第19話「東側の連中」
放課後。
天馬は桐生と学校近くの公園へ向かった。
少し遅れて、夢斗と海斗もやって来る。
「椿は?」
夢斗が聞く。
「別のクラスだし、まだ声かけてない」
「そうか」
桐生が三人を見る。
「昨日、お前らが戦った連中について少し分かった」
天馬がベンチに腰を下ろす。
「久我山たちですか?」
「ああ」
桐生は頷いた。
「最近、東側のいくつかの学校から喧嘩の強い奴を集めてる連中がいる」
海斗が眉を寄せる。
「一つの学校じゃない?」
「違う」
「だから制服がバラバラだったのか」
夢斗が納得する。
「何のために集めてるんですか?」
「東側をまとめるためらしい」
天馬が顔を上げた。
「まとめる?」
「あいつらの言い方なら、そうなる」
桐生は続ける。
「従わない奴には喧嘩を仕掛ける。強い奴がいたら仲間に誘う。それでも断ったら潰す」
「めちゃくちゃだな」
天馬が呟く。
海斗が桐生を見る。
「久我山がトップなんですか?」
「いや」
即答だった。
三人の表情が変わる。
「違うの?」
「あいつは下だ」
夢斗が驚く。
「七人連れてたのに?」
「だから言っただろ」
桐生の表情が険しくなる。
「尾張には、お前らが知らない奴がまだいる」
天馬は黙って聞いていた。
「じゃあ、上に誰かいるんですね」
「ああ。ただ、俺もまだ名前までは掴んでない」
その時。
海斗が公園の入口を見る。
「……先輩」
一人の男子生徒がこちらへ歩いてきていた。
顔には青あざがある。
桐生が立ち上がる。
「どうした?」
「東側の奴らにやられた」
「どこで?」
「駅の向こう」
男子生徒は天馬たちを見る。
「それと……秋山天馬って誰?」
天馬が立ち上がる。
「俺」
「お前か」
男子生徒が息を整える。
「あいつら、お前を探してる」
夢斗と海斗の表情が変わる。
「また?」
天馬はため息をついた。
「今度は何人?」
「分からない」
男子生徒が首を振る。
「でも昨日までとは違う」
「どういう意味?」
「久我山より上の奴が動いたらしい」
桐生の目つきが変わった。
天馬もゆっくり立ち上がる。
「場所は?」
「秋山」
桐生が止める。
「すぐ行くな」
「でも――」
「向こうがお前を探してるなら、待ってても来る」
桐生は天馬を見る。
「相手が誰なのか分かってから動け」
天馬は少し黙った。
やがて頷く。
「……分かりました」
夢斗が小さく息を吐く。
「珍しく聞いたな」
「俺だって考える時はある」
「珍しい」
「二回言うな」
海斗が笑った。
桐生だけは、東側の方向を見たままだった。
久我山より上の男。
尾張の抗争は、さらに大きくなろうとしていた。
第19話 完




