決別
ラジアンの、人形製造施設の外で、ゼノが空中に投影した、ユィンの映像を見た嘉一は、弱弱しい声で、思った事を口に出した。
「おれが、おれじゃなくても、姉さん達も、父さんも母さんも、大丈夫なんだね……」
「みたいだねぇ」
「いいな……姉さん達と居られて……。今更、それに気づくなんて、おれって、本当馬鹿……」
「自覚出て来たか?」
「帰りたかったな……。おれに、居場所が有るなら……」
「俺、家に帰りたいんだけど、映像、消していい?」
嘉一が、「もう少し見ていたい……」と言ったので、ゼノは「じゃあ、後二分な。俺はその後、自分の家に帰るから、お前は好きにしろよ」と返した。
「おれが馬鹿じゃなかったら、ゼノは、おれの事、好きになってくれた?」
「俺は家族以外の人を好きになった事が無いんだわ。親父の事は好きだったけど、どう、他の奴を好きになっていいのか分からない。それとも、お前が教えてくれる?」
「ゼノと友達になりたかったな……」
「無理でしょ? 俺、お前の事、嫌いだし」
「死んでも、嫌いなんだもんね……」
黙って、日本の映像を見ている嘉一に、ゼノが「二分経ったから、もう帰るね」と、告げる。
「待って……。もう少し……」
ゼノが、嘉一の言葉を待たずに、空中の映像を消す。
「気が変わったら呼びなよ。お前の事は喜んで殺してやる」
ゼノが、姿を消し、嘉一は、ゼノが消えてしまった空間を、少しの間、見ていた。




