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静寂を取り戻す者たち

 セント・ニコラス教会の墓地は魔法の残滓の清掃が終わり、ひとときの平穏を取り戻した。墓石の表面から、幽霊騒ぎの原因となっていた魔力の淀みが消え去ったことで、死者たちの眠りも、いくらか静かになるだろう。


 牧師館からルーサーが、牧師と共にやって来た。牧師の顔には、安堵の表情が浮かんでいる。


「この墓地の墓石は、大体きれいになったようだね」


 ルーサーは、スカーレットたちの作業を評価するように言った。


「どうも数日前から幽霊騒ぎが起きて、夜になるとカンテラを持った観光客が集まって来てしまって……死者の眠りを妨げていたようなんだ。今回の清掃作業で、少しは死者も喜んでくれるだろう」


 ペネロペは、誇らしげにルーサーに報告した。


「スカリーがなかなか掃除の才能があってさ、仕事がはかどったよ。私たちも驚くほどにね」


 牧師は、スカーレットたちに向けて、深く頭を下げた。


「きれいにしていただき、心から感謝しております、ルーサー様」


「いや、こうした奉仕活動が、我々の使命ですから」


 ルーサーは、教会の信者という表向きの顔を完璧に演じながら、続けた。


「また幽霊騒動が起きたら、いつでもお呼び下さい」


 ルーサーは一行を引き連れて、墓地を後にした。馬車に乗り込み、次の目的地へ、ゆっくりと移動を始める。荷馬車は、再びアシュフォードの「合理」から遠ざかる方向へと進んでいく。


「さて、次はダリングウッズという森だ」


 ルーサーは、手綱を握りながら説明を続けた。彼の声には、先ほどの牧師への対応とは違う、現実の厳しい仕事へと向かう者の、張り詰めた緊張感が滲んでいる。荷馬車の車輪が、森の入り口へと続く、湿った土の道を軋ませた。


「この森は、野営する者が多いんだが、ここで泊まって、制御もせずに魔法をぶっ放す奴があとを絶たなくてね。そのせいで、森のあちこちで幽霊が出るという噂になっている」


 バイオレットが、憂鬱そうに付け加えた。


「幽霊はプラックリー村の観光資源にもなっているから、村としては噂をすべて消されると困る、なんて言い草でね。すべてを消す必要もないんだが、さっきの牧師は『教会の中にまで幽霊が出るようになって、寝てられない』っていうんで、来たんだよ」


「教会の建物の中も、古い魔力の残滓が見つかったから、牧師に気がつかれないように、きれいにしてきたよ」


 ペネロペが笑う。その声は、湿った森の空気の中で、からりと響いた。ルーサーは、荷馬車を森の入り口で止め、スカーレットを見た。


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