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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第1章 異世界
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8/80

8.冒険者になりました

 次の日。

 俺たちは冒険者になるべくギルドへと向かった。

 いつまでもあのパーティーの厚意に甘えているわけにもいかない。

 自分たちでお金を稼ぎ、自立しなくては。


「ここがギルドみたいだね。じゃあ、入るよ」

 日比野が、その重厚なドアを開く。

 俺たちは、期待と不安の気持ちで、中に入った。


「いらっしゃいませー。料亭は左手にございます」

 あれ?

「……けっこう賑わってるね」

 俺の隣にいた城戸が呟く。

 俺も同感だ。


 俺のイメージだと、乱暴な男たちが屯している怪しい場所、って感じだったが。

 左に見える料亭には、老人や子供連れもいる。

 奥の中庭では、子供たちが鬼ごっこしているのが目に入った。

「冒険者登録がしたいのですが……」

「でしたら、あのカウンターにお並びください」

 日比野がおずおずと尋ねると、スムーズに案内された。


 カウンターには、すでに数名が並んでいた。

 前の方から、あなたはどの職業がおすすめだの、これがいいだのと聞こえてくる。

 俺は魔力が高いらしいし、魔法使いと言ったところだろう。

「次の方どうぞー」

 俺の番だ。


 書類に名前を書くと、職員が水晶玉を取り出し、カウンターに置いた。

 この水晶玉で能力を測るとともに、本人確認をするらしい。

「おや、魔力がとても高いですね。魔術師(ウィザード)が天職でしょう」

 だろうな。

「じゃあ、それでお願いします」


 その後、職員やその辺の冒険者に、いろいろと聞いて回った。

 まず職業。

 冒険者にもさまざまな職業があり、それぞれがいろいろなものに特化している。


 多種多様な魔法を操り、敵を倒す魔術師(ウィザード)。


 流麗な剣技で敵を葬る剣士。


 回復魔法や強化魔法で仲間を支援する修道士(プリースト)。


 最前線で敵の攻撃を防ぎ、仲間を守る衛士(プロテクター)。


 器用な立ち回りで敵を貶める盗賊。


 まあ、有名どころはこんなもんか。

 他にも弓使い(アーチャー)や槍使い(ランサー)、重戦士(タンク)など、さまざまな職業があるらしい。


「しーちゃんは何になったのー?」

「魔術師(ウィザード)だけど。……ていうか、お前もう立ち直ってんのかよ」

 昨日怒られた後一言も喋ってなかっただろ。

「まあねー。ちなみに私は盗賊だよー」

「体小さいし向いてるだろうな……!? お、おい、なんだその目は! あっそうか、ごめんな身長バカにして! 許してあああああ!!」

 俺がいったいどんな折檻を受けたのかは、恐ろしくて書き表すこともできない。



「はーい、みんな集まってー。

 とりあえずいろいろクエストをこなしたいから、出席番号順に3人組を作ってもらってもいいかな?」

 出席番号順!?

 となると、俺の仲間は……。


「あかねと一緒なら安心っしょ」

「そ、そう? ありがと……神埼くんもよろしくね」

 榎田と城戸!

 嫌な予感しかしない。


「とりあえず、どんなクエストするか選ぼうよ」

 そう言いながら、城戸が掲示板に駆け寄る。

 掲示板には、モンスターの目撃情報や、市民からの依頼書などが所狭しと貼られている。


『ヘーレ迷宮の未踏領域探索者募集。1人100000カラン。命の保証なし』

『街道沿いに出現した吸血コウモリの巣の駆除。50000カラン』

 命の危機を感じるので、これはやめておこう。

 ちなみに、1カラン1円換算なので、全然割に合わない。


『庭に入り込んだスライムを退治してほしい。2000カラン』

 お、これはいいんじゃないか?

