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ストレンジカメレオン  作者: チャンカパーナ橋本
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3-7 何か違う

「ちょっと待ってて」

「お、おう」


 ついに何やかんやで種田の自宅まで来てしまった……。

 種田の家は立派な一軒家であった。いままでのわがままな素行から、こいつの家はプリンセスが住むような大豪邸なのではないかと勝手にイメージを膨らましていたが、そこまではいかなかった。

 だが、なかなかに立派な家だ。少なくとも俺の家よりはデカい。やっぱりこいつなに不自由なく溺愛されてきたな……。そんな娘さんを育てた親御さーん! お宅の娘さん、実の同級生脅迫してますよー!


 そしてもう一つ何より驚くのが家の立地である。いや別に高級住宅街に建ってるとかじゃないんだけど、俺んちに結構近い。この場所ってことは多分種田となりの中学出身だな。だからあの図書館にいたのか……。


「いいよ」


 そう言って種田が扉を半分開けて俺を招きこむ。いやあ、すごいな俺、女子の家に招かれてるよ……。何か今まで思い描いてきたシチュエーションとは内容が大きく異なるけど……。


「お、おじゃまします」


 そう断って俺は玄関に入る。中に入り辺りを見回すと、人がいる気配はなく俺の声はむなしく響いた。


「ほいスリッパ。そんでこっち」


 言われるがまま俺は種田の後ろについたまま二階に上がる。こういう時はパンツが見える展開がギャルゲにはありがちだが、種田のスカートはロングスカートで、膝丈ぐらいまであったのでそんな展開はなかった。いや期待してませんでしたよ?


「この部屋。んで、ちょっと待ってて」


 部屋についた直後、種田が無造作に買い物袋や鞄をベッドに置きまた下の階に向かっていった。

 しかし、俺も待っててといわれてもやることがない。


 ……選択肢一、部屋を観察する。選択肢二、おとなしく一点を見つめる。

 俺は迷わず一を選択した。いやだって暇だし・……。タンスとか漁らなきゃOKだろ……。


 種田の部屋は白を基調としているが、小物など至るところにパステルピンクが見受けられ、意外にも女の子らしさのある部屋だった。


 しかし、ひときわ目立つ大きな本棚の中には。大量のラノベやマンガがはいっており、種田の部屋であることを改めて立証していた。


「……絶対俺みたいな部屋だと思ったわ」


 俺の想像した種田の部屋はもっと混沌としたものだった。フィギュアやポスターが至るところに散りばめられ、本も本棚に入りきらず適当に積まれているような、そんな部屋。……まあ、それは俺の部屋なんだけど。


「冗談やめてよ。どうせ水谷君の部屋って混沌としてキノコとか生えちゃうタイプのやつでしょ」


 憎まれ口を叩きつつ、種田がお盆に飲み物とお菓子を持って戻ってきた。おお、種田! お前そういう気遣いできたんだな!


「やめろ! 俺の部屋は、まだいつ買ったかわからない飲みかけのペットボトルが大量に置いてある程度だ!」

「ホント汚いわ……ちゃんと捨ててよ……」


 顔を歪めながら種田は真ん中のテーブルにお盆をおいた。いや、ホントごもっともです。でもなぜか飲みきれないんだよなああいうの……。


「というか種田もここら辺住みだったのな。そこにビックリしたわ」

「うん、だからあの図書館にいたのよ」


 まあ、そりゃそうか。


「……そういや、何でお前あのとき図書館にいたんだ? 別にテスト期間でもないし。普通の本も好きなのか?」


 あそこの図書館はそこまで規模が大きくないため、ラノベはホントに少ししか置いてない。種田がいる理由があるとしたら、単純に読書好きであることしか思いつかなかった。


「ああ、あれは丁度あのとき、とあるノベルゲーをクリアしたばっかでね。クリア後に色々調べてみたら神話もモチーフにしているっていうじゃない。元ネタも知ったらもっと楽しめるかなと思って、徹底的に図書館で調べてたのよ」

「な、なるほど……」


 良くも悪くも典型的なオタク気質なのだろうなコイツは……。


「オタクコンテンツがオタクの水谷君と出会うきっかけをくれた……。素敵な因果ね」

「ただお前が元ネタ調べてた時に俺がオタクバレしただけだけどな……」

「ロマンがないわね……」


 そう言ってしかめっ面をしていた種田は「さてと」と言って買い物袋から「吟レジ」を取り出した。


「早速やりましょうか」

「ホントにやるんすか……」


 心底やりたくなかった。なぜのんけが好き好んでBLやらねばあかんのか。


「当たり前でしょう。やらなかったら野田さん誘えないじゃない」

「いや、そこは俺たちの魅力的なアニメトークとかでさ。なんとか」


 とにかくやらなくていい理由をでっち挙げる。


「twitterをみるかぎり、これが好きってこと以外情報がなかったのよ。逆に、これのことについては嫌になるぐらい語ってたから、これさえ抑えとけば絶対入部してくれるわ」

