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戦国アウトロー  作者: 石蒜
第1章「覇王の目覚め」
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第37話「北からの挑戦」

昼休み

秋山天馬は、大地夢斗と一緒に購買へ向かっていた。

「天馬! 急げ!」

「まだ昼休み始まったばっかだろ!」

「焼きそばパンが売り切れる!」

「お前、朝もパン食ってなかった?」

「朝は朝! 昼は昼!」

夢斗は廊下を早足で進んでいく。

天馬が呆れながら追いかけていると、階段の踊り場で竜胆椿と出会った。

「あれ、二人とも」

「おう、椿!」

「そんなに急いでどうしたの?」

「焼きそばパン!」

「……なるほどね」

椿は笑った後、少し表情を変えた。

「そういえば、桐生先輩の話、聞いた?」

天馬が足を止める。

「何かあったの?」

「昨日、北陵高校の人たちが会いに来たらしいよ」

「北陵って、あの城戸って奴がいる学校か?」

「うん」

夢斗が振り返った。

「何だよ、また喧嘩か?」

「まだ分からない。でも、桐生先輩と城戸圭吾は以前から知り合いみたい」

天馬は腕を組んだ。

「……先輩に聞いてみるか」

「そうだね」

「じゃあ、購買行ってからな!」

夢斗が叫ぶ。

「お前、今その話してんだろ!」

「焼きそばパンは待ってくれねえんだよ!」

その日の午後。

東側の商店街。

東尾張連合の神谷亮介と相馬恭介は、数人の仲間と歩いていた。

「……最近、北陵の連中が増えたな」

神谷が周囲を見渡す。

相馬は頷いた。

「東条が負けたって聞いて、調子に乗ってんだろ」

「面倒なことになりそうだ」

二人が路地へ差しかかった時だった。

「おい」

背後から声がした。

振り返ると、北陵高校の制服を着た男子生徒が三人立っていた。

先頭の男が笑う。

「東尾張連合の神谷と相馬だよな?」

神谷は足を止めた。

「……誰だ、お前」

「北陵会の水原廉」

水原は隣の男を指した。

「こっちは片瀬翔」

片瀬が軽く手を上げる。

「よろしく」

相馬は二人を睨んだ。

「何の用だ?」

「単刀直入に言うぜ」

水原は笑みを浮かべた。

「東尾張連合、もう解散したらどうだ?」

神谷の表情が変わる。

「……何?」

「頭の東条が負けたんだろ? だったら、いつまでも東側を仕切ってる必要ねえじゃん」

相馬が一歩前へ出た。

「お前らに関係ねえだろ」

「関係あるんだよ」

水原は相馬を見上げた。

「城戸さんが、東側にも興味持ってるからな」

神谷は冷静に尋ねた。

「城戸は何がしたい?」

「東側の連中にも北陵会に入ってもらう。それだけだ」

「断ったら?」

片瀬が笑った。

「それは断った時に考えようぜ」

相馬が拳を握る。

「……随分舐めた口利くじゃねえか」

神谷は片手で相馬を制した。

「待て」

「何だよ」

「こんなところで始める必要はない」

神谷は水原を見た。

「東条に直接話せ。俺たちに言っても意味ねえよ」

水原は肩をすくめた。

「分かった。そう伝えとく」

三人はその場を離れた。

相馬は舌打ちした。

「……あいつら」

「東条に報告しよう」

神谷が答える。

「北陵会は、本気で東側を取りに来てる」

一方、その日の放課後。

天馬、夢斗、佐久間海斗、椿の四人は、桐生拓真と駅前で合流していた。

「桐生先輩!」

天馬が声をかける。

「おう」

「城戸って奴、先輩の知り合いなんですか?」

桐生は少し驚いた顔をした。

「……もう聞いたのか」

「椿から」

「そうか」

桐生は近くのベンチに腰を下ろした。

「昔、北側で揉めたことがあってな」

夢斗が身を乗り出す。

「喧嘩したんですか?」

「ああ」

「どっちが勝ったんです?」

桐生は笑った。

「決着ついてねえよ」

「え?」

「途中で止められたんだ」

海斗が尋ねる。

「城戸って、そんなに強いんですか?」

「強いぞ。喧嘩も上手いし、人を集めるのも上手い」

「東条みたいな感じですか?」

