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悪役令嬢デスゲーム~生き残るのは私とあなただけ~  作者: 小平ニコ


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理路整然

 エリカはなおも畳みかける。


「そんな『聖女プリシラ』があなたの『何か企んでます?』という問いに黙ってしまったとしても、肯定とはならないわ。だって、あなたの迫力に押されて、ションボリうつむいてしまっただけだもの。見てよ。この子の顔。今にも泣きそうでしょ? こんな子に、騙し討ちの謀略なんてできると思う?」


 理路整然。

 立て板に水を流すような淀みない弁舌。


 オモチャとはいえ、20体もの兵隊に取り囲まれて絶体絶命の状況で、ここまで平然としていることに驚きを禁じ得ない。ちょっとしたことでオロオロアワアワとパニックになってしまう私とは、役者が違う。


 クリスティンも感心し、一理あるというように小さく頷いたが、それでも彼女は、私ほど単純ではなかった。クリスティンは逆に、エリカの平然とした様子に疑問をもったようである。


「あなたのおっしゃること、まあ、理解できなくもないですわ。大人しい『聖女プリシラ』さんに、厳しい問い詰め方をしたことは謝りましょう。しかしやはり、あなたたちを信用できませんわ」


「どうして? その理由は?」


「あなたよ」


「私?」


「あなた、冷静すぎますわ。それに、頭と口が回りすぎる。そっちの『聖女プリシラ』さんは無害な存在だったとしても、見た感じ、押しに弱そうですし、あなたに強く言われたら、断り切れずに謀略に協力するのではなくて?」


「つまり、私が謀略を企んでいると?」


「違うの?」


「もちろん違うわ。それに、仮に私が謀略を企てていたとするなら、強く詰問されたくらいで黙り込んでしまう『聖女プリシラ』を一緒に連れてきて、何の役に立つというの? この大人しい子を連れて、無防備にあなたの前に出てきたことが、私たちが無害な存在であるという証明にならないかしら?」


「何の役に立つかどうかは、私の『私兵』に囲まれて動けない今の状況ではわかりようがありませんが、恐らく、何か強力なスキルを持っているのでは? それにあなた。あなたのスキルも、私は知らない。信頼してほしいのなら、手の内を見せてちょうだい」


「それもそうね。じゃあ、端的に言うわ。そっちの『聖女プリシラ』のスキルは『超回復力』。簡単な傷ならすぐに治ってしまう優れものよ」


 嘘だった。

 それなのに、疑う気など起こさせないような、堂々とした物言いだった。


「それを証明する方法はありますの?」


「実際に傷を負い、それが治るところを見てもらうしかないわね」


 エリカとクリスティン、二人の視線が私に注がれる。私は頷いて、恐る恐るだが、『私兵』の構える槍の先端に人差し指の先端を押し当てた。


 痛っ……


 オモチャの『私兵』の槍は、見た目よりずっと鋭かった。


 指の腹から、つぅっと赤い血が流れる。だがそれは、ものの数秒で止まり、さらに三十秒も経つと、傷そのものすらが、最初からなかったかのように消えてしまった。『超体力』の回復力は、かなり強力なようだ。


 よく考えたら、ガートルードにあれほどボコボコにされたのに、それもすっかり完治しているので、この程度の傷の修復など、造作もないことなのかもしれない。


 クリスティンは、一応納得したように頷いた。


「なるほどね。回復特化のスキル……というわけですわね。大人しいあなたにピッタリですわ。で、『悪役令嬢エリカ』さん。あなたのスキルは?」


「ないわ」


「はぁ? そんなはずないでしょう? それでは、あなただけ不利すぎますわ」


「それが、そうでもないの。私はスキルがない分、他の候補者より多くの情報と『特別な武器』を与えられてるの。たとえば、全候補者の初期位置とかね。クリスティン、あなたの初期位置、当てて見せましょうか。西館の二階。第三客室の窓際ソファの裏。ここは東館だから、随分と移動したのね」


 クリスティンの顔が、先程のように驚いたものになる。

 今気づいたが、この子、割と顔に出るタイプらしい。

 少しだけ、親近感がわいた。


「……確かに、大当たりですわ。あなたが、最初から今まで私の行動を監視していたとも思えませんし、他の候補者より多くの情報を持っているっていうのは事実なのでしょうね。もしかして、私のスキルについても最初から知っていましたの?」


「ええ。あなたのスキルだけじゃない。全員のスキルを知っているわ」


「なるほど。で、『特別な武器』っていうのは? 具体的にはどんなものですの?」


「これよ」


 エリカは躊躇することなく銃を取り出し、見せつけた。

 クリスティンの顔がサッと青ざめる。


 当然だろう。一撃必殺の武器を持つ人間を、もう少しで自分のすぐ近くにまで近づけてしまうところだったのだから。その恐怖が、怒りの言葉となって口から出る。


「あなた……! 言葉巧みに私に接近して、その銃で騙し討ちする気でしたのね……!」


 だが、エリカはひるまない。

 やれやれというように、大げさに肩をすくめる。


「そのつもりだったら、今ここで、あなたに銃を見せたりしないと思うんだけど。『私兵』に囲まれているとはいえ、もうギリギリ銃の当たる範囲にあなたはいる。普通なら、いちかばちかで勝負に出るところでしょ? でも、私は包み隠さずあなたに銃を見せた。何故だと思う?」

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