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最恐魔導士は、おれがお嫌い  作者: 水桜崎 有叉杜
第七章

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ナラの複製

 食料を買う為の店に向かう途中の道で、ゼノが少しだけ後ろに視線をやった事で、嘉一が「どうしたの」と聞いた。


「つけられてる」

「え!?」

「走る。ヴァンの家から出来るだけ離れよう」

「逃げて、ルサナとヴァンは大丈夫?」

「お前が人間相手に怯まなければな」


 ゼノが、走り出し、嘉一は、ゼノに着いて行く。

 柱の後ろから出て来た影が、ゼノと嘉一を追い掛けて来る。

 嘉一が「本当に、つけられてた……!」と小声で言う。


「嘉一。悪い知らせだ」

「悪い知らせ? 相手が人間とか!?」

「その通りだよ。任せたぞ」


 ゼノが、いきなり横道に入って行き「姿、入れ替えてて良かったな! ゼノ! お前、逃げ切れるぞ!」と叫んだ。

 敵が、少し立ち止まって、ゼノと嘉一を交互に見た後、嘉一を追い掛ける。

 嘉一は戸惑った後、「くっ……。そうだよ、俺がゼノだよ! こっち来い!」と叫んだ。

 空中に真っすぐ嘉一が手を伸ばすと、土が盛り上がって行き、敵を呑み込む。

 敵は、箱型の土に覆われるが、その右手が箱の側面を破って、飛び出した。


「息が出来なくなれば気絶すると思ったのに……!」


 嘉一は呟くが、敵は、飛び出させた右手を顔の辺りに持って行き、土壁を、むしるようにして砕いた。

 嘉一は、相手の顔を見て、驚く。


「ナラさん……!? ずっと追いかけて来てたの……!?」

「気持ち悪い奴だねぇ」


 ゼノは、そう言い、敵はゼノを見て、ゼノの方に歩を進めようとした。


「ゼノ! 頼んだって言ったよな!?」

「おれ、まだゼノなの!? これ、誤魔化せてるの!?」

「誤魔化せてないに決まってんだろ!」


 敵は、ゼノを見つめたまま、突っ立っている。

 嘉一が、手に炎を宿し「それ以上ゼノに近づくと燃やすからね!」と声を上げる。


「断ってる場合か! さっさと燃やせ!」

「だって……どう見ても人間じゃん!」

「目に見えるものに囚われてたら殺されるぞ!」

「え? 違うの!?」

「そいつは、ナラの細胞を使って作られた複製だ! 魂が無い!」

「人間じゃないの!?」

「……んな事、知るかよ! お前、細胞そのものを人間って呼ぶか!?」

「やばい……考え始めたら、沼に……」

「とにかく、お前が何とかしてくれなきゃマズいんだよ! 人形とでも思え!」

「あれを人形だと思えって!? ……思えないけど、やってみる……!」


 嘉一が、炎を敵の方に近づけるが、炎は途中で動きを止める。


「ヴァンは知ってるのかな? お兄さんの複製が有るって……」

「知ってたら、もう少し頭が回る奴だろう」

「生ける屍でも、動いてる限り生きてると俺は思うんだけど……」

「生きてる奴が、授華呪の炎を前にして、微動だにしないって事が有るか」

「脳に障害が有る人とかさぁ……」

「そういう奴も居るけど、あいつは違うだろ」


 敵が、嘉一が停止させていた炎の方に近づき、自ら炎に呑まれた。

 嘉一は、それを見て「嘘だろ……」と呟いた。

 ゼノが「自殺かね?」と言い、嘉一が「そうなの?」と聞く。


「俺が知るかよ」


 ヴァンの家の方を、ゼノが見る。

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