第20話「接触」
翌日の放課後。
椿は一人で校舎を出た。
校門を抜けたところで、二人の男が道を塞ぐ。
「竜胆椿だな?」
椿が足を止める。
「誰?」
「秋山天馬と一緒にいるらしいな」
「それが?」
男が笑う。
「本人より先に、お前に聞きたいことがある」
「何を?」
「秋山は何人集めてる?」
椿の表情が変わる。
「集めてる?」
「とぼけんな。大地夢斗、佐久間海斗。それに桐生拓真まで一緒にいるって聞いた」
「勝手に集まってるだけだろ」
「同じことだ」
男が椿へ近づく。
「秋山に伝えろ」
「自分で言えば?」
「……何?」
「探してるんだろ。だったら直接行けよ」
男が椿の胸ぐらを掴もうとする。
椿はその手を払い落とした。
「触んな」
「てめえ……!」
男が拳を振り上げる。
もう一人が腕を掴んだ。
「やめろ。今日は違う」
「でもよ!」
「上から言われてるだろ」
椿が眉を寄せる。
「上?」
二人は答えなかった。
「秋山に伝えろ」
男が椿を睨む。
「東側に首を突っ込むなら、次は昨日みたいには終わらない」
二人はそのまま立ち去った。
椿は黙って背中を見送る。
「……面倒になってきたな」
その頃。
天馬、夢斗、海斗は駅前を歩いていた。
「結局、誰なんだろうな」
夢斗が言う。
「何が?」
「久我山より上の奴」
海斗も気になっていた。
「桐生先輩も知らないって言ってたしな」
その時。
天馬の前に、一人の男が立った。
「秋山天馬」
三人が止まる。
男は一人だった。
「また俺?」
「人気者だな」
夢斗が笑う。
「嬉しくねえよ」
天馬が男を見る。
「誰?」
「名前を教える必要はない」
「じゃあ俺も話す必要ないな」
天馬が横を通ろうとする。
「待て」
男の声が低くなる。
「久我山を倒したそうだな」
天馬が振り返る。
「だったら?」
「東側で、お前の名前がかなり広がってる」
海斗が前へ出る。
「お前も東側の奴か?」
「ああ」
男は天馬だけを見ていた。
「秋山。俺たちのところへ来い」
「は?」
夢斗も驚く。
「仲間になれってこと?」
「そうだ」
天馬は少し考え――
「嫌だ」
即答した。
男の眉が動く。
「理由は?」
「知らない奴らの下につく理由がない」
「……そうか」
男は背を向けた。
「今日はそれだけだ」
「喧嘩しないの?」
夢斗が聞く。
男が振り返る。
「次はそうなるかもな」
そのまま人混みへ消えていった。
海斗が息を吐く。
「とうとう勧誘まで来たか」
「絶対行かねえけどな」
天馬が答える。
その直後。
スマートフォンが鳴った。
椿からだった。
『東側の奴らが来た』
天馬の表情が変わる。
『俺にも来た』
すぐに返信する。
しばらくして椿から返ってきた。
『やっぱり動いてるな』
天馬はスマートフォンをしまう。
夢斗が尋ねる。
「椿?」
「ああ」
「何だって?」
天馬は二人を見る。
「向こうにも東側の奴らが来たらしい」
海斗の表情から笑みが消える。
天馬は男が消えた方向を見る。
自分だけではない。
周囲にいる人間まで見られ始めている。
「……そろそろ放っとけないな」
第20話 完




