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戦国アウトロー  作者: 石蒜
第1章「覇王の目覚め」
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第33話「いつもの教室」

「……痛ってえ」

秋山天馬は自宅の洗面台で、自分の顔を見つめていた。

頬には青あざ。

口元には小さな傷。

右腕を上げると、肩にも痛みが走る。

「……昨日、殴られすぎたな」

制服に着替え、鞄を肩に掛ける。

玄関で靴を履いていると、スマートフォンが震えた。

大地夢斗からのメッセージだった。

『今日、学校来る?』

天馬は短く返信する。

『行くけど』

すぐに返事が届いた。

『俺も。顔やばいから笑うなよ』

「……お前もかよ」

天馬は小さく笑い、家を出た。

学校へ向かう途中、いつものコンビニの前に夢斗が立っていた。

「おーい、天馬!」

「おう」

夢斗が振り返る。

その顔を見た天馬は足を止めた。

「……お前、顔どうした?」

「昨日の喧嘩に決まってんだろ!」

「いや、分かってるけどさ」

夢斗の左頬には大きなあざがあった。

天馬は思わず笑った。

「お前、すげえ顔!」

「笑うなって言っただろ!」

「悪い悪い!」

夢斗は天馬の顔を指さした。

「お前だって人のこと言えねえからな!」

「俺はまだマシだろ」

「どこがだよ!」

二人は言い合いながら校門をくぐった。

教室に入ると、何人かの生徒が振り返った。

「おはよー」

天馬が挨拶する。

すると、近くにいた男子生徒が目を丸くした。

「秋山、お前どうしたんだよ!」

「ん?」

「顔! 顔!」

夢斗が横から口を挟む。

「こいつ、昨日派手に転んだんだよ」

「お前もだろ」

「俺は階段で転んだ」

「じゃあ俺は?」

「……坂道?」

「適当すぎんだろ!」

周囲から笑い声が上がった。

二人が席につくと、別の男子生徒が近づいてきた。

「なあ、昨日何かあった?」

「何で?」

「東側で喧嘩があったって聞いたんだけど」

天馬と夢斗は顔を見合わせた。

「……へえ」

夢斗がわざとらしく答える。

「知らねえなあ」

「お前ら、その顔で言われても説得力ねえぞ」

「偶然だって!」

天馬が笑う。

その時、教室の扉が開いた。

「おーい、席つけ!」

担任の教師が入ってくる。

生徒たちは慌てて自分の席へ戻った。

教師は出席簿を開き、教室を見渡す。

そして、天馬の顔で視線を止めた。

「……秋山」

「はい」

「その顔、どうした?」

「転びました」

「大地」

「はい!」

「お前もか?」

「……はい」

教師はしばらく二人を見つめた。

「同じ場所で?」

「……」

「……」

教室に笑いが広がる。

教師はため息をついた。

「とりあえず、二人とも後で職員室に来い」

「ええっ!?」

夢斗が声を上げた。

「何で俺まで!」

「お前の方が怪しいからだ」

天馬は机に顔を伏せて笑った。

「……最悪だな」

夢斗が小声で呟く。

「お前が笑うからだろ!」

午前の授業が終わり、昼休み。

天馬と夢斗は購買で買ったパンを持って中庭へ向かった。

そこには佐久間海斗が待っていた。

「おっ、来た来た」

「海斗!」

夢斗が手を上げる。

海斗は二人の顔を見るなり笑った。

「お前ら、昨日よりひでえな」

「お前もだろ!」

「俺はそこまでじゃねえよ」

海斗の口元にも、しっかり傷が残っていた。

三人はベンチに腰を下ろした。

「そういや、桐生先輩は?」

天馬が尋ねる。

「朝見かけたけど、普通にしてたぞ」

「マジかよ」

夢斗が驚く。

「あんだけ相馬と殴り合ってたのに?」

「さすが三年だな」

海斗が笑った。

「学年関係あるか?」

天馬が突っ込む。

三人がパンを食べていると、背後から声がした。

「楽しそうだね」

振り返ると、竜胆椿が立っていた。

「おう、椿!」

天馬が手を上げる。

椿は三人の顔を順番に見た。

「……みんな、すごい顔だね」

「お前も頬にあざあるだろ!」

夢斗が指さす。

「僕は君たちほどじゃないよ」

「言いやがったな!」

椿は笑いながら隣に腰を下ろした。

「それで、東側の話は?」

海斗が声を落とす。

「もう噂になってる」

「早いな」

「東条が負けたって話、結構広まってるらしい」

天馬はパンをかじった。

「別に広めなくていいのにな」

夢斗が笑う。

「お前、東尾張連合の頭を倒したんだぞ?」

「だから?」

「だからって……もっと喜べよ!」

「昨日は帰ってすぐ寝たし、今は身体痛えし」

天馬は肩を回そうとして顔をしかめた。

「正直、それどころじゃねえ」

椿が小さく笑った。

「天馬らしいね」

その時、夢斗が立ち上がった。

「よし! 今日の放課後、みんなで飯行こうぜ!」

海斗が顔を上げる。

「また?」

「昨日は喧嘩でまともに食ってねえだろ!」

「確かに」

天馬も頷く。

「何食う?」

「焼肉!」

夢斗が即答した。

「お前、金あんの?」

海斗が尋ねる。

夢斗は財布を取り出した。

中を確認する。

「……千二百円」

「無理だろ!」

天馬と海斗が同時に笑った。

椿も肩を揺らす。

「牛丼なら行けるんじゃない?」

「……じゃあ牛丼で!」

夢斗がすぐに意見を変えた。

「切り替え早えな!」

四人の笑い声が中庭に広がった。

昨日までの激しい喧嘩が嘘のような、いつもの昼休み。

天馬は残ったパンを口に運んだ。

「……やっぱ、こういう時間が一番いいな」

夢斗が振り返る。

「何か言った?」

「別に」

「何だよ、気になるだろ!」

「早くパン食えよ。昼休み終わるぞ」

「あっ、やべ!」

夢斗が慌てて袋を開ける。

天馬はその様子を見て、また笑った。

第33話 完

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