3-3 何か違う
種田がいると俺が予想した場所は三つである。一つに絞れないことにはトライアングルのどこかというヒントが起因する。
一つ目の場所に着くと……いた。俺が推測した三つの場所のうちの一つ、アジメイトの前に種田はいた。
白いセーターと水色のスカートを合わせたコーディネートの種田はさわやかで、それでいて女の子らしくて、不本意だがちょっと可愛らしかった。
「おい」
ぶっきらぼうに言うと種田は驚くように腕時計と俺の顔を交互にみる。
……こうして改めて近くで見てみると、髪はいつもと違い、後ろでまとめてポニーテールにしているが、メガネは相も変わらず野暮ったさ全開なことに気づき安心感すら覚える。
「電話をしてから六分五十二秒……驚異的なスピードね。その知識に裏付けされた論理力、やっぱり水谷君は本物のオタクね」
「アニメイトにきただけでこんなに褒められたの初めてだよ……」
「いいえ、やはりあのクソ出題に対しこのスピードは敬意に値するわ」
「自覚あったんかい!」
街田にはオタクに優しい代表店が三つある。アジメイト、いぬのあな、ベーターズだ。そしてその三つは俯瞰で見ると、三角形を作るようにそれぞれ配置している。
種田がオタクトライアングルとしか情報を与えなかったので、三カ所すべてに足を運ぼうと思ってたが一発で見つけられたのは幸いだった。
「ええ、自覚ありすぎて十分経ったらもう一度電話しようと思ってたわ。でも、心のどこかでは水谷君を信じてた」
種田は作るように、目をうるませた。
「だから感動のシーンみたいな感じに言ってるけど、俺ただアニメイト来ただけだからね?」
その言葉を聴いて種田は「確かに、そうね」と返して、うるんだ目は一瞬で輝きを失った。
……いい性格してるって、こういう奴のことを言うんだろうな。
「まあ来たのはいいけど水谷君、なんで今日呼ばれたのかわかる?」
「ごめん、それに関しては名探偵水谷もさすがにお手上げ」
「鈍い、鈍すぎるわ水谷君」
いや、突然街田に人呼び出して、クイズ始めるお前にそんなこと言われたくねえよ……。人のことなんだと思ってんだ……。あっ、奴隷か!
「いい? いまのオタク界のトレンドはここで全てわかるわ。どのように販売を展開しているのか。どんなものを推しているのか。それを踏まえることで今後のスカウトに役立てていこうというのが今回の目的じゃない」
「いやはじめてきいたわ」
言葉足らずと言うか、こいつは、根本的に人への配慮が足りてない……。
俺の嘆きなどお構いなしに、種田は言葉を続ける。
「あと、『吟遊詩人のレジデンツァ』も買わなきゃね」
「……嫌なこと思い出した」
そういえば俺もやらなきゃいけないんでしたねあれ。
「まあ、わかったよ。とにかく付き合ってやるからパッパと終わらしちゃおうぜ。帰って詰んでるギャルゲやりたいしな」
そういや俺ポテチの袋開けてそのまま家出てきちまったんじゃないかとか考えつつ、アニメイトの入り口に向かっていく。
すると、ふと種田がついてきていないことに気づく。
慌てて後ろを振り返ると地面をじっと見てうつむく種田の小さな姿が見えた。
「おい、何やってんだ」
「……わかってる、いま行くわ」
……種田は眉をしかめたような表情をしていた気がした。
気になって「どうかしたのか?」と種田に聞くが、種田は「ううん、何でもない」と笑みを見せるだけだった。




