告白と受容
事務所の窓から漏れる灯りが、石畳を弱々しく照らしている。その光の縁に、ジャックとスカーレットは並んで立っていた。
ジャックは、あの嵐のような夜からずっと胸に澱のように溜まっていた疑問を、ついに口にした。 「スカリー。あの夜、君は本当は何をしたんだい」
ジャックはこの質問がスカーレットに絶対聞いてはいけない種類のことだと思い、尋ねることにずいぶんと迷いはあった。
その問いに、スカーレットの心臓が小さく跳ねた。ついに、この時が来た。隠し通すこともできたかもしれない。けれど、目の前のこの真っ直ぐな瞳に、これ以上嘘を重ねることはできなかった。
「ジャック……もし私が、あの夜、人々の心を静める魔法を使った『魔女』だと言ったら、信じてくれる?」
スカーレットは、問いに対して問いで答えた。その声は微かに震えていたが、視線は逸らさなかった。拒絶される覚悟は、とうにできていた。
ジャックは、驚いた風もなく、ただ静かに彼女を見つめ返した。 「スカリー、あの夜……君が何か二言三言、呪文のようなものを呟いたあと、君の体が淡く光るのを僕は見たんだ。その刹那だった。労働者たちが、まるで憑き物が落ちたように我に返り、場を覆っていた熱病が霧散して、空気が一変した」
「……見ていたのね」
「ああ。だから、君が自分のことを魔女だと言うのなら、それを疑う理由なんて、僕にはこれっぽっちもないんだよ」
スカーレットは息を呑んだ。胸の奥に冷たく居座っていた「恐怖」が、彼の言葉によって、じわりと溶け出していくのを感じた。
「私のことを……怖くないの? 化け物だとか、忌まわしい存在だとは、思わない?」
その問いに、ジャックはふっと、いたずらっぽくさえ見える柔らかな笑みを浮かべた。 「思うものか。むしろ、その逆だよ。僕がどれだけ計算を重ねても届かない領域を、君は一瞬で守ってみせた。君が持つその力を、僕は、稀有な才能として心から尊敬する」
ジャックの手が、スカーレットの震える肩を包み込むように置かれた。 鉄と油の理を信じる青年と、目に見えぬ理の外側に生きる少女。二つの異なる世界が、冬の星空の下で、初めて真実を分かち合い、静かに重なり合った瞬間だった。




