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最恐魔導士は、おれがお嫌い  作者: 水桜崎 有叉杜
第六章

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本当のニュース記事

 数日後、嘉一は、結局、トアナの街に居た。


「他に知ってる街、無いもんな……」


 嘉一が、元から深く被っているフードを更に深く被るように右手で下げた。

 いつ、ユィンとして、殺される対象になるか、と考えながら、嘉一は、行き交う人々を怖いと感じていた。


「確か、こっちだったよな……」


 嘉一は、ルサナの家を目指して歩き始める。

 道の両脇には、色んな店が有るが、その光景を楽しむ余裕は、今の嘉一には無かった。


「嘉一!」


 声のした背後を振り返ると、ルサナが、嘉一の方に走って来ている。

 嘉一の傍に駆けて来たルサナは、嘉一の近くで立ち止まり、嘉一の後ろを覗き込むような仕草をした。


「あれ? ゼノは?」

「ちょっと……おれが嫌われちゃって……」


 声に張りの無い嘉一の返答に、「ああ……ゼノだもんねぇ」とルサナは返す。


「うん。そうだね……」

「ゼノは、うちの家族とユィン以外、嫌いなんだよ。本人、自覚有るのか無いのか分からないけど」

「……ユィンの事は好きだったの?」

「仲良かったもん。ゼノは苦労してる人しか好きになれないの」

「そっか……。おれ、嫌われて当然だね……」

「ゼノは基本的に「死にたい」って思ってる人が好きだと思うよ。うちの家族の事、好きになってくれた理由は分かんないけど。嘉一は死にたくない?」

「ゼノと居た頃はね」


 嘉一と、そう、やり取りをした後、ルサナは「中身がユィンだった時と同じ表情してる。なんで嘉一は死にたいの」と眉を寄せるような表情をした。


「賞金首狩りをしたんだ。十人、賞金首を倒したら、賞金首でも特例で無罪放免って聞いて。おれは最後に間違えて、賞金首のお兄さんを殺してしまった」

「それで死にたいの?」

「世の中全部、おれに死ねと思ってるだろ。記事にも、そう書いてあった……」

「そうなの?」

「ゼノと行動してる時、新聞を見せて貰ったんだ。人違いで命を奪ったユィンは、死ぬべきだって書いてあった」

「ゼノに新聞見せて貰ったの? ゼノは嘘の記事を見せたんじゃない?」


 言葉の意味を呑み込めず、嘉一は「……どういう事?」と尋ね返した。


「あ。でも、本当の記事だったのかも。最近の記事はね、ユィンは無罪放免になるべきだって書いて有るよ。間違って殺した人の弟が凶悪犯だったんでしょ? 凶悪犯だと思われてた弟が、黒幕はお兄さんだって自供したんだって」


 ルサナが、辺りを見回した後、近くの新聞屋に入って、一部、買って来た後、嘉一の所に戻って来て、嘉一に新聞を渡した。


「はい。ここに書いてるよ。嘉一が殺した賞金首のお兄さんは悪い人だよ。賞金首扱いされてた弟さんは、お兄さんの身代わりに利用されてただけで、本人は何もしてないんだって」

「……そんな……」

「ゼノなら知ってるはずだけどね? なんで、教えなかったんだろうね?」

「……なんでだろうな……」


 新聞を持ったまま、嘉一は俯く。


「とりあえず、うちに来ない? 一緒にご飯食べようよ。古代神殿で魔王には会えた? 嘉一の話、聞きたいな」




◇◇◇




 ルサナの家に辿り着くまで、ルサナは嘉一の手を引いていた。

 嘉一の手を引いたままのルサナは、自宅に着くと、玄関を開けて、家の中に入る。


「ただいまー」


 歩いて来るルサナの声を耳にしたラナが居るのは、扉の開いたリビングに繋がる廊下だ。


「おかえり……あら。嘉一君?」


 疑問形でラナが聞いたので、ルサナが「街で会ったから、連れて来た」と返す。


「ご飯多めに作らないとね。食べてって誘ったんでしょう?」


 ラナの声に、リアナが「どうしたの?」とリビングの奥から出てくる。

 ルサナが「嘉一、連れて来たの」と答え、「すみません。お邪魔します」と、嘉一が頭を下げた。

 ラナが、嘉一の背中を軽く押すようにして「さぁ、どうぞ」とリビングに連れて行き、ダイニングテーブルのイスを引く。


「座ってね」


 笑顔で、ラナに言われ、嘉一は「すみません。ありがとうございます」と礼を口にした。

 嘉一が椅子に座り、ルサナが隣の椅子に腰掛ける。

 ラナが「嘉一君、飲み物、紅茶とサイダー、どっちがいい?」と聞くと、ルサナが「私、紅茶がいいな」と言った。

 リアナが「分かった。嘉一君、どうする?」と尋ねたので、嘉一は「じゃあ、俺も紅茶で……」と答える。

 ルサナが「紅茶、サイダーで割ったら美味しいかなぁ?」と、誰ともなしに聞く。

 苦笑したリアナが「どうして、何でも混ぜようとするの。薄くなるだけよ」と返した。


「やってみたい」


 ルサナの言葉に、嘉一は「薄めるんじゃなくて、炭酸水メーカーで紅茶に炭酸入れたら、美味しいみたいです」と話していた。


「嘉一君の世界には、そんなのも有るの? 炭酸入れるって、ソーダ割りと、どう違うの?」


 ルサナに問われて、嘉一は「炭酸入れられる機械が有って……ラジアンには無いの?」と疑問に思ったことを聞いた。

 嘉一を見ながら、「聞いた事無いよ」とルサナが不思議そうにする。

 ラナが「家庭用の機械には無いわね。業務用には有るのかも」と続けた。

 キッチンに立っているリアナが「ルサナ。本当に、紅茶にサイダー入れる?」と困ったように聞く。


「うーん。私は、いい。嘉一に出してあげて。お姉ちゃんが作るもの、何でも美味しいから」


 ちょっとだけ笑ったラナは「ルサナの提案聞いてたら、美味しい物でも不味くなるから不思議よねぇ」と苦笑した。

 リアナが「嘉一君。紅茶入れるね」と、電気ポットから、紅茶の葉を入れたティーポットにお湯を入れる。

 嘉一は「……ラジアンは物騒なんだよね? ルサナは一人で歩いて大丈夫なの?」と質問し、「逃げ足は早いから」とルサナが返す。

 ラナが「危ない目に遭った事も有ったんだけどねぇ」と言い、リアナが「いつも、ちゃんと逃げて来るよね」とルサナを見た。


「危ない人は、見れば分かるもん」


 ルサナに言われ、「ルサナの勘は凄いからね。……で、嘉一君は古代神殿の奥まで行けたの?」とラナが、嘉一に聞いた。


「今から、それ聞くの」

「じゃあ、ゆっくり聞きましょうか。ところで、ゼノは、どうしたの?」


 ルサナの言葉に続けて、ラナは、そう聞いたので、ルサナが「嘉一の事、嫌いなんだって」と返す。

 嘉一に同情したように、ルサナの母親が「ああ……」と短く口にする。


「じゃあ、嘉一君、行く所、無いんじゃないの?」


 リアナの問いに、ルサナが「うん。うちに、しばらく居るといいよ」と言い、嘉一は、ルサナを見た。

 ルサナは「そうしなよ。うちは構わないから」と、嘉一に笑顔を見せた。

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