第17話「四人目」
「行け!」
久我山の声で、残った四人が動いた。
天馬、夢斗、海斗、椿もそれぞれ前へ出る。
椿の正面から男が拳を振る。
「おらっ!」
椿は身体を横へずらした。
そのまま相手の腕を掴み、体勢を崩す。
「なっ――」
腹へ拳を一発。
「ぐっ!」
さらに顎へ拳を叩き込む。
男が地面へ倒れた。
夢斗が驚く。
「椿、強っ!」
「前見ろ!」
「え?」
夢斗の正面から拳が飛んできた。
「危なっ!」
ギリギリで避ける。
海斗が笑う。
「よそ見してる場合かよ!」
「うるせえ!」
海斗も相手と殴り合う。
一発を腕で受け、すぐに拳を返した。
「ぐっ!」
相手がよろめく。
海斗が踏み込む。
「これで終わり!」
拳が頬を捉えた。
二人目が倒れる。
残るは久我山と、もう一人。
「ふざけやがって……!」
久我山が天馬へ突っ込む。
「秋山!」
拳が飛ぶ。
天馬は避ける。
二発目。
腕で受ける。
「おらぁ!」
久我山がさらに踏み込んだ。
その瞬間、天馬の身体が沈む。
久我山の懐へ入った。
「っ!」
腹へ拳。
久我山の身体が止まる。
天馬はそのまま胸元を掴んだ。
足を掛ける。
「うおっ!?」
久我山が地面へ叩きつけられた。
「がっ……!」
天馬は息を整えながら久我山を見る。
「まだやる?」
久我山は起き上がろうとした。
だが、力が入らない。
最後の一人も周囲を見回す。
仲間は全員倒れていた。
「……くそ」
戦いは終わった。
夢斗がその場に座り込む。
「最初七人いたんだよな?」
「いたな」
海斗が答える。
「もうしばらく集団戦はいいわ」
「それ昨日も言ってなかった?」
椿が呆れたように二人を見る。
天馬は椿へ近づいた。
「助かった」
「たまたま通っただけだ」
「それでも助かった」
椿は少しだけ笑った。
「なら、今度なんか奢れ」
「何でだよ」
「助けた礼」
「ちゃっかりしてんな」
夢斗が立ち上がる。
「じゃあ四人で飯行こうぜ」
海斗も頷いた。
「いいな」
天馬が椿を見る。
「来る?」
椿は少し迷ってから答えた。
「……行く」
四人は鞄を拾い、その場を離れた。
その後ろで、久我山がゆっくり身体を起こす。
「秋山……天馬……」
悔しそうに拳を握る。
天馬の名前は、さらに尾張へ広がろうとしていた。
第17話 完




