに貴賤はないよな……。俺も二次元の中の嫁を本気で愛しているからわかるぜ、画面内の水谷慶悟……。
「ええ、いままでBLゲームに手を出してなかったことを悔やむぐらいにはすごい作品だったわ……。てか早く野田さんとこれについて語りたいわ……」
「世間が許すのならばその会話俺にも入らせてくれ……」
俺は目をこすりながら言うと、種田はうれしそうにほほえむ。
「さあ、当初『吟レジ』をやることを散々嫌がっていた水谷君、実際にやってみて改めて感想はあるかしら?」
種田が誇らしげに問いかけてくる。
「ねえよそんなもん。ただ種田、これクリアしたらすぐに貸してくれ」
「ふふ、その様子なら、明日のスカウトのための知識もばっちりよね?」
「いま、俺ほどクリフォードの知識を持っている男子は世の中にいない。任せろ」
「非常に頼もしいわ。今日の放課後、仕掛けにいくわよ」
「うい」
そういって互いに充血させた目で、俺と種田は目配せした。窓の外を見てみると、既に陽が登り始めていた。




