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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第3章 エルフの村
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32.エルフと出会いました

 こちらに敵意を向ける、エルフの少女。

 俺たちは、それとの戦いに突入した。


「テレキネシス!」

 魔力を普段よりも多く込め、少女の動きを封じようと試みる。

「……!? 動けない……!」

 細かな表情の変化まで読み取ることは叶わないが、どうやら成功したようだ。

 少女は体を震わせ、少しでも動こうと試みている。

 が、俺の張り巡らせた魔力の檻に阻まれ、腕一本振ることさえままならない。


「先制攻撃を行なったその大胆さと自信は尊敬するよ。

 だが、相手の実力を見誤らないというのも、大切なことだと思うがな!」

 言うが早いか、前に伸ばした手を勢いよく上に掲げる。

「う、うわああっ!?」

 少女はそれに引っ張られるように宙に浮いた。


 ここで、少し嗜虐心が湧いてきた。

 掲げた手を、円を描くようにぐるぐると回す。

 少女はなすすべもなく空中を引き摺り回される。

「こ、降参! 攻撃したのは謝るから! だからもうやめて!」

「ごめんで済むなら警察はいらねえんだよ!」

 いや、この世界だと衛兵か?



 家の中。

 ちゃぶ台を挟み、悠然と構える壮年の男、慎ましい銀髪の女、そしてあの少女と相対する。

「……それで、事情というのは?」

 男が、威厳ある声でこちらに問いかける。


 調子に乗って少女をぶん回し続けていると、後ろの家から出てきた2人に、うちの娘に何してるんだと怒鳴られる羽目になった。

 状況が状況なので、家の中で話すことにしたのだ。


「ちょっと神埼、あんたが謝んなさいよ」

 俺の横に座る榎田が、小声でそう促す。

「何でだよ。あいつの魔法で、俺たち死んでたかもしれないんだぞ? 適切な措置だろう」

「……流石にやりすぎだと思います……」

「しーちゃん、いじめっ子みたいな顔してたからねぇ」

 反駁を試みるも、荒川と三城がさらに畳み掛けてくる。


「ぐっ……しかし、あくまでも先制攻撃してきたのは向こうだ。俺は自衛しただけだ」

「なら、テレキネシスで動きを封じるだけで良かったっしょ?」

「……力を見せつけて戦意を削ぐことも戦術の一つだ」

「それでも、小さな子供に対する仕打ちとはとても思えませんね……」

 俺は食い下がるが、さらなる追撃にさらされる。


 その時、男が口を開いた。

「なるほど、状況は理解できました。うちのリリアが、あなたたちを攻撃したのですね。

 ……本当にすみませんでした」

 てっきり怒りの言葉が飛んでくるかと思われたが、夫婦は深々と頭を下げる。

 リリアと言うらしき少女も、渋々といった様子で続いた。


「リリアは最近魔法ができるようになって、見せびらかしたかったのでしょう。とんだご迷惑をおかけしました」

「いえいえ、こちらこそ少々やり過ぎてしまったかもしれません」

 どちらともなく謝罪し、状況は平和裏に集結した。


「そうだ、今日はこの村に泊まっていくとよいでしょう。何かクエストにお手伝いできることがあるかもしれません」

 女の方が、明るい口調でそう提案する。

 まさに渡りに船。この村についての情報を得ることもできる。

「そこまでしていただけるとは……。感謝してもしきれません」


 ここは、数十人のエルフが暮らす村、サフェル村。

 俗世間との接触をほとんど行っていないため、少し見回るだけでも珍しいものが目に入る。

 リリアの父アイセンによれば、この森で暮らす住民はこのサフェル村以外にはないとのこと。

 とはいえ、地図やモンスターの情報なんかも集められそうだ。


 しかし、気になる点が一つある。

 エルフは、サレン川の西岸にしか住んでいないはずなのだ。

 サレン川同盟の条文にも、「人族は東岸、エルフ族は西岸を支配領域とし、互いにその権利を侵害しない」と定められている。


 気になって、アイセンに尋ねてみた。

 すると、アイセンは少し悲しい目をした後、エルフと人の歴史について語り出す。



 かつて、エルフはサレン川流域一帯に散らばって住んでおり、小さな町がいくつもあった。

 エルフたちは、現在アルトのある付近にまで進出していたらしい。

 エルフの町同士は平和で、魔法技術は民間のためだけに磨かれていた。

 当然、兵士などどの町にもいなかった。


 が、その日常は突然に崩壊する。

 今から500年前、当時隆盛を極めていた人族の帝国が、この地域に攻め込んでくる。

 武力の皆無だったエルフは、なすすべなく敗北した。


 エルフたちは、サレン川を渡り西岸に逃れることを選んだ。

 しかし、渡河に失敗したり、逃げ遅れたものは、みな死んだ。

 幸いにも、帝国はサレン川を渡ってまで追撃することを選ばなかった。

 この帝国が崩壊した後にできた国の一つが、我々の住む王国となっていったらしい。


 さて、東岸のエルフたちは、すでに滅んだと思われていた。

 しかし、生き残りがいた。

 この幽玄の森に潜み、帝国の目を欺き生き残ったものたち。

 それがこの地に集い、サフェル村を築き上げたのだ。



 エルフの寿命は数百年を超える。

 アイセンは、その修羅場を潜ってきた張本人なのだ。

「……それは、何とも……」

「ああ、気にすることはない。今の人族の方々には何の罪もないからね」

 言葉に困る俺に、アイセンは笑いかけてきた。

 が、その表情には、心なしか悲しみが宿っていた。

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