第23話「東側との再戦」
「やれ!」
男の声と同時に、十人を超える男たちが一斉に走り出した。
「来るぞ!」
桐生が先頭へ出る。
一人目の拳をかわし、腹へ強烈な一発。
「ぐっ!」
続けて横から来た男の顔面へ拳を叩き込む。
「おらぁ!」
男が吹き飛んだ。
夢斗が叫ぶ。
「やっぱ桐生先輩、強え!」
「見てる場合か!」
海斗の声。
「うおっ!?」
夢斗の前にも二人が迫る。
「二人かよ!」
一発を腕で受け、そのまま一人へ蹴りを入れる。
海斗も別の二人とぶつかった。
「そっち任せた!」
「簡単に言うな!」
高架下のあちこちで殴り合いが始まる。
天馬の前には三人。
「秋山!」
右から拳。
天馬は身体を沈める。
かわした。
すぐ左から二人目。
腕で防ぐ。
「っ……!」
重い。
その隙に三人目が腹へ蹴りを入れた。
「ぐっ!」
天馬が後ろへ下がる。
「天馬!」
夢斗が振り返る。
「こっち見るな!」
天馬は腹を押さえながら顔を上げた。
三人が再び迫る。
一人。
右。
もう一人が後ろ。
天馬の目つきが変わる。
「……そこ」
最初の拳をかわす。
身体を回す。
後ろから来た男と正面の男がぶつかった。
「うわっ!」
天馬は残った一人の懐へ入り、腹へ拳を叩き込んだ。
「がっ……!」
男が膝をつく。
少し離れた場所では、椿が一人と向かい合っていた。
「竜胆椿」
「また俺の名前か」
「お前も秋山と同じくらい気になってた」
男が踏み込む。
速い拳。
椿は首を傾けてかわした。
二発目も避ける。
三発目。
今度は腕で受けた。
「……速いな」
「余裕ぶってんなよ!」
男がさらに踏み込む。
椿は相手の足元を見る。
一歩下がった。
「何だよ!」
男が追う。
その瞬間。
椿が踏み込んだ。
「――今だ」
拳が腹へ入る。
「ぐっ!」
男がよろめく。
だが倒れない。
逆に椿の肩を掴み、顔面へ拳を入れた。
「っ!」
椿が後退する。
口元を拭った。
「……結構痛いな」
男が笑う。
「俺を今までの奴らと一緒にすんな」
椿の目が細くなる。
「分かった」
一方、桐生の前にも新たな男が現れていた。
それまで後ろで戦いを見ていた男だ。
周囲とは明らかに雰囲気が違う。
「桐生拓真」
桐生が拳を構える。
「今度は俺か」
「前から一度やってみたかった」
「名前は?」
男は首を鳴らした。
「相馬恭介」
「相馬か」
桐生が笑う。
「来いよ」
二人が同時に踏み込む。
拳と拳がぶつかった。
「っ!」
桐生の身体がわずかに下がる。
天馬がそれを見る。
「桐生先輩が……」
初めてだった。
正面から桐生の拳を受けて、一歩も退かなかった相手。
その時。
「よそ見すんな!」
「!」
天馬の頬に拳が入った。
身体が高架の柱へぶつかる。
「ぐっ……!」
最初に天馬を勧誘した男は、戦いの中心でその様子を静かに見ていた。
まだ自分では戦っていない。
天馬は口元の血を拭う。
夢斗も。
海斗も。
椿も。
桐生も。
それぞれの前に相手がいる。
今までの喧嘩とは違う。
簡単には終わらない。
天馬は再び拳を握った。
「……やってやるよ」
東側との本当の戦いが、始まった。
第23話 完




