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戦国アウトロー  作者: 石蒜
第1章「覇王の目覚め」
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38/80

第38話「東側の意地」

放課後。

東尾張連合の集まる雑居ビル。

東条雅人は椅子に座り、神谷亮介と相馬恭介から報告を受けていた。

「……北陵会が?」

「ああ。水原廉って奴が来た」

神谷が答える。

「東尾張連合を解散しろってよ」

相馬は壁にもたれながら腕を組んだ。

「城戸の野郎、俺たちを舐めてやがる」

東条は黙って話を聞いていた。

そこへ久我山慎吾が入ってきた。

「東条さん!」

「どうした?」

「北陵の連中が、東側の一年を連れていこうとしてます」

神谷が眉を寄せた。

「またか」

「断った奴は囲まれて、殴られたらしいです」

相馬が壁から離れた。

「……どこの奴だ?」

「東城工業の一年です」

「そいつは今どこにいる?」

「仲間が家まで送ったそうです」

東条はゆっくり立ち上がった。

「三枝は?」

「北陵会の動きを調べに行ってます」

久我山が答える。

東条は窓の外を見た。

「……俺が負けたから、こうなったのか」

神谷が首を横に振る。

「違うだろ」

「何?」

「城戸は前から東側を狙ってた。今回は口実ができただけだ」

相馬も頷く。

「俺たちが秋山に負けたのと、北陵会に従うのは別の話だ」

東条は二人を見た。

「……そうだな」

その時、久我山が一歩前へ出た。

「東条さん。俺に行かせてください」

「どこへ?」

「北陵会の連中のところです」

神谷が顔をしかめる。

「一人でか?」

「はい」

「無茶だろ」

「でも、このまま黙ってられません」

久我山は拳を握った。

「秋山に負けてから、ずっと考えてたんです」

東条は何も言わなかった。

「あいつは俺たちより強かった。でも、負けたからって全部終わりじゃないでしょう」

「……久我山」

「俺はまだ、秋山に勝つことを諦めてません」

久我山は顔を上げた。

「だからこそ、他の奴らに好き勝手されるのは嫌なんです」

東条はしばらく久我山を見つめていた。

「……分かった」

「じゃあ!」

「ただし、一人では行かせねえ」

東条は神谷と相馬を見た。

「お前らも行け」

相馬が笑う。

「最初からそのつもりだ」

神谷は頷いた。

「まずは連れていかれそうになってる奴らを助けよう」

東条は久我山の肩を軽く叩いた。

「勝手に突っ走るなよ」

「……はい!」

同じ頃。

北陵高校の教室。

城戸圭吾は机に腰掛け、水原廉から話を聞いていた。

「東側の一年、何人かはこっちに来そうです」

「そうか」

「でも、東条についていくって奴も結構います」

城戸は笑った。

「そりゃそうだろ」

片瀬翔が尋ねる。

「どうします? 強引に連れてきますか?」

「……お前ら、少し考えろよ」

城戸は机から降りた。

「無理やり引っ張ってきたって、すぐ逃げられるだけだろ」

水原が首を傾げる。

「じゃあ?」

「東条が守ってくれるって思ってるから、あいつらは残るんだ」

城戸は鞄を持ち上げた。

「だったら、その考えを変えてやればいい」

「東条を倒すってことですか?」

「そういうこと」

城戸は教室の扉へ向かった。

「東条に伝えろ。明日の放課後、北側の河川敷で待ってるってな」

「分かりました」

「あと、水原」

「はい?」

城戸は振り返った。

「一年を殴ったって話、本当か?」

水原は一瞬黙った。

「……ちょっと脅しただけです」

「余計なことすんなよ。俺が東条と話をつける」

城戸はそう言って教室を出た。

翌日。

昼休み。

秋山天馬は大地夢斗、佐久間海斗、竜胆椿と中庭にいた。

「なあ、聞いたか?」

海斗が口を開く。

「何を?」

天馬がパンをかじりながら尋ねた。

「東尾張連合と北陵会、明日じゃなくて今日の放課後に会うらしいぞ」

夢斗が顔を上げた。

「マジか!」

「北側の河川敷だって」

椿が考え込む。

「……昨日、城戸が言ってたことと関係ありそうだね」

天馬はパンを食べ終えた。

「東条は行くのかな」

「行くだろうな」

海斗が答える。

「自分の仲間が狙われてるんだろ?」

夢斗が立ち上がった。

「だったら俺たちも行こうぜ!」

天馬は夢斗を見上げた。

「何でだよ」

「気になるじゃん!」

「俺たちには関係ねえだろ」

「でもよ、東条が負けたせいで北陵会が動いたんだろ?」

天馬は黙った。

椿が静かに口を開く。

「夢斗の言うことも分かるけど、勝手に割り込むのは違うと思う」

「じゃあ、どうする?」

海斗が尋ねる。

「桐生先輩に聞いてみよう」

その日の放課後。

五人は学校近くの公園に集まっていた。

話を聞いた桐生拓真は、しばらく考え込んでいた。

「……河川敷か」

「先輩、どうします?」

天馬が尋ねる。

「俺は行く」

「え?」

「城戸とは昔からの付き合いだ。あいつが何を考えてるのか、直接確かめたい」

夢斗が笑った。

「じゃあ俺たちも!」

桐生は首を横に振った。

「喧嘩しに行くんじゃねえぞ」

「分かってますって!」

「お前が一番分かってなさそうだな」

海斗が笑う。

天馬は桐生を見た。

「……俺も行きます」

「天馬?」

「東条がどうするのか、見ておきたいんです」

桐生は少し考えた後、頷いた。

「分かった。ただし、勝手に手を出すなよ」

「はい」

椿が天馬の横に並んだ。

「僕も行くよ」

「おう」

夢斗と海斗も頷いた。

一方、北側の河川敷。

東条雅人は、神谷亮介、相馬恭介、久我山慎吾、三枝圭介を連れて歩いていた。

向こうには、すでに北陵会の男たちが集まっている。

その中央に、城戸圭吾が立っていた。

「よう、東条」

城戸が片手を上げる。

「久しぶりだな」

東条は足を止めた。

「……城戸」

「随分と話題になってるじゃねえか」

「何の用だ?」

「単純な話だよ」

城戸は東条を見つめた。

「東側を俺たちに任せろ」

久我山が前へ出ようとする。

しかし、東条が腕を伸ばして止めた。

「……断る」

城戸が笑う。

「即答かよ」

「俺が秋山に負けたのは事実だ」

東条は一歩前へ出た。

「だが、それで俺の仲間までお前に従う理由にはならねえ」

城戸の表情が変わった。

「だったら、力で決めるか?」

「望むところだ」

東条は城戸から目を逸らさなかった。

少し離れた土手の上。

天馬たち五人が河川敷へ到着した。

夢斗が下を覗き込む。

「……うわ、結構集まってんな」

海斗が人数を数える。

「北陵会の方が多くねえか?」

椿は東条と城戸を見つめた。

「まだ話してるみたいだね」

桐生が表情を引き締めた。

「……間に合ったか」

天馬は河川敷を見下ろした。

東条の前に立つ城戸。

その後ろには、水原と片瀬をはじめとした北陵会の面々。

そして、東条の背後には久我山たちがいた。

「……東条」

天馬が小さく呟いた。

自分が倒した男が、今度は仲間を守るために立っている。

天馬はその姿から目を離せなかった。

第38話 完

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