天馬の質問に、桐生は首を横に振った。

「いや、あいつとは違う」

「どう違うんです?」

「東条は自分の力で相手を従わせようとする。城戸は相手の弱いところを見つけて、そこを利用する」

椿が考え込む。

「……厄介ですね」

「ああ」

その時だった。

「桐生拓真」

聞き慣れない声がした。

五人が振り返る。

駅前の歩道に、三人の男子生徒が立っていた。

その中央にいる男が、ゆっくり近づいてくる。

桐生の表情が変わった。

「……城戸」

城戸圭吾は笑った。

「久しぶりだな」

「お前、何しに来た?」

「会いたいって伝えただろ?」

「用があるなら電話でもよかっただろ」

「冷てえな。昔の知り合いじゃねえか」

城戸は桐生の隣にいる四人へ目を向けた。

「……で?」

その視線が天馬で止まる。

「お前が秋山天馬?」

天馬は城戸を見返した。

「そうだけど」

「へえ」

城戸は天馬の顔をじっと見た。

「東条を倒したって聞いたぜ」

「……それが何?」

「いや、ちょっと興味あってさ」

夢斗が一歩前へ出る。

「何だよ、喧嘩売りに来たのか?」

城戸は笑った。

「お前、面白えな」

「何がだよ!」

桐生が立ち上がった。

「城戸。天馬たちは関係ねえだろ」

「関係あるさ」

城戸は桐生を見た。

「東条を倒した連中なんだろ?」

「だったら?」

「そいつらが東側を仕切るつもりなのか、聞きたくてな」

天馬は眉を寄せた。

「……そんなつもりねえよ」

「本当に?」

「ああ」

「じゃあ、東側がどうなっても構わねえってことか」

天馬は黙った。

城戸は続ける。

「東条が負けた今、東側は誰がまとめるんだろうな」

「それは東条たちが決めることだろ」

「なるほど」

城戸は笑みを深めた。

「だったら、俺たちが東側をもらっても文句ねえよな?」

天馬は城戸を見つめた。

「……東側の奴らが嫌がっててもか?」

城戸の笑みが少し薄れた。

「何?」

「嫌がってる奴らを無理やり従わせるなら、東条がやってたことと同じじゃねえか」

夢斗が頷く。

「そうだそうだ!」

城戸はしばらく天馬を見ていた。

そして、桐生へ視線を戻す。

「……お前、面白い後輩持ったな」

桐生は答えなかった。

城戸は天馬へ一歩近づく。

「秋山」

「何だよ」

「俺と一回、勝負してみねえか?」

海斗が驚いた顔をする。

「おい、いきなりかよ!」

椿も城戸を見つめた。

「ここは駅前ですよ」

「分かってるよ。今すぐとは言ってねえ」

城戸は天馬から目を離さない。

「東条を倒した実力、俺にも見せてくれよ」

天馬は少し考えた。

そして、首を横に振った。

「断る」

城戸の眉が動いた。

「……へえ?」

「理由もねえのに喧嘩する気はねえよ」

城戸は一瞬黙った後、笑い出した。

「ははっ! そうか!」

そして、桐生に向かって言った。

「昔のお前に少し似てるな」

「……余計なお世話だ」

「まあいい」

城戸は背を向けた。

「今日は顔を見に来ただけだ」

連れてきた二人も歩き出す。

しかし、数歩進んだところで城戸が振り返った。

「桐生」

「何だ?」

「東側の件には口を出すなよ」

桐生は目を細めた。

「……どういう意味だ?」

「そのまんまだ」

城戸は笑った。

「次に会う時は、昔みたいに邪魔すんなってこと」

そう言い残し、三人は駅前から去っていった。

しばらく沈黙が続いた。

夢斗が口を開く。

「……何なんだよ、あいつ」

海斗も頷いた。

「感じ悪いな」

天馬は城戸が去った方向を見つめていた。

椿が声をかける。

「天馬?」

「……あいつ、東側で何かするつもりだな」

桐生が頷いた。

「ああ。間違いねえ」

「だったら、東条たちも黙ってないですよね」

「そうだろうな」

天馬は拳を握った。

「……せっかく喧嘩終わったのにな」

北陵会と東尾張連合。

二つの勢力の対立が、いよいよ表面化しようとしていた。

第37話 完

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