↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最恐魔導士は、おれがお嫌い  作者: 水桜崎 有叉杜
第七章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
56/62

ヴァンの家での日常

 嘉一、ルサナ、ゼノ、ヴァン、ナラの五人が長テーブルに着いている。

 ナラはゼノの向かいの席に座っており、にこにこ笑っているが、ナラの前には、食器一つ無い。

 苛立った表情のゼノが「ヴァン、どうにかしろ」と発した。

 ヴァンが立ち上がり、「ナラ。食事なら後で持って行くから、部屋に戻って」と口にする。

 ゼノがヴァンに「あんた、敬語じゃ無くても話せるなら、そうしてくれ」と言う。

 ナラが笑ったまま、「ヴァンは普通に話した方がいいよね」と、ゼノの方を向き続ける。

 ヴァンはゼノに「……分かった」と答えた。

 ナラは、何も言わずに部屋を出て行く。

 ルサナが「今のうちに食べとかないとね」と、スプーンを使って、スープを飲む。

 ゼノが「それくらいの時間は、くれるだろうな。嘉一も食っとけよ」と話す。


「……もう普通に食べて大丈夫かなぁ」


 嘉一の疑問に「いいんじゃねぇの?」とゼノが返す。

 立ち尽くしたままのヴァンに、ゼノが「あんたも食っといてくれ」と声を掛けた。

 ヴァンは「ありがとう……」と席に着いた。

 ルサナが、ゼノに「これ、ダシ、何?」と尋ねる。


「何も入れてない」

「……シンプルな味だと思った……」

「ここのキッチン、塩コショウくらいしか無《ね》ぇんだもん」


 ヴァンが「私が十二歳の時まで来てくれていた家政婦は塩コショウしか使わなかったので……」と、申し訳なさそうにした。


「家政婦は、兄に口説かれて応じたのが原因で辞めたけど……。母親も似たような味付けだったし……」

「なるほど。じゃあ、無事に帰れたら、もう少しマシなもん作ってやるから、俺を守ってくれ」


 そう話したゼノを見て、ヴァンが「マシなものか……。家で、まともな料理、食べた事無いな……」と口にする。

 ルサナが「なら、私も何か作るね」と笑う。

 ゼノが「……家族と一緒に作れよ……」と、げんなりした表情になる。

 ヴァンが、スープをスプーンで飲み、「塩コショウの味……」と呟いた。

 ゼノは「これが限界だって」と、ため息をつき、ルサナは「ゼノのご飯じゃないね」とゼノを見る。

 嘉一も「うん。ゼノの作るご飯、美味しいもんね」と、ゼノを見た。

 嘉一が、スープを食べていた手を止めて、ヴァンの方へ視線を向ける。

 ヴァンは「ベーコンの味がして美味しい……」と感想を口にした。

 ルサナが「苦肉の策だね」と言い、ゼノが「冷蔵庫の中身、ベーコンだけだったから、キャベツと一緒にスープにしただけだけどな」と漏らし、ヴァンが「ダシ代わりになるんだな……」と、感心したように呟く。


