↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢デスゲーム~生き残るのは私とあなただけ~  作者: 小平ニコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/13

ハンター

 それにしても、だだっ広い大部屋でガンガン鍋を叩いていると、本当に自分がアホになったような気がしてくる。だいたい、こんなあからさまな音を立てて、敵がホイホイとやって来るものかなあ?


 普通は『何かの罠じゃないか?』と警戒して、むしろ距離をとるものじゃないだろうか。よっぽど自信満々で、自分の方が圧倒的に有利だと思っているような奴じゃない限り……。


 あっ。

 そうか。

 そういうことか。


 だから『残り二名の候補者も集まって来て、ここで一気に決戦になることはない』んだ。普通の人は、こんなあからさまな誘いに釣られてやって来たりしないから。


 そして、私たちが狙っているガートルードは自信満々であり、自分が圧倒的優位な『ハンター』で、他の候補者を『弱っちい獲物』程度にしか思っていない。だから、必然的に彼女だけをここに呼び出すことができるんだ。ガートルード以外の候補者の情報も知っているエリカは、それに強い確信があるのだろう。


 そんなことを思っていると、私の鳴らすガンガンというやかましい鍋の音に混ざって、ガシャガシャという金属音が響いてくる。


 この音。

 聞き覚えがある


 さっき、天井裏に隠れていた際に聞いた。

 ガートルードが歩く時の音。

 彼女が身にまとう甲冑が、擦れて鳴る音。


 来た。

 本当に来た。


 自分の喉が、ゴクリとなる。


 あの、重厚な金属のドアを吹き飛ばすほどの怪物と、今から対峙しなければならない。今までは、どこか夢の中にいるような気分で鍋を叩いていたが、一気に現実の緊張と恐怖が私の心と体を包み、呼吸が早くなる。


 えぇ……?


 うそでしょ……?


 これ、本当の話……?


 夢?


 夢じゃないの?


 目を閉じて、そして開いたら、現実のベッドの上で、目が覚めないかな。


 試しにやってみるか。


 目を閉じる。


 目を開く。


 変わらない、大部屋。

 変わらずに、鍋を叩く私。


 現実は非常である。


 そして、ガートルードがぬらりと現れた。

 ドアはすでに開け放しにしてあるので、破壊されることはない。


 ターゲットが現れたので、もう鍋を叩く必要はないのだが、動作を止めるのがなんだか怖くて、私は鍋を叩き続けた。叩くのをやめると、本格的な戦いがすぐに始まりそうで、それが、本当に、本当に、怖かった。


 そんな私を、アホを見るような目で見てガートルードは言う。


「何やってんだ、お前」


 アホの私は、アホみたいな言葉を返す。


「お、お鍋を叩いてる……」


「そんくらい、見りゃわかる。なんで鍋を叩いてんのかって聞いてんだよ」


 あなたをおびき寄せて、もう一人の仲間に狙撃させるためだよ。だから、もうちょっと近づいてきてほしいな。――なんてことが言えるはずもなく、言う必要もない。


 なので、もっともらしいデマカセを言う。


「えっと、その、私、なんでこんなところにいるのか、よくわからないの。だから、他にも誰かいないかなって思って。で、探したけど見つからないから、音を立てて、逆に見つけてもらおうと思ったの」


 咄嗟の言葉にしては、なかなか筋が通った内容だった。実際に、自分が何でこんなところにいるのかは分かってないし、最初にエリカに出会わなかったら、私はきっと、他にも誰かいないか探し回っていたに違いない。


 その場合は、このガートルードにいの一番に出くわし、わけもわからぬままに殺されるという最悪の運命もありえた。そう思うと、背筋が寒くなる。


 ……でも、この人。

 本当に、そんなに怖い人なのかな?


 見た感じ、ちょっとキツそうな雰囲気はあるけど、いきなり攻撃せずに、声をかけてきたんだから、意外と話が通じるんじゃないだろうか?


 そう思った次の瞬間。


 ガートルードは腰の剣を抜き、その場で素振りをした。


 いったい何を?


 その疑問は、すぐに解けた。


 振られた剣の先端から、衝撃波のようなものが飛ぶ。

 それは真っすぐ私に向かって来る。


 私は、鍋を捨て、思いっきり横に飛んだ。


 緊急回避。


 グシャッ。


 音を立て、鍋がバラバラになる。


 ゾッとした。

 結構大きくて、頑丈な鍋だったのに。


 たったの一撃で、バラバラ。


 あれが人間に当たったらどうなるのか。

 想像したくないが、想像してしまった。


 きっと、血しぶきを上げてバラバラになるのだろう。

 手も、足も、頭も。


 まさに『超攻撃力』の衝撃波。


 その自慢の一撃を回避され、ガートルードは「チッ」「チッ」と二度舌打ちをし、つまらなそうな目で私を見た。本当に、道端のゴミを見るような、つまらなそうな目だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。