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最恐魔導士は、おれがお嫌い  作者: 水桜崎 有叉杜
第二章

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ユィンの罪の理由

「腹減ってない? 何か食おうよ」


 辿り着いた先は食堂で、嘉一は机の上のメニュー表を見た。


「食べ物は日本と同じだな……」

「そりゃ良かった。ユィンも困らねぇだろ。でも、お前が知らない料理も、この世界には有るよ」


 ゼノは壁に貼られている、料理名の書かれた多数の紙を見た後、身に付けたカバンから鏡を取り出し、嘉一に向けた。


「ユィンってのは、その体の元の持ち主ね。今は、お前の体に居ると思うよ」


 嘉一は「そういや、さっき見たユィンって人の記憶で、入れ替わるとか言ってたな……」と、鏡を受け取り、「おれと入れ替わったって事?」と質問した。


「そう」


 ゼノの返事の後、鏡を見て「人形みてぇ……」と、嘉一は呟く。

 嘉一の言葉に、ゼノは「ユィンは美形って言いたいの?」と聞いた。


「うん……人形みたいに整ってるなって……」

「元のお前は残念だもんな。ユィンは平凡な容姿に生まれたかったみたいだから、幸せだろう」

「……こんだけ綺麗な見た目なら、どこかの王子とか?」

「残念。やっかみで滅ぼされた一族の生き残り。聞きたい? 話」


 鏡を嘉一から返されたゼノは、その鏡を机の上に伏せる。

 嘉一は、発言に迷ったような表情で、「そういう話なら聞きたくない……」と、こぼした。


「聞かなくていいの? とりあえず、ユィンは賞金首だから、油断すると死ぬよ」

「賞金首? 悪い奴なの?」

「聞いとく? 話。じゃあ、話すけど、ある所に、花錬族という、一人で五十人は倒せるほど、ずば抜けた戦闘能力を持つ一族が居ました」

「なんで敬語? 普通に話して」


 ゼノは「昔話は敬語の事が多いかなって」と返した後、続ける。


「そのせいで周辺の民族から恐れられてたんだよね。一番大きい村の民は海杜族と呼ばれていて、その長が、ユィンを騙して呼び出したんだ。和平を結んで、金輪際、戦争しないようにしようって。ユィンは花錬族の長の息子でね。元々呼び出された父親の体調が悪かったから、代わりに話を聞きに行ったんだ」


 混乱したように、まばたきをした嘉一が「騙したって?」と聞く。


「村に帰ったユィンは、真実を知った。和平なんて嘘っぱち。本当は、花錬族を滅ぼす事が目的だったんだって。周辺の民族は男衆を総動員して、飛び道具で花錬族の村を攻撃したんだ。ユィンが村に戻った時には花錬族は、みんな死んでた」

「……それ、本当?」

「本当だよ。……花錬族は用心棒として他の地域で高給の仕事が有ってさ。裕福とは言えない周辺の民族は、それを妬んでた。ユィンが賞金首になったのは、騙し打ちに参加した海杜族を始めとした、ほとんどの男衆を全員殺したから。興味が有ったから、事が済んだ後に見に行ったら、投げる為の石を手にしたり、飛び道具を持ったりした女達の視線の先に、血まみれで傷だらけのユィンが居たよ」

「……それで?」

「ユィンは泣いてた。それを見て、俺はユィンを連れて逃げたんだ。花錬族の中ではユィンが一番強かったんだけど、二番目に強いのはユィンの父親で。周辺の民族から、どちらか一人なら、残っても後で殺せると踏まれたらしい。わざわざ騙したのは、その為だったんだよ。周辺の民族の女子供から恨まれて、ユィンは賞金首にされたの」

「……話、長いし、重くない?」

「ゆるい世界で生きて来た奴は言う事が違うねぇ」


 視線を逸らされたままの言葉に、嘉一は「嫌味?」と尋ねた。


「ただの感想。ちなみに俺の魔法で、お前の姿は他の人からは別人に見えてるから。魔法が切れる前に食事とろうぜ」


 ゼノは、嘉一の返事を待たないまま、店員に「お姉さん、注文いい?」と声を掛けた。

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