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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第2章 アルトの危機
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13.討伐に行きましょう

 魔王軍襲来のせいで、俺たちの初討伐クエストが延期される羽目になった。

 だが、そのごたごたも片づき、町には平和が戻ってきた。

 今こそ再挑戦の時!

「今日からこのパーティーで頑張っていこうね。それじゃ、しゅっぱーつ!」

 日比野は明るく言うと、宿の扉を開け放ち、外へ踏み出す。


 今度は、何事もなくギルドまで辿り着くことができた。

 俺たちは掲示板の前に立ち、良さそうなクエストを漁る。

「なあ、これとかいいんじゃないか?」

 清水が、1枚の紙を指差す。


『西の池に棲みついた大蛇の討伐。10000カラン』

 なかなか手頃そうじゃないか。

 ……って、大蛇ってモンスターですらないだろ。



 美しい平原の中に、その池はあった。

 池の水は透き通り、大蛇が潜んでいるとなど到底思えない。

 だが、クエストが出されていると言うことは、その存在は間違いないのだ。


「みんな、今のうちに作戦を決めておかないか?」

 若山の提案に、皆が賛同した。

 俺たちは、草原の真ん中に円を描いて座る。


「やっぱり、誰かが引きつけて、その隙に横から攻撃して倒すのが一番だろ」

 泊が提案する。

「それって誰かがオトリになるってことでしょ? 危なくない?」

「そうだよ、罠を作ったりして安全に倒したほうがいいよ」

 土岐枝や湯梨浜は不安の声を上げた。


「みんなはどう思う?」

 日比野が意見交換を促す。

「あたしは宗吾に賛成。今のうちに経験を積んどいたほうがいいしね」

 榎田が、飼いスライムを撫でながら言う。

 何でも、「スライム」+「スマイル」→「すまいむ」とかいう名前をつけたらしい。

 無駄にかわいい名前だな。


「俺も賛成。この平原に罠を作るのは難しいと思う」

「それに、こういう相手は正攻法で倒すのが一番簡単だ」

 若山と野口も、立て続けに賛成を表明する。


「神埼くんたちは?」

「俺も賛成だ」

「じゃあ私もー」

 お前はもう少し芯を持て三城!


「……まあ、みんながそう言うんなら……」

「本当に大丈夫なんだよね?」

 賛成の空気に押され、2人も渋々承諾した。


「ありがとう、2人とも。じゃあ、誰かオトリ役になってくれるって人?」

 日比野が皆に聞く。

「やっぱり、俺が適任じゃないか?」

 松久は力強く自身を指差す。

 誰も異論はない。



 松久は、湖畔に仁王立ちする。

 俺たちは茂みに隠れ、池の様子を見守る。


 ふと、水面が揺れた気がした。

 その瞬間、水が大きくせり上がる。

 その頂点から、鱗に覆われた爬虫類の頭が顔を出す。

 大蛇の出現だ。


「大蛇め、俺を食べてみろ! 食べれるもんならな!」

 松久はそう言うと、挑発するかのようにわざと背中を見せる。

 侮辱されたと感じた大蛇は、松久を食うべく身を乗り出す。

 そして、その全身を露わにした。

 8つの頭を持つ、その真の姿を。


「や、ヤマタノオロチ!?」

 松久は、予想外の強敵に飛び上がる。

 そしてその足で、一目散に逃げ出した。

 その後ろを、ヤマタノオロチが執拗に追い回す。

「は、早く魔法を! 死んじまう!」

 そうだったそうだった。


「全てを焼き尽くせ地獄の炎よ……『不知火』!」

 俺の手から、黒い火の玉が次々と飛び出す。

 その後に、何本もの魔法が続く。

 正確には、呪術とか精霊術とか色々混じっているが……。


 大量の攻撃に晒され、ヤマタノオロチは動きを止める。

 そして、こちらに首をもたげ……。

「……!?」

「に、逃げろぉ!」

 こちらに全速力で迫ってきた!


「『不知火』! 『不知火』! 『不知火』ぃ!」

 俺は一目散に逃げながら、魔法を乱打する。

 だが、オロチの堅牢な鱗には、少しの変化もない。


「ひゃあああ!?」

 三城の悲鳴。

 見ると、腰を抜かした三城に、オロチの首の一つが迫っている。

 あんのバカ野郎!

 俺は方向転換し、素早く三城の襟首を掴むと、三城を引き摺りながら逃げる。



 俺たちは、息も絶え絶えに、池から遠く離れた茂みに合流した。

「ぐ、ぐえぇぇ……」

 ずっと襟を引っ張られていたせいで首が痛いようで、三城がさっきから青い顔でもたれかかっている。

 普通に重いからやめてほしい。


「そういや、あいつの弱点は分かったのか?」

 弱点が分かれば、今からでも巻き返せるかもしれない。

「うん……お酒だって」

 日本神話じゃねえか!

「酒って、誰も持ってねえよ!」

「仕方ない、ギルドに戻って援軍を呼ぼう」

 野口の提案に反対するものはいなかった。


 急いで城壁をくぐり、ギルドを目指す。

 意外と冒険者カードが役に立った。

「池の大蛇、頭が8つあるバケモンだったぞ! 援軍を頼む!」

「あいつの弱点は酒だ、ありったけを用意してくれ!」

 ギルドにつくなり、俺たちは叫ぶ。


 ギルドの対応は、とても手慣れたものだった。

 料理屋にすぐに連絡が行き、酒の入った樽が用意された。

 ギルドに屯していた冒険者たちも、すぐに乗り気になってくれた。


 オロチは池に戻ったようで、あたりは静寂に包まれていた。

「……ほうら、お前の大好きな酒だぞ〜……」

 決死の冒険者8名が、おっかなびっくり酒樽を転がしていく。

 池のそばに着くと、樽を起こして蓋を開ける。


 たちまち、遠く離れたここからでもわかるほどのアルコール臭。

「お、おい! 化け物が戻ってくるぞ!」

 冒険者たちは、慌てて逃げ帰る。

 そのすぐ後、オロチは池から顔を出した。

 オロチは酒樽に気づくと、8つの頭を同時に樽に突っ込み、ぐびぐびと呑み始める。


 オロチは、あっという間に酔っ払った。

 動きは緩慢になり、鳴き声も心なしか眠たげになる。

 オロチは頭を地面に下ろすと、たちまち眠り始める。


「今だ、殺れーっ!」

 冒険者たちは、隙だらけのオロチに一斉に飛び掛かる。

 たちまち、オロチのすべての首が両断された。

 俺たちは、辛くも幻獣に勝利した……。


 とは言えないな。うん。

「何だよ、お前ら初っ端から黒星かよ」

 事の顚末を話すと、井川に笑われた。

「じゃあそっちはどうなんだよ」

「俺たち? そりゃあもう、ゴブリンだのコボルトだのをバッサバッサ……」

「雑魚敵ばっかじゃねえか!」

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