「ルサナ。お前の母ちゃん、料理教えるの好きだよな?」


 ゼノに問われて、ルサナが「ヴァンさんが習う気が有るならね」と、持っていたスプーンを軽く振った。

 ヴァンは「基本も分かってないから、知りたい」とルサナを見て、ルサナが「そうだね。無事に帰れたら、お母さんに言うね」と、ヴァンに笑い掛ける。

 ゼノが「無事に帰れるかな……」と器に入れていたスプーンを持ち上げる。


「嘉一が人間殺せるかだね」

「相手が人間じゃねぇ可能性も有るけどな」

「そっか……そうだね」


 ルサナと短い会話をして、ゼノが「嘉一。頼んだわ」と嘉一を見た。

 ヴァンが「私が守るから、大丈夫」とゼノに顔を向ける。


「そりゃ心強いね」


 ゼノの返答を聞きながら、ルサナが「パンも、ぼそぼそ」と、フランスパンを千切って、口に入れる。

 ヴァンが「まだ食べれるけど、買ってしばらく経ってるから……」とルサナの方を見た。

 ゼノが「本当……これが最後の晩餐にならなきゃいいね」とスープを口に運び、嘉一が「あ。でも、全部、食べれそう」と器に片手を添える。

 ゼノは「なら、良かった」と、わずかに、嘉一に笑い掛けた。




◇◇◇




 次の日の昼前に、嘉一とゼノとルサナとヴァンは、ヴァンの家の玄関の中に居た。


「何も食材無ぇから買い出し行って来るわ」


 上着を羽織ったゼノが、そう言って、ヴァンに「悪目立ちしたくないから、嘉一と出掛けて来る。ヴァンはルサナを守っててよ」と口にする。

 ヴァンが「いや、私が……」と、ゼノの護衛を買って出ようとしたが、ゼノは「本当は、買った方がいい物、教えたいけどね。四人で行くと目立つでしょ?」と返す。

 嘉一は「ルサナ……そういえば、おれ、一人で部屋を使う事になったけど、昨日の深夜、部屋に来てくれたのは何だったの……」と聞く。


「ゼノがヴァンさんと、お話したいかなぁって」

「ゼノもルサナも何時まで起きてるの……」


 ゼノとルサナが「嘉一が寝るの早いだけだよ」と口を揃える。

 嘉一が「だって、読むものないと退屈で寝ちゃうんだよ……」と頭を掻いた。


「お前、小説が好きなんだっけ?」

「うーん……でも、今は読んでも面白く無いかもなぁ」

「そうかもな」


 ルサナが、ゼノに「お話出来た?」と尋ねる。


「もう寝てた」


 ルサナは「ヴァンさん……」と、ヴァンを見る。


「まともに食べたの久しぶりだったからか、眠くなって……」


 ヴァンの返答に、ルサナが「あれで、まともって普段、何食べてるの?」と少し、驚いたような表情になる。

 ゼノが「まぁいいじゃねぇか。これから改善してけば」と、ルサナに言う。

 嘉一は「買い出しはいいけど、ゼノ、お金持ってるの?」と聞いた。


「あんまり……何買えるか分かんないけど……」

「ゼノの家に、お金置いて来ちゃったもんね」

「最悪、もやしの買いだめだな」


 嘉一とゼノの会話を聞いて、ルサナが「えー。ちゃんとしたゼノのご飯、食べたかったー」と残念そうにする。

 ヴァンが「……いくら要るの?」と懐から財布を取り出し、「私の財布で良ければ使ってくれ」とゼノに財布を差し出した。

 ゼノは「見ていいの? 中身」と財布を受け取る。

 ヴァンは「大したものは入ってない」と返したが、ゼノは財布の中身を見て「どんだけ入ってんだよ」と口にした。

 嘉一が、ゼノの持つ財布を覗き込み何十枚もの紙幣が入っているのを見て「お札ばっかり……」と驚く。

 ゼノは「とりあえず借りるわ。家に戻れたら、使った分は返すから」と、財布を肩掛けのカバンに仕舞う。

 ルサナが「ねぇねぇ。余裕あったら甘い物、買って来て」と、ゼノの方に体を向ける。


「人数分かよ」

「当たり前じゃん」

「何がいいの」

「えー。マカロン?」

「ヴァンが食べた事、無さそうな物、言ってるだけだろ。食う暇、有るかねぇ」

「無くても、マカロン」

「行き掛け、店、見かけたから、寄って来るわ」


 ゼノはルサナと、そんな会話をした後、嘉一を見て「行くぞ」と声を掛けた。

 四人は玄関に向かい、ゼノが玄関の戸を開けようとしたので、嘉一は、「う、うん」と言いながら、ゼノに着いて行こうとするが、振り返る。

 ヴァンが嘉一の視線に気づいて、壁の方を見た。

 嘉一は、ヴァンが見ていた方を見るが、玄関が有るだけだ。

 外に出ていたゼノが「何やってんだ。行くぞ」と嘉一に声を掛ける。

 嘉一は「待って」と、急いでゼノに着いて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。