嘉一の言い分とゼノの理屈
同じ日の夕方、嘉一は宿で目を覚ました。
ゼノが、部屋のドアを開け、中に入って来る。
嘉一は「おれ……」と、ゼノの方を見た。
「気絶するなんてね。そんなに殺したくなかったか」
「気絶……?」
「グレードが一番高い奴は、一人しか居なかったよ。首、落としたから、また明日でも換金に行こうか」
ゼノから視線を逸らした嘉一が「……嫌だ……」と、絞り出すように言う。
「何が? 殺したのは悪い奴だよ?」
「それでも嫌だ……」
「女子供に、ひどい事した奴でも?」
「ひどい事……?」
「子供を誘拐して人身売買。女性は強姦されたり暴力を振るわれたり。色々。ラジアンには刑務所は無いから、賞金首になる以外の罰は受けない。死んで当然だよ」
まるで、自分が罪を糾弾されたかのような表情をした嘉一は「何か理由が……」と言い掛ける。
「有る訳無いだろ。有るとすれば、自分の望みを叶えたかったから」
「賞金首も、子供の頃、ひどい目に遭ってるとか……」
「金持ちのバカ息子だよ」
「親が厳しかったとか……」
「仕事で忙しくて親は金だけ与えてたみたいだけど、それは同情に値するか?」
黙った後、嘉一が「……ひどい事していい理由にはならないよね……」と返した。
「俺が殺せって言ってるのは、そういう奴ばかりなの。殺せって言ったら殺せよ」
「後、何人だっけ……」
「三人。後は、お前がやれよ」
「……分かった……」
ゼノは、力を無くしたように、表情の無くなった嘉一に「飯、食えそう? この宿、食事出ないから、キッチン借りて、何か作るけど」と尋ねる。
嘉一が「それなら、手伝うよ」と身を起こそうとした。
「いいよ。寝てろ」
「……ありがとう」
「安心しろよ。毒は盛らないから」
「ゼノって本当に料理出来るんだね」
「ん? お前に話したか?」
「いや……」
「ある程度は出来るよ。作ったら呼ぶから、その時は起きろよ」
ゼノは、それだけ言って、部屋を出て行った。




