↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国アウトロー  作者: 石蒜
第1章「覇王の目覚め」
PR
25/84

第25話「竜胆椿」

「おらぁ!」

男の拳が椿の顔面へ迫る。

椿は上体を反らしてかわした。

すぐに二発目。

今度は腕で受ける。

「っ……!」

衝撃が腕に響いた。

「どうした! さっきから避けてばっかじゃねえか!」

男が笑う。

椿は口元の血を拭った。

「……お前、名前は?」

「あ?」

「名前だよ」

「今さら聞くのか?」

男は拳を構え直した。

「神谷亮介だ」

「神谷ね」

「覚えとけよ!」

神谷が踏み込む。

右の拳。

椿は左へ動く。

しかし神谷はすぐに身体を回した。

「読んでんだよ!」

左拳が椿の頬を捉える。

「ぐっ!」

椿がよろめいた。

神谷は止まらない。

「もう一発!」

腹へ拳。

「っ……!」

椿が後退する。

「どうした、竜胆!」

神谷が笑った。

「秋山の仲間って聞いたから期待してたのによ!」

椿は頬を押さえた。

「……別に、あいつの仲間だから強いわけじゃないだろ」

「だったら見せてみろよ!」

神谷が再び突っ込む。

椿は構えた。

右。

左。

右。

三発の拳をかわす。

神谷の足が前へ出た。

椿はその動きを見逃さなかった。

「……またか」

「何がだ!」

神谷が拳を振る。

椿は横へずれ、腹へ拳を返した。

「ぐっ!」

続けて顔面を狙う。

しかし神谷も反応した。

腕で受け止める。

「甘い!」

神谷の拳が椿の肩を捉えた。

「っ!」

椿は後ろへ下がった。

簡単には倒せない。

それでも、少しずつ分かってきた。

神谷は強い拳を打つ直前、必ず右足へ体重を乗せる。

そして左拳を出す時だけ、肩がわずかに上がる。

椿は静かに息を吐いた。

「……なるほど」

神谷が眉を寄せる。

「何がなるほどだよ」

「いや、ちょっと分かっただけ」

「ふざけんな!」

神谷が走り出す。

右足に体重が乗る。

椿は動いた。

拳が届くより早く、神谷の右側へ回り込む。

「なっ!?」

脇腹へ拳。

「ぐっ!」

神谷が振り返る。

左肩が上がった。

椿は身体を沈める。

頭上を拳が通り過ぎた。

「また避け――」

「今度はこっち」

椿の拳が神谷の顎を捉えた。

「がっ!」

神谷が数歩下がる。

初めて、その表情から余裕が消えた。

「……てめえ」

椿も拳を構え直す。

「お前、強いよ」

「だったら!」

「でも、同じ動きが多い」

神谷が歯を食いしばった。

「調子に乗るなよ!」

勢いよく踏み込む。

だが今度は右拳ではなかった。

低い姿勢から、椿の腹を狙う。

「!」

椿の反応が遅れた。

ドゴッ!

「ぐっ……!」

拳が腹へ突き刺さる。

神谷が笑った。

「同じ動きばっかだと思ったか!」

さらに椿の胸元を掴む。

「これで終わりだ!」

顔面へ拳が迫る。

椿は咄嗟に神谷の手首を掴んだ。

「っ……!」

拳が頬のすぐ横で止まる。

神谷が力を込める。

「離せ!」

「……嫌だね」

椿は神谷の腕を外側へ押し、身体を捻った。

二人の距離が離れる。

椿は腹を押さえながら息を整えた。

神谷も肩で息をしている。

「……やるじゃねえか」

椿が小さく笑う。

「そっちこそ」

少し離れた場所では、天馬も二人の男と戦い続けていた。

「椿!」

天馬の声が響く。

椿は一瞬だけ振り返った。

「こっちは大丈夫!」

「分かった!」

天馬はすぐに自分の相手へ向き直る。

神谷が拳を握った。

「随分余裕だな」

「余裕なんかないよ」

椿はゆっくり構える。

「だから、ちゃんと集中する」

神谷も腰を落とした。

二人の視線がぶつかる。

次の一撃を先に当てるのは、どちらか。

神谷が右足を踏み出した。

椿も同時に動く。

拳と拳が、再び交差した。

第25話 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。