宿の女将と話す二人
宿の昔の食堂だったスペースで、嘉一とゼノが食事をとっている。
机の上には、二人の前に置かれた皿にパスタが盛られていた。
嘉一が、一口食べて「美味しい」と言う。
ゼノが「そりゃ良かった」と、気の無い返事を返す。
空いた席に座っていた宿の女将が「お客さんが多かった頃は料理人も雇って、食事を出してたんだけどね。この辺は物騒になって、客足も遠のいちゃって。お部屋しか用意出来なくて、ごめんなさいね」と、二人に言った。
ゼノは「充分ですよ。助かりました」と、女将に軽く頭を下げる。
嘉一が「食堂の机も貸して頂いて、ありがとうございます」と、礼を口にした。
女将は「ゆっくりしていってほしいけどね。明日、発つんでしょう?」と二人に聞いた。
「ゆっくりしていきましょうか? 何か目的が有る訳でも無いし」
ゼノの言葉に、女将は「そうしてくれるかしら?」と、微笑んだ。
「それにしても、ゼノさんが意識の無いユィンさんを連れて来た時は驚いたわ。直に目を覚ますってゼノさんは言ってたけど、心配でねぇ」
嘉一は「え? ゼノが連れて来てくれたの?」と驚く。
「何件か、他の宿に断られたって……。ユィンさんは賞金首の花錬族ですものね。厄介事に関わりたくない人が多いのよ」
ゼノが女将が話し終わるのを待ってから「お前の意識が無いの見て「うちで良ければ」って泊めてくれたんだよ。目くらましの魔法、掛けたい所だったんだけど、意識が有る奴にしか使えなくてな」と嘉一に話した。
女将が「ゼノさんは魔法、使えるの?」と尋ねる。
「……あんまり」
「電灯、直せたりしないかしら? 壊れたままなんだけど、職人さんも居なくて……」
「壊れたもの直すくらいは出来ますよ。電灯だけですか?」
「奥の部屋の鍵も壊れたままなのよねぇ」
「食べたら直しますね」
「じゃあ、食事の後片付け、しとくわね」
ゼノが「いえ、それくらいは……」と言い掛け、嘉一が「あ。俺がやります」と、二人の会話に加わった。
「いえいえ。私がしたいの。それくらい、させてくれないかしら?」
そう聞かれて、ゼノが「じゃあ、頼みます」と軽く頭を下げる。
女将は「本当に久しぶりのお客さんでね。嬉しいわ」と笑う。
「……しばらく、お世話になります」と、改めて、ゼノが深く頭を下げた。




