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最恐魔導士は、おれがお嫌い  作者: 水桜崎 有叉杜
第三章

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神殿の道中

 狼男と嘉一が、互角に戦っている。

 その様子に戸惑っているのは狼男で、彼は「くっ……」と短く声を出した。


「すげぇ……! 俺、狼男と戦ってる……!」


 自分でも驚いている様子の嘉一の言葉に、狼男は「なんだ、この人間は……」と嘉一を見た。

 嘉一は、ゼノに「花錬族って凄いね」と話し掛ける。


「ユィンは、その中でも凄かったからな」

「ユィンの体に感謝だね」

「授華呪で殺されても、相手には痛みも苦痛も無いから、遠慮なく、やっちまえよ」


 右手に宿る炎を、嘉一が自分の背丈くらい大きくした。

 ゼノは「やるじゃん」と炎を見る。

 嘉一が、狼男を見た。


「焼かれたくないなら、そこを通して」


 狼男は、「この身がどうなろうと構うものか……」と嘉一を睨む。


「じゃあ失礼します」


 その言葉と同じタイミングで嘉一が向けた炎に、狼男が覆われる。

 狼男は、その場に倒れる。

 嘉一が、狼男を見て「ごめんね」と呟いた。

 少し黙った後で、嘉一は、ゼノに「帰るの?」と尋ねる。


「……もう少ししたらな」

「どうせなら、奥まで一緒に行こうよ」


 嘉一に誘われて、ゼノが面倒くさそうに腕を組んだ。


「魔王に会いに? ……仕方ねぇな」




◇◇◇




 通路を、嘉一とゼノが歩いている。

 嘉一が、ゼノに「三体、魔物、倒したね!」と話し掛けた。


「まだ先が長そうだから、気を抜くなよ」

「全部、狼男だったね」

「……少し気になる事が有る」


 ゼノが、周囲に向けて「おい、お前ら」と声を上げた。

 あちこちの柱の影から、狼女達が出て来る。


「何を守っている?」


 ゼノの言葉に、ゼノの後方に居る狼女が「帰って」と話す。


「手荒な事はしたくない。話せ」


 静かな声で、ゼノに言われて、ゼノの後方に居る狼女が再び口を開き「まだ早い」とゼノを見る。

 そのまま、狼女達が、去って行く。


「まだ早い……」


 呟いたゼノに、嘉一が「何がだろうね?」と聞く。


「狼女に子供でも居るんだろ。それでも奥に行くか?」

「うーん……。って、子供!?」

「お前が殺したのは父親だったかもな」


 ゼノに言われて、俯いた嘉一は、少しだけ顔を上げ、ゼノに視線を向ける。


「与命の魔導士って狼男も生き返らせる事が出来る?」

「やろうと思えば」

「どこに居るの」

「その内会えるよ」

「その内じゃ間に合わない……」


 元気を無くした嘉一に、ゼノは今来た道に目を向け、「……帰り道に灯りでも点けとくか」と杖を構えた。


「話、聞いてる?」


 嘉一の質問は無視して、ゼノが杖を振ると、今まで来た道に光の玉が三つほど灯り、見えなくなった。

 その様子を見ていた嘉一が立ち止まったままなので、ゼノが「先に行くぞ」と歩き始めた。


「もう狼男、出て来ないといいな」

「襲って来たんだから殺してもいい。正当防衛だ」

「……そうだね」


 ゼノの後ろを着いて行きながら、嘉一は、ゼノの灯した明かりが消えた道を見た。

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