第3話 月の精霊セレネと賑やかなパーティ【リニューアル改訂】
砂漠の熱風が容赦なくアリスの体を焼いていた。
「はあ……はあ……もう限界……」
アリスは汗だくで歩きながら、水筒を振った。からからだ。
右肩のディネが扇子代わりの手でパタパタしながらぼやく。
ディネ:「だからオアシスを目指しなさいって言ったのに。お肌が砂でガサガサよ。美少女の敵は乾燥なんだから、しっかりしなさい」
左肩のノームが低い声で続ける。
ノーム:「水分は少しずつ出す。我慢しろ」
アリス:「二人とも……ありがと……って、ノーム! もっと出してよ!」
ノーム:「砂漠じゃ魔力消費が激しい。贅沢言うな」
ディネ:「ほら、アリス。背筋伸ばして。猫背だと余計に暑く感じるわ」
アリス:「今そんな場合じゃないでしょ! 毒舌と世話焼きを同時にやるの禁止!」
突然、砂の中から巨大サソリが飛び出してきた。
アリス:「来やがった!」
ディネ:「土系は私の魔法が効きにくいわ。頑張って!」
ノーム:「俺も苦手だ。足場が悪い」
アリス:「今更言うなよ二人とも!」
気を込めた剣を振り回し、サソリをなんとか倒す。
倒した瞬間、アリスは膝をついた。
アリス:「一人じゃ絶対無理だった……」
ディネ:「当然でしょ。私たちがいなければ干からびてるわ」
ノーム:「……弱い」
アリス:「またそれ!」
さらに進むと巨大岩ゴーレムが立ちはだかった。
ディネ:「水魔法を剣に纏わせなさい!」
アリスは指示通り剣に薄い水膜を纏わせた。
「アイスシェイバー!」
氷の刃が岩を削る。
ノーム:「アースクエイク!」
地面を揺らして動きを止め、アリスがトドメを刺した。
アリス:「やった……!」
ディネ:「まあまあね。まだ改善の余地だらけだけど」
ノーム:「無茶するな」
アリスは息を荒げながら笑った。
アリス:「みんな、ほんと頼りになる……」
ディネ:「感謝するのはいいけど、汗でべっとりよ。早く神殿に着きなさい」
やがて岩場の上に古びた神殿が見えてきた。
地下室の鉄の鎖で繋がれた石の箱。
ディネ:「ここよ。魔力を注いで契約を迫りなさい」
アリスが魔力を流し込むと、箱の中から元気いっぱいの少年の声が響いた。
サラ:「助けてくれ! なんでも言うこと聞くから!」
ディネが即座に釘を刺す。
ディネ:「契約を先に結びなさい。この子、自由にしたらすぐ暴走するわよ」
契約の赤い魔法陣が輝き、封印が解けた。
箱が弾け、炎のような赤い髪の少年——サラが飛び出した。
サラ:「やったー! 自由だぜ!」
アリスはにやりと笑って手を差し伸べた。
アリス:「私の手の中で、ね?」
サラ:「……ちっ、わかったよ」
こうして火の精霊サラマンダーが仲間入りした。
砂漠を抜け、荷馬車に拾われた一行。
馬車の中で早速大騒ぎが始まった。
ディネ:「火の精霊なんて熱くてうるさいんだから、もっと静かにしなさいよ」
サラ:「うるさいのはあんただろ! 水みたいにベチャベチャ喋ってんじゃねえ!」
ノーム:「……静かにしろ」
アリス:「三人とも! 初めての馬車旅なんだから仲良くしてよ!」
ディネ:「サラが悪いんですけど?」
サラ:「ディネ姉さんがうるさいんだよ!」
アリス:「あーもう! 毎日これか!」
その頃、亜空間の会議室では3大精霊会議が開催中だった。
ノーム:「第1回3大精霊会議を始める。議題は契約者への対応だ」
ディネ:「正直、歴代の中でも弱めよね……」
サラ:「ナンバーワンに弱い!」
ノーム:「成長してから契約すべきだった」
ディネ:「あの時はピンチだったのよ!」
アリスは馬車の中で苦笑した。
アリス:「みんな、うるさいけど……楽しいな」
町に着き、冒険者ギルドで報酬を受け取ったアリスは、そこで金髪の美形青年剣士と出会った。
ミクリ:「一人で大変そうだね。一緒に組まないか?」
アリス:「え、いいの?」
ディネが腕を組んで評価する。
ディネ:「腕はそこそこありそうね」
サラ:「男だけど……まあいいか」
ノーム:「試す価値はある」
アリスは笑顔で手を差し出した。
アリス:「よろしく、ミクリ!」
その夜、宿でアリスはベッドに寝転がりながら呟いた。
アリス:「これからもっと賑やかになりそうだ……」
ディネ:「毎日が漫才大会よ。覚悟しなさい」
サラ:「俺が派手に守ってやるぜ!」
ノーム:「……無茶するなよ」
アリスは小さく笑った。
しかし、笑顔の裏で、砂漠の神殿で感じた微かな黒い霧の気配が胸に引っかかっていた。
(……何か、近づいてきてる気がする)