 手早くこなせそうだし、難易度も低い。

 いくつもクエストをこなせば、それなりの収入になる。

「これとかいいんじゃないか?」

「いいじゃん。あかねもそう思うっしょ?」

「そうだねー」

 決定!


「では、お気をつけて」

 カウンターに持って行くと、あっという間に受注された。

 俺たちはギルドを飛び出し、地図を片手に依頼人の家へと向かう。



 依頼人は、穏やかな老人だった。

「庭にスライムって……よくあるんですか?」

「ああ、これで何度目か……。攻撃はしてこないんだけど、畑の作物を食べられたり、庭の花壇を荒らされたりでね……」

 老人は、困った顔で言う。


「そのスライムって、いつも同じやつなんですか?」

「たぶんそうだね。特徴的な、吸い込まれるような青色をしているんだよ」

「なるほど……。とりあえず、そのスライムのいるところに案内してください」

「分かった。今はたぶん、畑でほうれん草を食べている頃かな……?」

 そう言うと、老人は俺たちを先導する。


 家の裏には、広大な畑が広がっていた。

 この大都市アルトでも、郊外はこんな感じらしい。

「ほら、畑の真ん中」

 見ると、なるほど青色のスライムが作物にぱくついていた。

 事前情報では、スライムは体力も低い雑魚。

 簡単に殺れるな。

 そう思い、2人の方を見ると……。


「何あれ、めっちゃかわいいんですけど!」

「あれ私たちで飼ってもいいかな。ねえ神埼くん、いいでしょ?」

 ええ!?

「お、俺に言われても……。おじいさん、いいですかね?」

 老人に聞くと、快く承諾してくれた。

「スライムがいなくなるんなら、何でもいいよ。報酬もちゃんと払うさ」

「「ありがとうございます!!」」

 えー……。


 こうして、スライム退治作戦は、スライム捕獲作戦へと変更された。

 スライムを倒すのは簡単だが、捕まえるとなると難しい。

 畑を荒らさないようにとなると、なおのことだ。

 うまく誘導して、罠に誘い込んだりとかかな……。

 そう思っていると。


「……え?」

 スライムが、なぜかこちらへ駆け寄ってきた。

 それも、攻撃的な感じではなく。

 スライムは、そのまま榎田の足元へ駆け寄ると、安心しきったかのように大人しくなる。


「ど、どういうこと……? スライムは懐かないはずなのに」

 城戸が、俺の気持ちを代弁するかのように聞く。

「ああ、あたしの職業、魔物使い(テイマー)なんよ」

 こうして、「スライム使いの榎田菜奈」(自称)が爆誕した。


 魔物使い(テイマー)とは、魔物や動物を懐かせ、思いのままに操ることのできる職業。

 普通は訓練が必要だが、榎田の場合は神の能力によって無条件に懐かせられるらしい。

 まあ、自分より弱い魔物限定だ。

 だから、ドラゴンだの魔王だのを手懐けることはできない。


「ありがとう、助かったよ。はい、これは報酬の2000カラン」

「ありがとうございます!」

 俺たちは報酬を受け取ると、次のクエストを受注しに、ギルドへ駆け戻る。

 それを繰り返すうち、すっかり夜になった。



「だめ! モンスターなんて飼えるわけないよ。倒してなんて言わないから」

「別にいいじゃん。あたし魔物使い(テイマー)なんだから」

「で、でも、食べ物はどうするの? ちゃんと飼えるの?」

「スライムの食べ物は草だから。それに、ちゃんと言うこと聞くから。お手!」

「じゃ、じゃあいいけど……」

 榎田は、みごと日比野を黙らせ、スライムを飼うことに成功した。

 って、スライムお手できるの!?


 ちなみに、今日のクラス全体での収入は、40000カラン。

 宿代と食費を払うと、これっぽっちも残らなかった。

 だが、自分たちだけで生活をつないだというのは、いい経験になった。

 幸せな気持ちで、28人と1スライムは眠りについた。

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