第7話「動き出す噂」
翌日の昼休み。
天馬が教室で弁当を食べていると、夢斗と海斗がやってきた。
「秋山、今日どうする?」
「何が?」
「飯だよ!」
「もう食ってるだろ」
「放課後だよ」
夢斗が笑う。
「昨日みたいに三人で行こうぜ」
海斗も机に手をついた。
「俺も賛成」
「お前ら、いつの間にそんな仲良くなったんだよ」
「昨日からだろ」
「一日しか経ってねぇぞ」
「十分だろ」
夢斗が即答する。
天馬は呆れながら弁当を食べ続けた。
そのとき、教室の前の扉が開いた。
別のクラスの男子が顔を出す。
「秋山っている?」
教室の何人かが天馬を見る。
天馬が顔を上げる。
「俺だけど」
「ちょっと来てくれ」
「何で?」
「話がある」
夢斗が立ち上がった。
「俺も行く」
「いや、秋山だけでいい」
「だったら行かせねぇ」
夢斗が睨む。
男子は少し困った顔をした。
「……別に喧嘩するわけじゃない」
海斗が口を挟む。
「じゃあ、ここで話せば?」
男子は黙った。
「……分かった」
少し間を置いて、男子は口を開いた。
「昨日のことが、他校にも広まってる」
天馬の眉が動く。
「昨日って?」
「佐久間たちと三人で、別の高校の奴らを倒したって話」
「もうそんな話になってんのかよ」
夢斗が呆れる。
「実際は三人で一人ずつ倒しただけだろ」
「噂なんてそんなもんだ」
海斗が笑う。
男子は天馬を見る。
「それで、向こうの学校の奴らがお前を探してる」
「俺を?」
「名前が広まってるからな」
「誰が広めたんだよ」
「知らない」
男子はそう言って教室を出ていった。
夢斗が腕を組む。
「面倒なことになってきたな」
「別に放っておけばいいだろ」
海斗が言う。
「向こうが来るなら、そのとき考えればいい」
天馬は黙って弁当を食べた。
「……まあな」
放課後。
三人は校門を出た。
「今日はどこ行く?」
夢斗が聞く。
「昨日の店」
「また?」
「俺はあそこ好きだぞ」
海斗が笑う。
天馬も少し笑った。
「じゃあ、行くか」
三人が歩き始める。
その途中。
海斗が足を止めた。
「……来たな」
「何が?」
天馬が前を見る。
道路の反対側。
昨日とは違う制服を着た男子が四人、立っていた。
そのうち一人がこちらへ歩いてくる。
「秋山天馬」
名前を呼ばれた。
天馬が立ち止まる。
「そうだけど」
「ちょっと付き合え」
夢斗が前へ出る。
「断ったら?」
「力ずくでも連れていく」
海斗が笑った。
「随分と強引だな」
男が海斗を見る。
「お前も昨日いた奴か」
「覚えてるなら話が早い」
海斗が拳を握る。
「俺も一緒に行くよ」
「海斗」
天馬が呼ぶ。
「何?」
「三人で行こう」
夢斗が驚いた。
「お前、行く気なのか?」
「向こうが俺を探してるんだろ」
天馬は男を見る。
「だったら、話くらい聞く」
男は少し考えた。
「分かった」
三人の仲間へ目を向ける。
「こいつらも連れてく」
夢斗が眉をひそめる。
「それ、話し合いじゃなくね?」
男は答えなかった。
四人が歩き出す。
天馬たちも後を追う。
しばらく歩いた先。
使われていない駐車場に入った。
そこで男が振り返る。
「ここなら話せる」
天馬が周囲を見る。
「それで、何の用だ?」
男が口を開く。
「俺たちの学校に、黒田と繋がりのある奴がいる」
夢斗が反応する。
「黒田と?」
「ああ」
「そいつが、お前らにやられた黒田の件を聞いた」
男は天馬を見る。
「それで、お前と話をつけろって言われた」
「誰に?」
男は少し黙った。
「……まだ名前は言えない」
海斗が一歩前へ出る。
「だったら帰るか?」
男の目が鋭くなる。
「話は終わってない」
その瞬間。
駐車場の奥から、別の声が響いた。
「俺が話す」
全員が振り返る。
暗がりから、一人の男子が歩いてくる。
男たちが道を開ける。
その人物を見た夢斗が小さく呟いた。
「……誰だ、あいつ」
天馬は黙って、その男を見つめた。
男は天馬の前まで歩いてくる。
「お前が秋山か」
「ああ」
「黒田を倒した奴」
「だから、倒したって言い方やめろって」
男は笑った。
「なるほどな」
その笑顔には、敵意があった。
「少し話そうぜ」
第7話 完




