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最恐魔導士は、おれがお嫌い  作者: 水桜崎 有叉杜
第七章

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ナラにとっての救い

 屋上のバルコニーの柵に腕を置き、ナラが、こちらを見ていたが、家の中に入って行く。


「嘉一、帰るぞ」

「何か危ないの?」


 ゼノが「…………」と何も言わずに、呆れたように嘉一を見る。

 まずい事を言った事に気づき、嘉一は「帰ろう! とりあえず帰ろう!」と急いで言う。

 ゼノがヴァンの家に向けて走り出し、嘉一がゼノを追い掛けた。

 ヴァンの家の応接間に駆けた嘉一とゼノは、ドアを開けて応接間の中に入った。


「もう少しで応援が来る。そしたら、君の命も終わりだね」


 ナラが、そう告げ、ルサナの首の辺りを自分の腕で拘束している。

 そのナラの視線の先には、ゼノの姿が有る。


「人の細胞を使って人形を作る技術は、僕が八歳の時に作ったものでね。父は、僕に、お金と人形の製造を全て任せて、利益を上げている。僕さえ居れば何度でも機械を作り直せるけど、強い魔導士が居ないと、あの機械は作れないから、君の協力が無いと、もう無理かな」


 ゼノが「お前、やっぱり狂ってやがるな……」と、ナラに言い、ナラが「狂っているのは、この世界だ。人形を作る機械を完成させた為に、僕は十二歳の時、敵対組織に一度、殺されている」と、感情の無いような目をゼノに向ける。

 ナラの方を見ているゼノが「ああ。覚えてる」と口にする。


「あんたの両親は、俺に、あんたを生き返らせるよう頼んで来た。俺は親父が死んだ一年後、既に与命の魔導士だったからな」

「君さえ断らなければ、半端に壊れた僕が作られる事も無かったのに。君が僕を生み出したんだよ」


 ヴァンが「兄さん……何の話をしてるんだ……ゼノは関係無いんじゃないのか」と尋ねた。


「ヴァンを闘技場の警備員にしろって両親に言ったのは僕。必ずゼノ君と接点を持つと思ったからね」

「……兄さん……」

「お前の性格なら、護衛を買って出ると思った。ゼノ君の首を狙ってる奴らが居るって、わざと情報流したかいが有ったなぁ。といっても、ゼノ君を殺したいのは、人形製造機を壊されて損失を受けたり、賞金首狩りで恨んでる奴だけじゃないんだけどね」


 嘉一が「どういう意味」と聞き、ナラが「ゼノ君から、大事な人を生き返らせる事を断られた人は、みんな言う。あいつは悪魔だって。大事な人を生き返らせてくれないんだから当然でしょ?」と歪んだ笑いを見せた。

 ルサナは「ゼノは魂が見えるんでしょ? 魂が悪い人は生き返らせないだけよ!」と叫んだ。

 ゼノが「ルサナ……」と、ルサナを見ると「私のお母さんに話してるの、聞いちゃった事、有るもん。あんたが最低な人間だっただけなんじゃないの!? ナラ!」と、ルサナは声を上げた。

 ナラが、ルサナの首に腕で力を込める。

 ヴァンが「兄さん!」と、ナラが居る方に飛び出した。

 ルサナが僅かに、苦しそうに顔を歪める。

 ナラが「教えてくれよ。ゼノ君。僕は何者だ」と、問う。


「……お前の肉体は、ナラの細胞を使った複製だ。両親は他にもスペアを作ろうとしたんだろう」

「僕の出来損ないが、いくらでも居るよ。みんな表情も意思もない。壊れてる。なのに何故、僕だけ違うんだ」

「始めは全て失敗だったんだ」


 ゼノが、ナラを見る。


「人形製造機に、魔法で壊せない魔法を掛けた魔導士にも魂が見えたんだろう。あんたはナラだよ」

「嘘をついて、どうする?」

「その魔導士は、空の肉体に、あんたの魂を入れた。あんたは生き返ったんじゃなくて、魂を移し替えられたんだ」

「作り話だ」


 ルサナがナラの腕に噛み付き、ナラが腕を離した事で、ルサナはゼノの所まで逃げて来た。

 嘉一が、ルサナを庇うように、ルサナの斜め前に出る。

 ナラは「僕の魂は、なぜ、こうも壊れている? 感情が無いんだ。生きているとは言えない」と、表情の無い顔で言った。


「……不完全な魔法だったんだろう。あんたの魂は半端に呼び戻されたんだ」

「僕の魂を完全に呼び戻す事は出来るのか」

「あんたの心は「死にたい」って言ってるけど」


 嘉一が「そうなの?」と、ゼノを見る。


「魂を呼び戻した魔導士が掛けた魔法のせいで、魔法じゃ殺せない。時間掛かっていいなら素手で殺してやるけど」


 ゼノの言葉を聞いたナラが「久しぶりの外食だった」と話し始める。


「敵対組織に毒を盛られて、僕は、その日の夜から数日間、苦しみながら死んだんだ。時間が掛かるのも、苦しむのも、ご免だ」


 ゼノが「ヴァン。お前は知らなかったのか?」と聞き、ヴァンが「私は十一歳まで寄宿学校に入れられていた。ナラに起きた事は全然知らなかった……」と、ショックを受けたように立ち尽くしている。

 ナラは「お前の身を案じて、お前が十二歳の時、両親は家に呼び戻す事にしたんだよ。治療に時間が掛かる病気に掛かった、僕は居ないと説明してね」とヴァンを見る。

 ゼノが「……嘉一。死にたい気持ち、分かるだろ?」と嘉一を見た。

 嘉一が「……うん」と短く答える。

 ヴァンが「待って!」と、嘉一とナラの間に立つ。」


「兄さんなんだ……殺さないで……」


 嘉一は「ヴァン……」と、戸惑った。

 嘉一が、体の横で拳に力を込める。


「ナラさんは生きていて幸せになれると思う?」

「嘉一の言う通りだ。ナラは何してても楽しくないんだよ。半端にあの世に行っちまった、魂の片割れをどうにかするまでは」


 嘉一に質問され、ゼノに断言され、ヴァンは「……死ぬ事でしか、解決しないのか……?」と、絶望したような表情になる。


「僕の魂は汚れている。細胞から人形を作っても、嬉しいだけだった。遊びの延長で、人の命を弄べるんだ。死んだ方が世の中の為だ」


 嘉一は「生まれ変わったら、幸せになれる?」と、ゼノを見た。


「ナラ次第だ」


 嘉一は「そっか」と、炎を右手に宿した。

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