部屋割り
ゼノが「どこの御子息? 良い家だね」と言う。
「父が二つ会社を経営していて、成功しているので」
「ゆくゆくは、あんたが跡取り?」
「会社は兄が継ぐと思います。二つも要らないかもしれませんが」
「お兄さんも警備員?」
「ごく潰しです」
階段の近くで、ヴァンが「兄の部屋が二階に有るので、入らないように」と説明する。
ゼノとヴァンの会話を聞いていたルサナが「私達のお部屋は一階なの?」と聞いた。
「あそこと、あそこです」
ヴァンが、リビングを挟んで、右側と左側に有る部屋をそれぞれ、手で示す。
部屋は正反対の位置に有り、お互いの部屋は離れている。
ゼノが「……遠くない?」と尋ねる。
「客間が他に無いもので」
「これだけ広いのに無いの?」
「はい」
「本当に?」
「一番安全だと判断しました」
「安全?」
「兄は女好きなので」
「……あんたの部屋は?」
「階段を上がってすぐの部屋です」
ルサナが、ゼノを覗き込むようにして「楽しそうだね! お世話になるんだから、お料理くらい作る?」と、首を傾げる。
ゼノは「また、余計な事を……」と言い掛け、ルサナが、「家政婦さんが居るなら何もしないけど」とヴァンの方を見る。
「普段は私がやっていますが、私も手伝いましょうか?」
ヴァンの言葉に、ルサナは「お兄さんの分も要る?」と質問した。
「兄には私が持って行きますので大丈夫です」
「だってさ。ゼノ、お願いね」
どこか楽しそうなルサナを見ながら、ゼノは「……なら、俺一人でやる。誰も手伝うな」と言い切った。
ヴァンが「いえ、私も……」と何か言い掛けたが、ゼノは「兄貴が来ねぇようにしてくれ」とだけ返す。
嘉一は、ヴァンの兄の部屋が有ると言われた、二階を見た。
「お兄さん、どんな人なんだろ……」
ゼノが「ごく潰しって、さっき聞いたろ」と言い、嘉一が「……どんな風に?」とヴァンを見る。
「父のお金を任されていますが、何に使っているのか分かりません。きっとカジノで負けてるんですよ」
ヴァンの答えに、ゼノは「そうかねぇ?」と疑問形で返した。
その言葉に、ヴァンがゼノの目を見た。
「あんた、兄貴の事、信じ過ぎじゃない?」
ゼノに聞かれて、ヴァンは「……そうでしょうか……」と表情を変えずに答えたが、彼女は、元から、あまり表情を変える方では無い。
「嘉一が殺した賞金首の兄貴の例も有るしな」
ヴァンは「あれは……」と、言い掛けたが、ゼノは続けた。
「目に見えるものが全てとは限らないよ?」
「ゼノさんは、何かご存知ですか……」
少しの間が有り、ゼノが何も答えないのに気付いたルサナが「お部屋見たいな。こっち?」と、リビングの右側の部屋を指さした。
ヴァンが「いえ、こちらです」と、左側の部屋を手で示す。
ルサナが「階段から遠いね」と面白そうに言う。
「ええ。兄から離れられるように」
ヴァンの返答を聞いたルサナは、示された部屋に向かって歩いて行った。




