大事なこと
『本当に? 自分で決められる? あんなに悩んでたのに?』
『もう、テレパシーを切ってください。これ以上話したくない。もう二度と、私にテレパシーを送ってこないでください』
『心配しなくても、この便利なテレパシーは二回しか使えないの。受信も、発信もね。泣いても笑っても、今回が最後。だから、もう少しおしゃべりしましょうよ。私ね。あのエリカにいいようにされてるあなたが、哀れで仕方ないのよ』
『憐れんでもらわなくても結構です。それに私、エリカにいいようにされてなんかいません。エリカは私の友達です。私はエリカを信じます。信じたいんです』
『本当にそれでいいと思う? あなた、大事なことから目をそらしてることに、自分でも薄々気がついているんじゃない?』
『やめてください。切って。早く切って』
『自分で認められないなら、私がハッキリ言ってあげましょうか』
『やめて! もうしゃべらないで!』
『このゲームで生き残れるのって、本当に二人なのかしらね』
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もう、オリヴィアは何の言葉も発しなかった。
完全にテレパシーを遮断したのか。
それとも、黙ってこっちの思考を伺っているのか。
それはわからない。
しかし彼女は、私の心に、特大のクサビを打ち込んでいった。
このゲームで生き残れるのって、本当に二人なのかしらね――
そう。
それはいつごろからか、私が疑問に思っていたことだった。
だって、なんか変だもん。
例えば、二人対二人の対抗戦で、勝った方の二人が生き残るって言うのは、自然だ。もしくは、20人くらい参加者がいて、そのうち二人だけ生き残れるというのも『生存確率は十分の一』という切りの良さで、まあ、わかる。
しかし、5人のうち2人だけ生き残れるっていうのは、なんだかすごく中途半端だ。参加者5人のデスゲームなら、普通は生き残れるのは1人だろう。そっちの方が、明らかに自然である。
だいたい、私とエリカ以外は、誰もコンビを組んでいないのがおかしい。自分を圧倒的強者だと思い込んでいるようなガートルードはともかく、"ちゃんとしている"クリスティンと、"多くの情報を持つ"オリヴィアなら、互いに手を取り合って協力する方が明らかに合理的なはずだ。
何より、私は知っている。
エリカが『嘘つき』だということを。
彼女は平然と、躊躇なく、嘘をつく。
それも、理屈の上では完全に筋が通っている、反論しがたい嘘を。
だったら、最初に私に説明したルール。
『生き残れるのは二人だけ』が、そもそも真っ赤な嘘である可能性は大いにある。
では、なぜエリカはそんな嘘をついたのか。
……
…………
………………
考えたくない。
考えたくはないが。
最後の二人になるまで、私を上手に操り、そして、最後の二人になった瞬間、デスゲームに勝利したと安堵している間抜けな私を、背後から撃ち殺すためだろう。
いや。
でも。
そんな。
本当に?
本当にそうかな?
何もかも、私とエリカを仲たがいさせようとしてるオリヴィアの策略なんじゃないの? そうだよ。エリカが信じられないって言うなら、コソコソとテレパシーを使って、確証もないのに色々なことを吹き込んできたオリヴィアだって信用できない。
どっちも信用できないなら、私はまだエリカの方を信じたい。エリカの本心がどうであれ、二人で命の危機を乗り越えてきたことだけは、間違いなく真実なのだから。
それでも、これからオリヴィアと対峙する前に、なるべく迷いは消しておきたい。だから私は、単刀直入にエリカを問い詰めることに決めた。クリスティンとのこともあり、もう策謀めいた駆け引きはウンザリだった。
問い詰めた結果、エリカが私を用済みと思い、銃で殺すというなら、殺せばいい。もう、駆け引きは本当にウンザリ。私を殺して、オリヴィアと一対一で決着をつければいい。
そんな思いと覚悟を込めて、私は問う。
「ねえ、エリカ。このゲームで生き残れるのって本当に二人なの?」
突然の質問。
しかしエリカは、平然としていた。
「もちろんよ。そうでなければ、二人で組もうなんて思わないわ」
予想していた答えだった。
私はなおも食い下がる
「そうかな? たとえば、たとえばの話だけど、『生き残れるのは二人だ』って騙して、最後の二人になるまでは協力して、本当の、最後の最後で、パートナーを後ろから撃つ。これって、凄く合理的じゃない?」
言ってから、かなり厳しい発言になってしまったと思う。『後ろから襲う』じゃなくて『後ろから撃つ』と言ったのは、少し直球すぎたか。これって、『あなたは最後に私を銃で撃ち殺す気でしょ』って言ってるのと同じだもんね。でも、何度でも言うけど、もう駆け引きはウンザリだった。だから、これでいい。
エリカは黙った。
その表情に変化はない。
苦しいところを突かれたから、困って黙ったというより、何故私が突然こんなことを言い出したのか、考えているようだった。




