ルサナの知るゼノの秘密
一週間後、ルサナの家の外で、嘉一は薪割りをしていた。
少しだけ休むように、斧を地面に置いた嘉一は、ため息をつく。
「しばらくか……。いつまで、ここに居ていいんだろうな……」
薪をセットし、嘉一は「ずっと、世話になる訳には行かない……」と呟いた。
薪割りを再開した嘉一が「誰にも見つけられない場所で、一人で居たいな……。元の世界に戻れないなら、もう、どうでもいい……」と口にする。
嘉一の背後から、ルサナが現れる。
「力の有る魔導士なら出来るかもよ? 目くらましの魔法とか使えば」
ルサナを見た嘉一が何も言えずに居ると、ルサナが「ゼノに頼めば?」と言った。
思わず、ルサナを見つめた嘉一の視線に気づいたルサナが「ゼノが、へっぽこ魔導士じゃないの、知ってるよ。ゼノの悪評は聞く事有るもの。最凶の魔導士って。病弱だった私が丈夫になるように、「おまじない」とか言って、魔法掛けてくれたのもゼノだし」と苦笑した。
「ゼノは、ルサナが頼めば、おれの為に力、使ってくれる?」
「ゼノが本当は凄い魔導士だって気づいてる事、ゼノにバレてもいいなら頼めるかもしれないけど……」
「そっか……。じゃあ、駄目だね」
「バレた方が、ゼノも楽かなぁ」
「黙ってた方が良いよ。ゼノが、それを望んでるなら」
「でも……」
「ごめんね。薪割りくらいしか出来なくて」
相変わらず、生きる気力を無くした事が雰囲気に出ている嘉一に、ルサナは「ゼノに話してみようか?」と、心配する表情を向ける。
「おれが、ゼノから余計に嫌われるだけだよ。……ルサナは、家の中に居た方がいいんじゃない? もう寒い時間だし」
「ゼノに会いに行ってみない?」
「ルサナだけ行った方がいいよ。ゼノは、おれの事、嫌いだから」
嘉一に言われて、ルサナが、黙り込む。
「もう少し薪を割ったら、おれも家に戻るね」
「本当? 約束だよ」
黙ったまま、嘉一が薪を割り始め、ルサナは、嘉一を見た後、家の中に入った。
◇◇◇
後日、ルサナの家から少し進んだ場所で、嘉一が夕日を見ている。
「そろそろ、他の場所に行こうかな……。これ以上、迷惑掛けられないもんな……」
歩いた嘉一は、立ち止まり、「どこに行くんだ……」と呟き、座り込む。
「ルサナが心配するかな……」
嘉一の右肩に手が置かれ、そちらに視線を向けた嘉一は、ルサナが傍に来てくれた事に気づく。
ルサナが、嘉一の両頬を、つまんで離した。
「私が小さい頃、ゼノの顔つまむと笑ってくれたの。最近あんまり笑った所、見た事無いけど、ゼノはユィンの前じゃ笑ってた」
「ゼノのそういう笑い顔、見た事無いな……」
「……ゼノ、最後、どんな様子だった?」
「別に普段と変わらない……」
「やたら早く、魔法を切り上げたりしなかった?」
「どうだろう……ユィンの様子、見せてくれたんだけど、あれ以上、見せてくれなかったのは、ただ、面倒くさかったんじゃない?」
「杖は持ってた?」
「忘れて来てたけど……」
「嘉一君、やっぱり明日、ゼノの家に行こう」
「どうして?」
その疑問に、ルサナは「私、昔にゼノの杖、隠した事が有るの。今度も同じじゃないかなぁ」と答えた。
「杖が無くても、大丈夫そうだったよ?」
「杖は補助だから、無いまま魔法を使うと魔力が反転するの。しばらく魔力が低いままだと思うよ」
「えっと……。どういう事?」
ルサナが「面白いゼノが見れるって事」と楽しそうに笑った。
「それって、見ても、おれ、嫌われない?」
「うーん。分かんない」
「……明日、行くの?」
「嘉一君も一緒にね」
嘉一は、にこにこ笑っているルサナを見る。
ルサナは嘉一の手を引き「今日は帰ろう」と、自宅の方へ、嘉一を連れて行った。




