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最恐魔導士は、おれがお嫌い  作者: 水桜崎 有叉杜
第六章

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ユィンと、嘉一の家族

 日本の嘉一の家で、嘉一の姿をしたユィンと、嘉一の三人の姉、両親がリビングに居る。

 初嘉が「記憶が、あいまいになったなんて、心配だったけど、ご飯、食べてくれるようになって良かったわ」と、食卓に着いているユィンに向けて微笑む。

 初嘉は、ユィンが座っている席に近づき、ユィンの前にシチューの入った皿を置いた。

 三嘉も「たまに泣き出すのが心配だけど、お姉ちゃんも、お父さんとお母さんも嘉一の味方だからね」と、ユィンに笑顔を向ける。

 ユィンは「すみません……」と俯いた。

 次嘉が「また、それね。嘉一が謝る事なんて、何も無いでしょう?」と尋ねる。


「俺は、あなた達の家族の、嘉一じゃない……」


 ユィンの静かな告白に、父親が「どういう意味だね?」と聞く。


「別の人なんです……嘉一は、俺として、他の世界に居る」


 初嘉は「嘉一は、異世界転生物の小説、好きだったものね。嘉一が、別の人って言うなら、別の人なんでしょう」と、少し困ったように笑い、次嘉は「嘉一が誰でも、私達の家族よ」と微笑んだ。


「そうじゃなくて……。俺は……」


 言葉を続けようとするユィンに、母親は「嘉一は昔から少し変わった子だったし、何を言い出しても驚かないわ。熱を出して大変だったものね。少しくらい変な事、言いだしても当たり前よ」と話し、三嘉が、それに頷いた。

 三嘉が「お母さんの言う通り。嘉一は、何を言い出しても嘉一よ」と、ユィンを見て笑う。

 初嘉は、「明日、本屋さんに行ってみる?」と、その場にいる全員に向けて提案した。

 次嘉も「そうね。決まり。嘉一も明日、本屋さんに行きましょう」と同意する。

 笑って、母親が「好きな本、買うといいわ。お父さんは、どうする?」と、嘉一の父親を見る。


「お前達が居れば大丈夫だろう。俺は家に居るよ」


 父親の言葉を聞いても、俯いたままのユィンに、初嘉が「嘉一? どうしたの?」と心配そうに聞いた。


「嘉一が羨ましくて……」


 ユィンのその発言に、三嘉が「何が?」と首を傾げる。


「俺は、向こうの世界で人を殺しました。大事な人を殺されて許せなかったから……。それでも、俺は、あなた達の家族ですか」


 ちょっとだけ、家族全員が黙った後、初嘉が「また、とんでもない設定ぶっこんで来たわね……」と、それだけ言った。

 次嘉が「人殺しなの? なんで?」と困惑したような表情になる。

 ユィンは「本当の事です」と、まだ俯いている。

 再び、家族が全員、無言になった後、母親が「おじいちゃんが、戦争で米兵を傷つけたのが忘れられないって言ってたの。嘉一も傷ついたのね」と口にする。

 三嘉が「……シチュー、冷めちゃうね。食べる?」と尋ね、母親が「そうね」と三嘉を見た。


「温め直しましょうか。いっぱい話して疲れたでしょう。ご飯食べて、お風呂入って、寝なさい」


 母親に言われて、「……すみませんでした」とユィンが謝る。

 笑顔を見せた母親は「嘉一の話なら、何でも聞くわ」と、ユィンに視線を向けた。

 初嘉も「うん。どんな話でも」と言い、次嘉が「大丈夫よ。家族みんな、嘉一が大好きだから」と続け、三嘉は「ちょっと馬鹿な所も、嘉一の良い所よ」と嘉一に笑い掛ける。

 ユィンが、俯いていた顔を上げた。

 嘉一の家族全員が、自分を見て笑い掛けているのを目の当たりにし、ユィンは「すみません……」と、絞り出すように声を出した。

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