第24話「五人の戦い」
「おらぁ!」
夢斗の顔面へ拳が飛ぶ。
「っぶね!」
身体を反らしてかわす。
だが、背後からもう一人が迫った。
「後ろだ!」
海斗の声。
「分かってる!」
振り返りながら腕で拳を受ける。
「いってぇ……!」
二人に挟まれていた。
夢斗は歯を食いしばる。
「二人まとめて来いよ!」
少し離れた場所では、海斗も二人を相手にしていた。
「こっちも楽じゃねえな……」
一人が正面。
もう一人が右。
海斗は右へ動く。
「逃がすか!」
正面の男が追う。
その瞬間、海斗は急停止した。
「逃げてねえよ」
振り返りざまに拳を叩き込む。
「ぐっ!」
男がよろめく。
しかし――
「海斗!」
夢斗の声。
「!」
もう一人の蹴りが脇腹へ入った。
「がっ……!」
海斗が地面へ転がる。
「くそ……!」
立ち上がろうとする。
男たちは待たない。
その頃。
桐生と相馬は正面から殴り合っていた。
「おらぁ!」
桐生の拳。
相馬は腕で受ける。
そのまま桐生の腹へ拳を返した。
「ぐっ!」
桐生が下がる。
相馬が追う。
「こんなもんか、桐生!」
「言ってろ!」
桐生が踏み込んだ。
顔面へ一発。
「っ!」
相馬の顔が横を向く。
だが倒れない。
ゆっくり桐生を見る。
「……重いな」
「お前もな」
二人が再び構えた。
その近く。
椿も相手の男と戦い続けていた。
拳が飛ぶ。
椿は避ける。
二発目。
避ける。
三発目。
腕で受ける。
「避けてばっかじゃ勝てねえぞ!」
「そう?」
男が大きく踏み込んだ。
椿の視線が足元へ落ちる。
また同じ踏み込み。
「そこだ」
椿が横へずれた。
男の拳が空を切る。
その脇腹へ一発。
「ぐっ!」
さらに顎へ拳。
「がっ……!」
男がよろめく。
だが踏みとどまった。
椿も息を切らしている。
「……しぶといな」
そして天馬。
「秋山!」
二人が同時に迫る。
一人目の拳を受け流す。
二人目が腹を狙う。
天馬は反射的に身体を捻った。
拳が脇を抜ける。
「また……」
自分でも分からない。
考える前に身体が動く。
だが――
「捕まえた!」
背後から腕を掴まれた。
「っ!」
正面の男が拳を振り上げる。
避けられない。
「天馬!」
夢斗が叫ぶ。
ドゴッ!
拳が天馬の腹へ入った。
「がっ……!」
続けて顔面。
天馬が地面へ倒れる。
「天馬!」
夢斗が向かおうとする。
しかし二人が道を塞ぐ。
「どこ行くんだよ」
「どけ!」
夢斗が拳を振る。
海斗も立ち上がろうとするが、目の前には二人。
椿も。
桐生も。
全員が別々の相手に捕まっている。
助けに行けない。
天馬は地面に手をついた。
「……くそ」
最初に天馬を勧誘した男が、少し離れた場所から見ている。
「仲間がいても、助けられなきゃ意味がない」
天馬が顔を上げる。
男と目が合った。
「お前は一人で何ができる?」
天馬はゆっくり立ち上がった。
口元の血を拭う。
「一人じゃねえよ」
男の眉が動く。
天馬は周囲を見る。
夢斗。
海斗。
椿。
桐生。
全員が戦っている。
誰一人、逃げていない。
「みんな戦ってんだろ」
天馬は再び拳を構えた。
「だったら俺も、自分の相手を倒す」
目の前の二人が構える。
「来いよ」
天馬が一歩前へ出た。
五人の戦いは、まだ終わらない。
第24話 完




