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最恐魔導士は、おれがお嫌い  作者: 水桜崎 有叉杜
第五章

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夜のおしゃべり

 夜になり、嘉一とゼノは、女将と食堂に居た。


「記憶が、あいまいなんだけど、お掃除してくれてたのね。ありがとう」


 食卓に、ついている嘉一とゼノの斜め横の椅子に、女将が座っており、嘉一とゼノは、ゼノが作ったオムライスを食べている。


「すみません。騒がしくして」


 ゼノが謝ると、「あなた達二人しか居ないんだから、騒がしくして構わないわ」と、女将が笑った。

 嘉一が小声で「女将さんの記憶、消したの?」と、ゼノに尋ねる。

 ゼノも、「ここに来た、賞金首に関わる記憶は全部な」と、嘉一と同じくらい小声で、女将に聞こえないように答える。


「そんな事も出来るんだ……」


 嘉一の返答が聞こえなかった女将が「寝ちゃうなんてね。私、疲れてたのかしら」と、苦笑した。


「今日は暖かかったから、寝るのも無理は無いですよ」


 そうゼノに言われて、「でもね。まだ眠いの。どうしてかしら」と、女将が困ったような表情を見せる。

 ゼノが「暖かいからですよ」と優しく笑う。


「二人とも、明日の朝、食事とったら、行ってしまうんでしょう?」

「お世話になったので、それまでに何か、お菓子でも作りますよ」

「ゼノさん、お菓子も作れるの?」

「凝った物、作る時間は無いですけど」

「手伝いましょうか?」

「女将さんは、そうしたいですか?」

「一人娘が、お嫁に行く前は、二人で作ってたんだけどねぇ。一緒に出来たら、嬉しいわ」


 女将と、そう話して、ゼノが「じゃあ、頼みますね」と、女将に返す。

 ふふと笑った女将は「懐かしいわ」と、目を細めた。

 嘉一が「おれも手伝った方がいい?」と、ゼノに聞き、ゼノが「台所、狭いから三人は立てないよ」と、返答した。


「なら、止めとくね」

「三か月前も会いに行ったのだけど、また、娘に会いにいこうかしら」


 女将の言葉に、ゼノが「いいんじゃないですか」と微笑む。


「孫娘も料理に興味を覚える年ごろでね。一緒に作ろうって言ってみようかしら」


 ゼノが「その前に、女将さんに会えて良かったです」と伝える。


「本当に懐かしいわ。ゼノさん達のおかげね」

「俺達は何もしてないですよ」


 嘉一が、女将を見る。

 女将は、少しだけ目に涙を浮かべ、「寂しいわ」と口にした

 嘉一が「また来ていいですか?」と言い、ゼノが「そうだな。また来るか」と続けた。


「半年後に、宿を畳んで、娘家族と一緒に暮らす事になってるの。ここ一年、お客さんは来なかったから、これから半年も、多分、誰も来ないわ。きっと、最後のお客さんは、あなた達ね」


 ゼノは「娘さんの家、教えて頂けたら、会いに行きますよ」と、女将を見る。

 女将が「……嬉しいわ」と、少し微笑む。


「俺、一瞬で移動できるんで、いつでも行きます」

「ゼノさんは凄いのね」


 嘉一が、「うん。ゼノは凄いよ」と、女将の言葉に頷いた。


「お前も来いよ」


 ゼノに見られて、嘉一が「……」と黙り込む。


「二人は仲が良いのね」


 そう言った女将に「……まぁ」と、ゼノが返す。


「きっと、孫も喜ぶわ」

「明日の朝、女将さんの分も食事、作りましょうか」


 ゼノに聞かれて、また、ふふと小さく笑った女将が「私の分はいいわよ。飲み物、おかわり持ってくるわね」と、二人のコップを持って、キッチンへ行く。

 嘉一にだけ聞こえる小声で、ゼノは「バレるのも時間の問題だけどな」と呟いた。

 嘉一も「何が?」と小声で問う。


「賞金首を殺したってニュースになる。そしたら、女将さんは俺達に関わりたくないさ」

「じゃあ、記憶を消しても意味が無かったんじゃないの」

「すぐ追い出されたら困る」

「……そうだね」

「菓子作っても、結局、その菓子、捨てられるよ」

「そっか」


 二人のやり取りを耳にしていない女将が「ゼノさん達が来てくれて良かったわ」と、戻って来る。

 少しの間の後、ゼノが「……ありがとうございます」と、女将に笑い掛けた。

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