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最恐魔導士は、おれがお嫌い  作者: 水桜崎 有叉杜
第七章

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守れる約束と、守れない約束

 ヴァンの家の隠し部屋で、ナラの複製達を嘉一が、授華呪で燃やしている。

「嘉一が居て、良かったね」と言ったルサナは、戸棚の裏に隠れて、ナラの複製達を見ないようにしている。

 ゼノが「燃やす所、見たくないなら、ヴァンと居れば良かったのに……」と聞いたが、ルサナは、ぎゅっと目を閉じたまま、「嘉一に聞きたい事が有って……」と口にする。


「まだ死にたい?」

「……うん」


 嘉一の返事を聞いたゼノが「そうなの?」と尋ね、ルサナが「賞金首、合計十人捕まえたから、無罪放免でも死にたい?」と聞く。


「もう、誰も殺したくないし、殺されたくないけど、ラジアンじゃ、それは無理かもしれないだろ……」

「じゃあ、ずっと、つらかったね」


 ルサナの返答に、ゼノが「嘉一は、ずっと、つらそうだったよ」と、続けた。


「分かってて、やらせたの?」と、ルサナが目を開き、ゼノを見ようとして、授華呪の炎が消えている事に気づき、「ああ、良かった」と安堵した。


「だって、嘉一、ぬりぃんだもん」

「幸せは誰かの不幸の上に成り立ってる事が有る。誰かが、つらいくらいなら、自分がつらい方がマシだからね」


 ゼノが黙り込み、ルサナが「そうとは限らないと思うけどなぁ」と、口を尖らせた。


「おれが無罪放免になるには、賞金首を殺さなくちゃ駄目だったし、そうしたら、賞金首の人生は、そこで終わるんだ。俺は、誰かを犠牲にする事でしか、無罪になれなかったんだよ」


