ユィンの過去
「嘉一」
呼ばれて、夢の中で目を開けた嘉一は、教会の中、銀髪で紫色の目の十六歳くらいの少年が、自分の傍に立っている事を知った。
同じ年頃の、その少年は、嘉一と初対面だ。
少年は、立ち尽くしたままの嘉一に「誰?」と聞かれても、「君が嘉一だね?」と返した。
嘉一の方に右手を伸ばした少年に、つられるように、嘉一も少年に右手を伸ばす。
なぜ、そうしたのかは、嘉一にも分からない。
二人の手が合わさった時、嘉一と少年は光に包まれた。
◇◇◇
「俺はユィンと言う。俺の記憶を見せる。ゼノを頼む……」
ユィンの言葉と同時に、過去のものだと分かる記憶が、嘉一に、なだれ込んできた。
今と年の頃は変わらないユィンが、森の中、飛び道具を持つ女子供達に取り囲まれて、血まみれで立っている。
女子供は、海杜族と呼ばれる一族で、ユィンに強い恨みを抱いている事が表情から分かる。
ユィンが涙を流した時、どこからか現れた、赤い髪で緑の目のゼノが、ユィンの手を取った。
「原因を作ったのは、あんた達の方だろ。自分達の事は棚に上げるの?」
ゼノの言葉に、その左手を掴まれたまま、ユィンが続ける。
「どれだけ恨まれようが、お互い様だ」
発生した水が、ユィンの右腕を覆うように凍って行き、指の先で尖り、刃物のようになった。
「女子供だけで、花錬族に敵うと思っているなら、来い」
ユィンと、睨み合う海杜族の女子供を見ながら、ゼノが言う。
「こいつの言う通りだと思うよ? 授華呪の餌食になりたいなら、止めないけど」
海杜族の女子供達は、ゼノの言葉に、後ろに下がり、去って行った。
その後で、ユィンの手の先の刃物のようなものは、地面に落ち、水になり、その場に消える。
「死に掛けの俺の所に現れたという事は、あんた、例の魔導士か」
視線をゼノの方に向けず、ユィンは問う。
ゼノはユィンの手を離し、「その傷で、よく失血死しないね」と話し掛けた。
「さすが花錬族。死にたくても死ねないんだね。可哀想に」
睨むようにゼノを見たユィンが「放っとけば死ぬ。帰れ」と返す。
「俺に聴こえるのは、死に掛けていて、助けを求める声。自分じゃ死ねないから、俺に殺して欲しいんでしょ?」
「……時間を掛ければ死ぬ。あんたの助けなんか必要無い」
「なんで泣いたの? あんたは悪くないじゃん」
「生まれて来たくなかった。誰かの愛した人を手に掛けた俺でさえ平然と生きて行けるような、修羅のような、この世界に」
「……必要に駆られたり、命じられたりしない限り、誰も殺さずに済む世界が有るって言ったら、興味持つ?」
ユィンは、一層、睨むようにゼノを見たまま「なぜ、そんな嘘をつく?」と尋ねた。
そんなユィンに「本当だから」とゼノは笑い掛ける。
黙った後、ユィンが口を開いた。
「詳しく話せ」




