第22話「東へ」
放課後。
天馬、夢斗、海斗、椿は校門を出た。
少し離れた場所で桐生が待っている。
「全員来たな」
「どこまで行くんですか?」
「ここから二駅先」
夢斗が顔をしかめる。
「遠っ」
「歩くとは言ってねえよ」
「ですよね」
五人は駅へ向かった。
電車を降りると、天馬たちの普段の行動範囲とは雰囲気が変わる。
駅前には制服姿の高校生が多かった。
桐生が先頭を歩く。
「こっちだ」
「先輩、何で場所知ってるんですか?」
海斗が聞く。
「前に一度来たことがある」
「喧嘩?」
夢斗が聞く。
「まあな」
「やっぱり」
しばらく歩き、商店街を抜ける。
その先に小さな高架下があった。
数人の男子生徒がたむろしている。
天馬たちを見ると、一斉に立ち上がった。
「……桐生?」
「本当に来やがった」
桐生が足を止める。
「話をしに来た」
一人が鼻で笑った。
「五人で?」
「お前らが何人いるか知らねえからな」
天馬が周囲を見る。
見えているだけで六人。
だが、奥にも人影がある。
椿が小さく呟く。
「結構いるな」
「帰る?」
夢斗が聞く。
「ここまで来て?」
「聞いただけ」
奥から男が一人歩いてきた。
天馬はその顔に見覚えがあった。
「お前……」
昨日、駅前で天馬を勧誘した男だった。
「来たか、秋山」
「名前教える気になった?」
男が少し笑う。
「まだだ」
「面倒くせえな」
周囲の男たちが天馬を睨む。
桐生が前へ出た。
「最近、東側で暴れすぎだ」
「お前には関係ない」
「俺の知り合いまでやられてる」
男の笑みが消える。
「だったら何だ?」
「やめろ」
短い言葉だった。
周囲がざわつく。
男は桐生を見てから、天馬へ視線を移す。
「秋山。お前もそれを言いに来たのか?」
「俺の周りに手を出すな」
「断ったら?」
「……分かってるだろ」
夢斗が小さく笑う。
「話し合い、終わるの早そう」
「まだ終わってない」
椿が答える。
その時だった。
高架の奥から、さらに男たちが出てくる。
一人。
二人。
三人。
海斗が数えるのをやめる。
「……多くない?」
十人を超えていた。
桐生が天馬の前へ腕を出す。
「動くな」
「でも」
「まだ向こうは殴ってきてない」
男がゆっくり前へ出る。
「ここまで来た度胸は認める」
天馬と向き合う。
「もう一度だけ聞く」
「何?」
「俺たちと組め」
「昨日断った」
「今日は条件が違う」
「どう違う?」
男は後ろにいる仲間たちを見る。
「お前一人じゃない」
視線が夢斗、海斗、椿、桐生へ移る。
「全員まとめて来い」
夢斗が目を丸くする。
「俺らも?」
「秋山の周りにいるなら同じだ」
椿が一歩前へ出た。
「勝手に一括りにするなよ」
男の目が椿へ向く。
「竜胆椿か」
椿の表情が変わった。
「……俺の名前まで知ってんのか」
「調べたからな」
一瞬、空気が張り詰める。
天馬が男を見る。
「答えは変わらない」
「そうか」
男が右手を上げた。
周囲の男たちが動く。
桐生も構える。
「秋山」
「はい」
「簡単には終わらねえぞ」
天馬は拳を握った。
「分かってます」
男の右手が下がった。
「やれ」
十人を超える男たちが、一斉に走り出した。
第22話 完