 ルサナは「嘉一が賞金首なのは、ユィンが海杜族に復讐したせいだしねぇ」と、嘉一を見た。


「人から見れば、俺がユィンなんだから、変わらないよ」

「いっそ、ユィンの中身は、異世界から来た嘉一と入れ替わったんだって、言いふらしちゃえば?」


 ゼノが「誰が信じるんだよ」と返し、ルサナも「ユィンの頭が変になったと思われるだけかな」と、困ったような表情になる。

 嘉一は「うちの家族は特殊だからね」と少しだけ困ったように笑った。


「お前の家族は、ユィンが異世界から来たって言っても信じたもんな」


 ルサナが「え? そんな人、居るの?」と、驚いたように言う。

 ゼノは「ルサナも、嘉一とユィンが入れ替わったって言っても信じたじゃん」と言ったが、ルサナは「信じてなかったよ? ユィンの頭がおかしくなったと思った」と答えた。


「話、合わせてただけか」

「でも、見てるうちに別人だなって……」


 ゼノとルサナの会話に、嘉一は「ルサナが信じてくれて、良かった」と、かすかに笑った。

 その笑顔を見て、「信じてくれる人は、他にも居ると思うよ?」と、ルサナが心配そうに眉を寄せた。


「ルサナが信じてくれれば、それでいいよ」


 ルサナは「私も、お料理、頑張ろうかなぁ」と、唐突に言った。

 ゼノが「なんで?」と聞くと、ルサナは「嘉一君は何と何が好き?」と聞く。

 ルサナの質問に、ゼノは「一つに絞れ」と短く言い、嘉一も「おれも一つに絞って欲しいな……」と返す。


「私の料理、ゼノは『不味い』って言いながら食べてくれるじゃん」

「お前の母ちゃん、食べ物残すと怖いからな」


 ゼノとルサナの会話を聞いた後、嘉一が「でも、初めの頃、俺が一人前食べれなくて残しても、ルサナのお母さんは怒らなかったね」と、ゼノを見る。


「お前は出来るだけ食ってたからな」


 ルサナも「頑張っても無理な時は、お母さんは怒らないよ」と続ける。

 ゼノは「今度、世話になる時は一人前、食えるんじゃないの?」と聞き、嘉一が「でも、ゼノの作る料理の方が好き」と話す。

 ゼノは「……嬉しいよ」と苦笑し、ルサナが「妬けるなぁ」と、ジト目になる。

 嘉一は「ゼノの方が料理、上手だから?」と、ルサナを見たが、ルサナは「それも有るけど……」と返した。


「ルサナは元々、ユィンの見た目、好きだったもんな」

「中身は大嫌いだったけど」

「だから顔も嫌いになったんだもんな。中身が嘉一なら問題無い?」

「問題有ったら、こんな話してないけど、ゼノが見せてくれた嘉一の本当の顔も、いいよね」

「何の話?」


 嘉一が聞いて、ルサナが「そういう所も、いいよね」と笑う。


「……そうなの?」


 事態を呑み込めていない嘉一の質問に、ルサナは「私が十六歳になるまで、彼女、作らないでね」と嘉一に言う。

 嘉一は「……は?」と、混乱したように発し、ゼノが「ルサナは嘉一の事、好きになると思ったんだよなぁ」と、口にする。

 戸惑っている様子の嘉一に、ゼノは「まぁ、ゆっくり考えな」と苦笑した。

 ルサナが「約束ね」と、嘉一を見て笑う。


「もう、決定事項?」


 その嘉一の言葉に、「嫌なのか?」と、ゼノが嘉一を見る。


「……ルサナが十六歳になるまで、俺、生きてるかなぁ」


 ルサナは「え? 死ぬの?」と、困ったように言い、嘉一が「まだ死にたいからね……」と答える。


「ゼノが連れ回したせいじゃないの?」

「まぁ、あんまり綺麗な所は見せてないね」

「やっぱり、ゼノのせいじゃん」

「今の時期、花でも咲いてる所、有るかなぁ……」


 ゼノとルサナの会話に、嘉一が「姉さんも母さんも、花、好きだったんだよなぁ……」と、遠くを見る目になる。


「……お前は嫌いなのか?」

「好きでも嫌いでも無いかな」


 ゼノへの嘉一の返答に、ルサナが「じゃあ、今度、お花畑、見に行こうよ」と提案する。


「帰り道、どっかに有るんじゃないのか?」


 ゼノに言われて、ルサナが「そうだね。探しながら歩こうよ」と答えた。


「俺が魔法使えれば、一瞬で連れて行けたんだけどな」


 嘉一は「ゼノは反転してない時には髪、伸ばさないの?」と、疑問を口にした。

 ルサナが「女に間違われるから嫌なんでしょ?」と笑う。


「反転治まっても、髪の長さは元に戻らないんだよ。一度、面倒になって、髪、切らずに居た時のトラウマがな……」

「元が女顔だもんねぇ」

「もう思い出したくもない……」

「速攻、髪、切ってたもんね」


 ゼノの発言に、ルサナは、また笑った。

 嘉一が「半端に伸ばしたら?」と、ゼノに尋ねると、ゼノが「……駄目」と答えた。


「駄目って?」


 嘉一の質問に、ルサナが「通行人が振り返る」と答え、ゼノが「後つけて来る奴も居る……」と続けた。

「なら、仕方ないね……」と、嘉一が同情するような表情をする。


「ユィンは女にもてる顔だよなぁ」


「中身が暗かったから、みんな深入りしなかったけどね……」というルサナの言葉に、「おれも似たようなものじゃ……」と嘉一が返す。

 ルサナが「嘉一は違うよ」と言い、ゼノが「俺には似て見えるけど、どう違うの」と聞く。


「優しいもん」

「そうかな……」

「うん。だから、死ぬとか言わないでね」

「……約束出来ないかな」


 嘉一と、そう話したルサナが「どうしてくれるの。ゼノのせいだよ」と、ゼノを睨む。

 ゼノが「話、堂々巡りだから、帰らないか?」と、逃げるように言い、嘉一が「そうだね」と苦笑した。

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