↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国アウトロー  作者: 石蒜
第1章「覇王の目覚め」
PR
30/84

第30話「東条雅人の実力」

高架下に、冷たい風が吹き抜けた。

秋山天馬と東条雅人。

二人は数歩の距離を空けて向かい合っていた。

「先に来ていいぜ」

東条が笑った。

天馬は眉を寄せる。

「随分余裕だな」

「お前、もう何人も倒してるんだろ? 少しくらい有利にしてやるよ」

「……後悔すんなよ」

天馬が地面を蹴った。

右拳を東条の顔面へ振る。

しかし、東条はわずかに首を傾けただけだった。

拳が頬の横を通り過ぎる。

「遅いな」

東条の拳が天馬の腹に入った。

「っ……!」

息が詰まる。

天馬が反射的に身体を丸めた瞬間、東条の左拳が頬を捉えた。

天馬は横へよろめいた。

「天馬!」

夢斗が叫ぶ。

天馬はすぐに体勢を立て直した。

「……大丈夫だ!」

東条は追撃せず、その場で待っていた。

「どうした? もう終わりか?」

「んなわけねえだろ!」

天馬が再び踏み込む。

今度は顔面を狙うと見せかけ、腹へ拳を放った。

だが、東条は肘を下げて受け止めた。

「考えたな」

「まだだ!」

天馬は左拳を振る。

東条は後ろへ半歩下がった。

さらに右拳。

今度は東条の頬をかすめた。

「おっ」

東条が笑う。

「少しはやるじゃねえか」

「上から目線が気に入らねえんだよ!」

天馬が距離を詰める。

しかし、その踏み込みを待っていたかのように、東条の拳が腹へ突き刺さった。

天馬の足が止まる。

続けて顎を狙う一撃。

天馬は辛うじて腕で防いだが、衝撃で後退した。

「くそ……!」

東条は構えを崩さない。

「お前、喧嘩の仕方が雑だな」

「あ?」

「勢いはある。拳も悪くない。でも、攻めることしか考えてねえ」

「……うるせえ」

「相手が下がったら追いかける。隙が見えたらすぐ殴る」

東条が一歩近づく。

「だから動きが読めるんだよ」

天馬は奥歯を噛みしめた。

少し離れた場所で、椿が二人を見つめていた。

「……強い」

海斗が隣を見る。

「東条が?」

「ああ。天馬の攻撃をほとんど見切ってる」

「じゃあ、どうすんだよ」

「分からない。でも……」

椿は東条の足元に目を向けた。

「ただ反応が速いだけじゃない」

桐生も険しい表情をしていた。

「東条の野郎、秋山が動く前から位置を変えてやがる」

夢斗が拳を握る。

「だったら俺たちも!」

「やめとけ」

桐生が制した。

「秋山が一対一でやるって決めたんだ」

「でも!」

「危なくなったら止める。今は見てろ」

夢斗は悔しそうに唇を噛んだ。

その頃、天馬は三度目の攻撃を仕掛けていた。

「これならどうだ!」

右拳を振る。

東条はかわす。

だが、天馬はそのまま身体を回し、左拳を続けた。

東条の腕に拳が当たる。

「……なるほど」

東条が初めて表情を引き締めた。

天馬はさらに前へ出る。

しかし、東条は横へ回り込み、天馬の肩を押した。

踏み込んだ勢いを利用され、天馬は体勢を崩す。

「しまっ――」

東条の拳が顔面を捉えた。

天馬は地面に倒れた。

「天馬!」

夢斗が駆け出そうとする。

「待て!」

桐生が腕を掴んだ。

天馬は片手を地面につき、ゆっくり顔を上げた。

頬が熱い。

口の中には血の味が広がっていた。

「……痛ってえな」

東条が見下ろす。

「まだ立つのか?」

「当たり前だろ」

天馬は膝を立てた。

「お前、俺が倒れるまでやるつもりなんだろ?」

「ああ」

「だったら……」

天馬は立ち上がった。

「まだ終わってねえよ」

東条は目を細めた。

「本当に面白え奴だな」

「それ、さっきも聞いた」

「何度でも言ってやるよ」

東条が構え直す。

「ただし、次はもっと痛えぞ」

天馬も拳を握った。

だが、先ほどまでとは違い、すぐには踏み込まなかった。

東条の肩。

腰。

足の位置。

一つずつ目を向ける。

(……こいつ、俺が動く前に分かってんのか?)

東条が不思議そうに笑った。

「どうした? 来ねえのか?」

「……今、考えてんだよ」

「へえ」

「どうやったら、お前を殴れるかってな」

東条の笑みが深くなった。

「だったら考えてみろよ」

天馬は息を整えた。

目の前の男は強い。

これまで戦った誰よりも、拳が届かない。

それでも、天馬は視線を逸らさなかった。

第30話 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。