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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第2章 アルトの危機
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15/80

15.森がおかしいです

 ある日、いつものようにギルドに向かうと、何やら慌ただしい。

 いつもはのんびりしている冒険者たちが、あくせくギルドに出入りしている。

 職員たちも、書類の山を持ってあっちへ行ったりこっちへ行ったり。


「何があったんだ?」

「聞いてないのか? 森からモンスターが消えちまったんだよ」

 聞くところによれば、この町近くの森から、モンスターが忽然と姿を消してしまったらしい。

 何か大きな脅威が森に現れた可能性があるため、急いで調査を行っているのだとか。

 冒険者としても、モンスターがいないとクエストが減り、収入源に直結するから、進んで協力しているのだそう。


 なら、俺たちも協力すべきだろうな。

 手がかりを見つければ高額の報酬がもらえるみたいだし。

 俺たちは、さっそくカウンターに向かった。


「……申し訳ありませんが、仮冒険者の方々は、特殊クエストへの参加は認められておりません。一般冒険者の方のみの参加となりますが、よろしいでしょうか」

 そういえばそうだった。

 日比野は渋々と言った様子でサインすると、俺たちを送り出す。

 向こうのパーティーとも合流し、6人で森へと向かった。



「……マジで何もねえな」

 森へ入って30分、泊が悪態をつき始めた。

「まあそんなこと言うなよ。きっと何か見つかるはずさ」

「でも、こんなところに手がかりがあったとして、とっくに他の奴に取られてるだろ」

 励ます松久の言葉を遮るように、芹沢が吐き捨てる。

 そして、3人でひときわ大きなため息をついた。


 悲しいことだが、芹沢の言う通りだ。

 こんな高額のクエスト、滅多にあるもんじゃない。

 冒険者は皆、血眼になって捜索を行なっている。

 道端なんかにごろごろ手がかりが落ちているはずがない。


「でも、手ぶらで帰るわけにもいかねえしな……」

「じゃあ、こんな道歩いてないで、ああいうところを探したほうがいいんじゃないか?」

 芹沢が、獣道の横、鬱蒼とした森を指差す。

「気は進まないけど、やるしかねえよな……」

 井川を先頭に、俺たちは密林へと足を踏み入れる。


 森の中は足場も悪く、いかにも何かが出そうな雰囲気だ。

「おい、こりゃなんだ!? ……チッ、カタツムリの殻かよ」

「何だあの光は! ……って、水たまりに太陽が反射しただけか」

 皆は何かを見つけては一喜一憂する。


 結局、森の中を1時間ほど歩いたが、やはり何も見つからなかった。

「これ以上いても仕方ない、もう帰ろうぜ」

「何か見つけたかったけどねぇー……」

 皆は諦めムードになり、緩慢な動作で来た方向へ歩き出そうとする。


「あ、ありゃ何だ!? ……!」

 突然、松久が短い叫び声を上げると、ハッとしたように口を塞ぐ。

 松久の前方を見てみると──


 スライムの行列。

 何百匹ものスライムが、木々の間を縫って俺たちの目の前を通り過ぎていく。

 不思議なことに、スライムたちは皆濃い藍色をしている。

 幸いなことに、こちらには気づいていないようだ。


「気味悪いな。軍隊みてえだ」

 泊の言う通り、その一糸乱れぬ行進は、軍隊を彷彿とさせるものだった。

 しかし、スライムは基本的に群れを作らない。

 とすると、誰かに飼い慣らされているということか……。


「……異常だな」

「ギルドに報告しようぜ。……でもまずは、どうやって気付かれずに帰るかだが……」

 その時、俺の懐から、青色をした何かが飛び出す。

 その何かは音もなく着地すると、スライムの群れを睨みつける。

 ……どっかで見たことあるぞ。


「……って、榎田のスライムじゃねえか」

 すまいむだっけ? ……しかし、何で俺の懐に?


「おい神埼、何か紙落ちてるぞ」

「何だこれ? ……げっ」

 紙を拾い上げ読んだ瞬間、俺は眉を顰める。



 神埼くんへ

 すまいむは連れていっていいみたいだから、持ってって

 きっと役に立つよ

 榎田&城戸



 ……一番気になるのは、どうやって俺の懐に入れた?

 あと何で俺は今まで気づかなかった?

 というか、そのすまいむが、今敵陣に突っ込んでいきそうなんですが。

 あっ──


 止める間もなく、すまいむは高く飛び跳ね、藍色のスライムの群れへと突っ込んでいく。

 俺たちは慌てて木の後ろへと隠れる。

 そして、こっそりと様子を窺う。


 すまいむと藍色のスライムたちは、激しい戦闘を繰り広げていた。

 ……具体的に言うと、ぴょんぴょん飛び跳ねてぶつかり合っていた。

 ぴょんと飛び跳ね、相手にぶつかる。

 両方プルプルなので、跳ね返される。

 その繰り返し。可愛い戦いだ。

 ……って、早く何とかしないと、スライムたちの主が現れるかもしれない。

 そう思い、すまいむを呼び寄せようとした瞬間──


 俺たちの真上を、大きな影が飛び去った。

 その影は、スライムたちのそばにひらりと着地する。

 影は、スーツを身にまとい、背中から漆黒の翼を生やした男であった。

 まるで悪魔のよう。いや、おそらく悪魔そのものだ。

 その全身から溢れ出してくる、凄まじい魔力。

 恐ろしい強者であることを物語っている。


 男は藍色のスライムたちを制すると、すまいむをひょいと持ち上げる。

 ああ、さらばすまいむ。R.I.P……。


 と思ったら、男はすまいむを興味なさげに放り投げた。

 その後、何かを探すように、辺りを見回す。

 ……! 俺たちを探している。

 見つかったらおしまいだ……。

 俺は、悪魔が去るのを祈りながら、目を閉じて時間が過ぎるのを待つ。



 いったいどれくらいの時間が経っただろうか。

 いくら悪魔でも、もう帰っただろう。

 そう思い、俺は顔を上げる。


 黒服の悪魔が、俺と目を合わせた。

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