第16話「三対七」
「行け!」
久我山の声と同時に、二人が天馬へ飛びかかった。
一人目の拳をかわす。
だが、もう一人が横から蹴りを放つ。
「ぐっ!」
天馬の脇腹に入った。
その隙を久我山は逃さない。
「おらぁ!」
拳が天馬の頬を捉える。
「天馬!」
夢斗が叫ぶ。
「よそ見してんな!」
夢斗にも二人が襲いかかる。
拳を腕で受け、そのまま一人を押し返す。
しかし、背後から殴られた。
「いってぇ!」
海斗も二人を相手にしていた。
「くそ……数が多い!」
一人を殴っても、すぐにもう一人が来る。
三人とも、思うように攻められない。
「どうした秋山!」
久我山が踏み込む。
天馬は拳を受けながら後ろへ下がった。
「噂ほどじゃねえな!」
「……うるせえ」
天馬が顔を上げる。
久我山がもう一度迫る。
右拳。
天馬の身体が動いた。
かわす。
そのまま久我山の腕を掴んだ。
「なっ――」
引き寄せる。
膝を腹へ叩き込む。
「ぐっ!」
久我山が下がる。
そこへ別の男が殴りかかってきた。
天馬は振り返る。
一歩踏み込んだ。
拳が男の顔面に入る。
「がっ!」
一人が倒れる。
「まず一人」
天馬が息を吐く。
夢斗が笑った。
「やっと減った!」
「お前も倒せ!」
「分かってる!」
夢斗は正面の男へ突っ込む。
一発を受けながらも、腹へ拳を返した。
「おらっ!」
男がよろめく。
そこへもう一発。
二人目が倒れた。
海斗も相手の腕を払い、顔へ拳を叩き込む。
「寝てろ!」
三人目が地面へ崩れる。
残る四人。
久我山が腹を押さえながら天馬を睨む。
「調子に乗るなよ……!」
「そっちが七人で来たんだろ」
天馬が構える。
夢斗と海斗も左右に並んだ。
「これで三対四」
夢斗が笑う。
「だいぶ楽になったな」
海斗も拳を握る。
久我山たち四人が再び動く。
その瞬間。
「秋山!」
聞き覚えのある声が響いた。
天馬が一瞬だけ横を見る。
道路の向こうに立っていたのは――
竜胆椿だった。
「……何やってんだ、お前ら」
天馬が笑う。
「見れば分かるだろ」
椿は七人のうち三人が倒れているのを見る。
そして鞄を地面へ置いた。
「また面倒なことになってるな」
久我山が睨む。
「誰だ、お前」
椿は天馬の隣へ歩いていく。
「ただの同級生」
「椿」
「何だ?」
「手伝う気?」
椿が拳を握った。
「そのつもりで鞄置いたんだけど」
天馬が笑う。
「じゃあ頼む」
四人。
久我山たちも構え直す。
人数は並んだ。
第16話 完




