↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第3章 エルフの村
PR
28/80

27.探索に行きましょう

「うわああっ!?」

 悲鳴と共に、俺は飛び起きた。

 心臓がバクバクと弾けるような音を立てる。

 乱れた息、上下する肩。

 震える指先。


「むにゃ……。しーちゃんどうしたの、怖いゆめでもみたの?」

 隣の三城が起き上がり、目を擦る。

「いや、何でもない……」

「えー、でもなんか変だよ。……熱はないみたいだけど」

 俺が誤魔化したのが不満だったのか、三城がこちらに這い寄ってくる。

 そのまま俺の額に手を当て、自分のそれと比べた。


「……まあいいや、朝ごはんつくろっと」

 三城が馬車の方へ向かうのを見届けると、俺はさっき見た夢について考える。

 一体あれは何だったのだろうか……?


 森を1人で歩く俺。

 まるで何かから逃げているかのような足取り。

 ふと近くの茂みに何かの気配を感じ、立ち止まる。

 その瞬間、囲まれたことに気づき──


「……俺は一体何に襲われていたんだ?」

 そこの記憶だけがはっきりしない。

 囲まれたあと、飛びかかられたような気もするし、魔法で撃たれたような気もするし。


 まさか、予知夢というやつなのだろうか。

 夢にしては、嫌にはっきりしていた。

 俺たちはあの森で、何かに襲われるのだろうか……?


「……まあ、夢なんて気にするだけ無駄か」

 俺はそう自分に言い聞かせ、三城の後を追った。


 朝食を済ませ、装備を整える。

 いよいよ探索の始まりだ。

 出発の前に、日比野が皆を集める。

「これから森へ行くけど、グループで行動して、絶対に1人にならないこと。モンスターを見つけた時は、気づかれないように立ち去ってみんなに知らせること。もし気づかれたら、大声で助けを呼んでね」

「「はーい」」

「あと、装備は大事に扱ってね。もし壊れたりなくなったら簡単に取り替えられないし、危険だからね。食料も限りがあるから、できるだけ節約していこう」

「「はーい」」

「それと──」

「みつきったら、そんなに話してたら日が暮れちゃうよ」

 湯梨浜が話の長い日比野に茶々を入れる。


「それもそうだね。じゃあ、しゅっぱーつ!」

「「おおーっ!!」」



 森はとても静かだった。

 かといって不気味な静けさというわけでもなく、耳をすませば小川の穏やかなせせらぎ。

 さらに奥からは、どうどうと流れるサレン川のざわめきが。

 鳥のさえずりも、虫の鳴き声も聞こえる。

 モンスターや危険な野生生物がいそうな雰囲気ではない。


「うーん、どこから探索したらいいのかな……」

 日比野が地図を広げ、悩む。

 この地図、通った場所を勝手に記録してくれる便利な魔法の地図らしい。

 覗き込むと、馬車の通ってきた道の周り以外は、空白になっていた。


「せっかくこんだけ人数いるんだから、手分けして探したほうがいいんじゃないか?」

 清水が提案する。

「そうだな。3、4人で固まって行動すれば、危険も少ないだろう」

 松久が同調した。

 皆も概ね賛成のようだ。


「じゃあ、そうしようか。グループに分かれて、前後左右を手分けして探そう」

 グループが何となくで決められた。

 結果。


「……不安しかない」

「え〜、そんなこと言わないでよぉ」

「だってお前カエルと戦ったときめちゃくちゃやらかしてただろ。心配にもなるわ!」

「うっ……ひっ、わ、私だってちゃんとやるから……」

 しまった、言い過ぎたか?


「泣かないで泣かないで〜。

 ちょっと、そんなに言うことないでしょ。謝んなさいよ」

 三城を榎田が優しく撫でると、こちらにキッと鋭い目線を向ける。

「……はいはい、すいませんでした」

「真面目にしなさいよ……ってこれで許せるわけ!?」

 ニッコニコになった三城に、榎田が軽く驚愕している。

 そう、三城はこれくらい単純だから覚えておけ。


 森を進む。

 背の高い草に覆われた地面に、獣道が通っている。

 が、はや20分ほど歩いたが、いまだモンスターとの遭遇もなし。

 危険なところではないかもしれないなと警戒を緩め始めた頃。


「……! 何か来る、警戒しろ!」

 横の草から、何かが飛び出してくる。

「……は?」

 それは、スライムであった。


「……あれも飼うか?」

「いや、あたしはこのすまいむだけで十分」

 いちおう榎田に聞くと、髪の毛から蒼いスライムが顔を出した。

「じゃあいいか。うりゃっ!」

「ぎゃああぁ」

 心置きなくぶん殴ると、スライムは吹っ飛んでいった。

 これだけで死んでしまうのだから、弱いモンスターなこと。


「ちょっと、また来たんですけど!?」

「……てなんか多くないか!?」

 榎田の指差す方を見ると、こちらへ突っ込んでくる十匹ほどのスライム。

「スライムって群れないんだぞ!? ……いやまあ、これでも雑魚だけども」

 一瞬にして俺の魔力と戦闘経験の足しとなった。


 スライム小隊を撃破したあとは、特に何かに遭遇することもなかった。

 手持ちの地図も、それなりに埋まってきた。

 地図は何枚か持ってきたようで、後でまとめることができるらしい。


 しっかし、この地図は便利だ。

 自分の居場所も表示されるし、勾配や縮尺も正確に表示される。

 道に迷っても、この地図を見れば安心だ。


「きゃああああっ!!」

 その時、森を悲鳴がこだまする。

「何だ!? ……行くぞ」

 モンスターに襲われている可能性がある。

 一刻も早く加勢しなければ。


 俺たちは、獣道を外れ、木々の間を縫うように走る。

「神埼! 何があったかわかるか?」

 同じく悲鳴を聞きつけた清水たちに出会った。

「分からん、とにかく急いだほうがよさそうだ」


 森を走り抜け、ついにこの辺りかと言うところまで来た。

 しかし、いったいどこで誰が何を……?

「あっ、あれ!」

 清水と同じグループの土岐枝が、ある方向を指差す。

「何だ……あっ!?」

 そちらを向いた清水が、声にならない叫び声を上げる。


 牙を剥き、唸り声を上げる3頭の野犬。

 木を背に怯える荒川の周りを取り囲み、今にも飛びかからんばかりだ。

「は、早く助けに向かうぞ!」

「分かった!」

 清水に促され、俺たちは駆け出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。