「趣味の合わない奴をわざわざ入部させなくてもいいんじゃないか?」


 諦めず適当なことを言ってゆさぶってみる。しかし、種田は待ってましたと言わんばかりにふふふと笑みを浮かべた。


「水谷君、私は仲良しこよしのクラブを作りたいんじゃないの。オタクの中でも様々な専門的な知識を持った人物を集結させて、それぞれの角度からまた新たな作品の見方を創出させたいの」

「何だよその意識の高いアニ研は!」


 こいつは一体どこに向かっているんだろう……。


「つべこべ言ってるないで始めるわよ」

「へーい……」


 どうやら逃げ場はないようだ……。

 種田がディスクをゲーム機にセットし起動すると、会社名が表示されるお馴染みの流れから、タイトルが出現し、それがイケメンボイスで読み上げられた。


「うわあ……」


 もう拒否反応MAXであった。


「水谷君、これぐらいで動揺しないで。これからもっとすごいことが行われていくんだから」


 そういいながら、種田は主人公の名前を俺の名前にしようとしていた。


「ちょっと待てい!」

「何よ、水谷君は実名プレイしない派なの?」

「いや、逆に出来うる限り実名にする派だけど、今回は事情が違うわ!」

「あらやだ、ホモが嫌いな男子はいないっていう至言があるからつい……」

「一番間違っちゃいけないところが間違ってんじゃねえか! とにかく変えろ!」


 俺がそう言って種田からコントローラーを引き離そうとする頃にはもう既に種田は名前の入力を終えて。してやったり顔をしていた。ツッコんでる場合じゃなかったわくそ……。


「15世紀フランス。そこに、栄華を極めた貴族のお屋敷があった……」


 そしてあっという間にプロローグが始まってしまった。ああ、これで俺が野郎と疑似恋愛体験するハメになっちまった……。


「そう落ち込まないで水谷君、私が必殺技を教えてあげるわ」

「必殺技?」

「そう、オタクであるならばその資質は既に備わっているはず。それはずばり……擬人化よ!」

「……つまりこれから出てくるキャラをどんどん脳内で女体化していけと?」

「そういうことよ」

「なるほど、よしいっちょやってやんか!」


 口車に乗せられ、画面上に表示されているイケメンを必死で脳内で変換してみる。


①「君が、新しい使用人かい?」→水谷フィルター→「あなたが新しく配属された執事さんですかあ~?はわわ!」


②「ふん、まともに掃除も出来ないのかい君は」→水谷フィルター→「はあ~?あんたバカぁ?掃除ぐらいちゃんとしなさいよ!」


③「俺はこの家の当主、クリフォード翔だ。よろしく」→水谷フィルター→「私がクリフォード翔子よ。以後お見知り置きを」


 ……ぐおおおおお! だめだ! どうしても全部男キャラが女子っぽく振る舞う絵が見えてきて、非常に気持ち悪い!


「水谷君、ごめんごめん! 私が適当なこと言ったのが悪かったわ」


 種田が焦りながら俺の肩を揺さぶってくる。ああ、気持ち悪さのあまり、また少しトリップしてしまったか……。


「まあ、今回は野田さんの勧誘のためだからそんなに感情移入して見なくてもいいから。情報だけ業務的にインプットしていってよ」

「いや……それはだめだ……」

「え?」

「いくら俺がのんけだからとはいえ、この作品を作った人たちは真剣に作っているんだ。俺も真剣にみなければ失礼だ」


 そう。作品はクリエイターたちが全ての力を結集させて作っている。確かに俺は正直このゲームに興味もあまりないし、第一別にやりたくないもない。そもそもゲームを無理して見ているっていうのが失礼な話なのかも知れない。

 だが、無礼者には無礼者なりの礼儀がある。ただの自己満足だというのは百も承知だが、俺はやるからにはこのゲームを全力でやる!


「考えれば、擬人化なんてちゃちな小細工でしかなかったんだ……やるからにはオレは正面から、真っ向勝負で、この作品を楽しんでやる! それが俺が持っている。ちっぽけなオタクとしての流儀だから!」

「水谷君……!」


 種田が目をうるませる。こいつノリいいな。


 俺の頭の中では、まるで少年漫画のように熱い展開になっていたが、まあ現実はただ単にBLゲーをやっているだけであった。


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