第12話「尾張の火種」
放課後。
天馬、夢斗、海斗の三人は学校を出た。
「なあ、昼間の桐生先輩が言ってたこと」
夢斗が口を開く。
「尾張の話?」
「ああ。学校一つ二つの話じゃないってやつ」
海斗が頷く。
「俺も気になってた」
天馬は鞄を肩に掛け直した。
「でも、尾張って言っても広いだろ」
「だから怖いんじゃん」
「お前、楽しそうだけど」
「バレた?」
三人が笑う。
その時、夢斗のスマートフォンが鳴った。
画面を確認した夢斗の表情が変わる。
「……マジか」
「どうした?」
「知り合いから」
夢斗が画面を見せる。
『東側で揉めてる。昼間から何人もやられてる』
天馬が眉を寄せる。
「東側?」
「この辺から少し離れたところ」
海斗が聞く。
「誰にやられた?」
夢斗は続けて届いたメッセージを読む。
「分からないらしい。ただ、他校の奴らが集団で動いてるって」
「集団……」
天馬は昼間に桐生から聞いた話を思い出した。
「行ってみる?」
夢斗が尋ねる。
「何でそうなるんだよ」
「気になるじゃん」
海斗が笑う。
「俺は賛成」
「お前らな……」
天馬は二人を見る。
少し考えてから歩き出した。
「見るだけだからな」
「はいはい」
三人は東側へ向かった。
しばらく歩くと、住宅街の外れにある小さな広場へ着いた。
「……いた」
海斗が足を止める。
広場には数人の男がいた。
制服はバラバラだった。
その足元には、別の高校の生徒が二人倒れている。
「何だよ、あれ」
夢斗の表情から笑みが消える。
男の一人が、倒れている生徒の胸ぐらを掴んだ。
「この辺で強い奴、他にいねえのか?」
「知らねえよ……」
「使えねえな」
拳を振り上げる。
「おい」
天馬が声をかけた。
男たちが振り返る。
「誰だ?」
天馬たちは広場へ入る。
「もう倒れてるだろ」
「だから何だよ」
男が立ち上がった。
その後ろにいた三人も天馬たちを見る。
「四人か」
海斗が呟く。
「いや」
夢斗が奥を見る。
建物の陰から、さらに二人が出てきた。
「六人だな」
天馬は鞄を地面へ置いた。
「見るだけじゃなかったの?」
夢斗が笑う。
「予定変更」
海斗も鞄を下ろした。
男たちが近づいてくる。
「お前ら、どこの学校だ?」
「そっちから名乗れよ」
天馬が返す。
男の顔が険しくなった。
「生意気だな」
一人が天馬へ向かってくる。
その瞬間。
道路側から声が響いた。
「待て!」
全員が振り向く。
そこに立っていたのは――
桐生拓真だった。
「またお前らか」
男たちの表情が変わる。
天馬が桐生を見る。
「先輩?」
桐生は天馬の横まで歩いてくる。
「秋山。こいつらは昼間の連中とは違う」
「知ってるんですか?」
「ああ」
桐生は六人を睨んだ。
「尾張の東側で、最近動き始めた連中だ」
男たちも拳を握る。
「桐生までいるならちょうどいい」
桐生が笑った。
「上等だ」
天馬も前を見る。
夢斗と海斗が左右へ広がった。
六人の男たちも動き出す。
尾張で燻り始めた火種が、少しずつ天馬たちのもとへ近づいていた。
第12話 完




